天使たちとの共同戦線(十四章、気まぐれの権天使)
ビランチ「暫く落ち着いていますね。」
フォルテ「そうだね。」
ブッピラ「ビランチ。ミィディアの件で報告がある。」
ビランチ「あらブッピラ。どうしました?」
ブッピラ「今ドゥエからセイがまたミィディアに接触したと連絡があった。」
ビランチ「またですか・・・。」
ブッピラ「とりあえず各部門の天使を召集してくれ。事の詳細はその時話す。」
ビランチ「分かりました。フォルテ‼」
フォルテ「ああ。(各部門の天使たちに告ぐ。今すぐビランチの所に来たれ。ミィディアの件に動きあり。)これで来るはずだよ。」
ブッピラ「助かる。」
フォール「悪りぃ遅れた。」
ビランチ「フォールが来ましたね。」
シェンス「来たわよ〜。」
オルゴ「来たぞ。何があった?」
ビランチ「事の詳細は全員が揃ったらブッピラから話してもらいます。」
モルテ「来ました。ノーヴェは部門指揮で来ません。」
ビランチ「了解です。」
ヴェッキ「着いたぞ。」
ウナ「待たせたな。イアスは部門指揮でこない。」
ビランチ「承知しました。」
グラント「あたしも着いたわよ〜。」
プロイビー「ミィディアにセイがまた近づいたの?」
ビランチ「その様で。事の詳細はブッピラに話してもらいます。」
グラント「ドラークは部門指揮で来ないわよ。」
フォルテ「分かったよ。フェアは?」
プロイビー「フェアはミィディアとよく会ってるから今は休んでる。」
ビランチ「分かりました。」
ブッピラ「よしこれでとりあえず上天使全員揃ったな。これからミィディアの件を話す。聞いてくれ。セイがミィディアに接触したという事だが今回セイはウチの堕天使狩り天使ヴェロに化けてミィディアに近づいた。だがラーナが途中でヴェロの異変に気づき事なきをえた。」
オルゴ「まったく・・・天使に化けて近づくとは盲点だったな。」
フォール「ああ。してやられた。」
ウナ「どうする?堕天使狩りの天使の頭数を増やすか?」
ブッピラ「いやそれは止めたほうがいい。」
ウナ「何故だ?」
シェンス「下手に頭数増やしたら化ける機会をみすみすセイに与えることになるでしょうね。」
グラント「それに今回ラーナが早く異変に気づけたのも天使たちの数が少なかったのも幸いしてるでしょ。」
プロイビー「・・・言いにくいんだけどあたしたち天使だけじゃ限界ない?幻を見抜く天使も数えるほどしかいないし。」
ブッピラ「一応それに対しての対策は打ってある。」
ビランチ「それは何ですか?」
ブッピラ「ラーナだ。あいつをミィディアに遣わした。アイツがミィディアに会ってる間は堕天使たちは近づけないだろう。それにミィディアがラーナからまやかしを見破るコツでも教われば自衛の術を身につける事ができるだろう。」
フォルテ「だけど一つ問題があるよね。」
プロイビー「それは何?」
ヴェッキ「アイツらの逃げ足が速いことだ。」
ウナ「その上感知も早い。こっちも感度とスピードを上げていかないと対峙することすら出来ないぞ。」
オルゴ「その辺は俺たち熾天使がなんとかするしかないな。」
グラント「まぁイプノもいるしね。」
ビランチ「フォルテ。セイの件頼めます?」
フォルテ「・・・善処するよ。」
ビランチ「感謝します。もしもの場合はオッソもいるのであまり気負わずに。」
フォルテ「分かったよ。」
ブッピラ「ミィディアの件は以上だ。今聞いたことは各部門に周知しておいてくれ。」
シェンス&オルゴ&モルテ&フォルテ&ヴェッキ&ウナ&グラント&プロイビー
「「「「「「「「了解‼」」」」」」」」
〜〜〜〜〜
ラーナ「ミィディアー?こんにちわー僕のこと覚えてますー?」
ミィディア「お前は・・・確かラーナ⁉」
ラーナ「そうですーちゃんと覚えててくれたんですねー。」
ミィディア「それでラーナは何しに来たんだ?もしかして堕天使と会ったことで俺の罪が増えたとか?」
ラーナ「んーそれはないですねー。寧ろ順調に減ってますよー。」
ミィディア「そうなのか⁉」
ラーナ「はいー。」
ミィディア「そうか・・・じゃあラーナは何しに来たんだ?」
ラーナ「ドゥエに言われて幻の見破り方を教えに来たんですー。」
ミィディア「そうなの?でも何で?」
ラーナ「この前にセイが来たじゃないですかー。それでその時に話し合って天使たちだけじゃ対処しきれないってことになってー。ミィディアが幻を見抜ける様になれば天使としても助かるってことでー。僕が教えに来たんですー。」
ミィディア「成程・・・。」
ラーナ「僕が具体的に伝えるのは三つです。一つ目が幻の見抜き方。二つ目が幻と対峙するときの心得。三つ目が幻とはどういうものか。この三つを押さえておけば大抵の幻は見抜けますー。」
ミィディア「うん。」
ラーナ「じゃ、ちゃっちゃといきますねー。まず最初に幻の見抜き方ですがそれは最初に感じた違和感を大切にしてくださいー。」
ミィディア「最初に感じた違和感を大切に?」
ラーナ「そうですー。最初になんか変だなぁとかなんか引っかかるなぁとか。その時感じた違和感は覚えておいてください。もう少しわかりやすく言うと周りの人から〝この人いい人だから〟って紹介された人が自分にとってはあんまり良く見えないことってあったりするじゃないですかー?そうするとやっぱり何か抱えてることがあったりするんですよー。そんな感じですー。」
ミィディア「まぁ分かったような・・・そうじゃないような・・・。」
ラーナ「まぁ幻を見抜くのはちょー難易度高いんで完璧に見抜こうなんて考えなくていいですー。僕だって完璧に見抜けませんからー。」
ミィディア「え?ラーナでも完璧には見抜けないの?」
ラーナ「はいー。前回は態々僕たち天使に化けてしかもミィディアと話しながら幻を解くなんてガバガバなことしてくれたので確実に分かったんですが、セイが最後まで化けていたらヴェロが戻ってくるまで気付けなかったかもしれませんー。」
ミィディア「そうか・・・でも何でセイは幻を途中で解いたんだろうな?」
ラーナ「多分挑発と遊びでしょうねー。ほんっと歪んじゃって天使として最低ですよねー。」
ミィディア「挑発は分かるけど遊びって?」
ラーナ「セイは天使の声が聞こえるミィディアに近づいて天使たちが悩むのを見て楽しんでるんですよー。」
ミィディア「・・・なかなかいい性格してるな・・・笑。」
ラーナ「でしょー?だから天使としては最低なんですよー。」
ミィディア「・・・もしかしてラーナってセイと仲良かった?」
ラーナ「いえ仲良くはなかったですねー。ただ幻の師匠なだけですー。」
ミィディア「そうなんだ‼なんか色々詳しいから仲良いのかと・・・。」
ラーナ「仲良かった?ってことならイプノとグラントですかねー。」
ミィディア「それはグラントから聞いたよ。」
ラーナ「まぁ天使も色々あるってことでー。」
ミィディア「でしょうねー。」
ラーナ「次いきますねー?幻と対峙する時の心得ですー。自分の世界観を持ってくださいー。」
ミィディア「自分の世界観をもつ?」
ラーナ「はいー。そうですー。」
ミィディア「自分の世界観ってみんな持ってるものじゃないの?」
ラーナ「いやーそれが意外とそうでもないんですよねー。人間界には〝なんとなく〟生きてる人が意外と多いんですよねー。幻を扱う天使からしたらこれほど幻をかけやすい存在ってないんですよー。だってなんとなくの世界観を幻の世界観に入れ替えても気付かないですからねー。」
ミィディア「成程・・・幻についてなんとなくわかってきたぞ。だから一つ目に話した最初の違和感を大切にが必要になってくるわけだ。」
ラーナ「そうですー。最初の違和感を覚えておけばどこが幻で作られているか見破ることが出来ますからねー。大体幻は全てを幻にすることはまず稀です。大概は部分的に似たものに挿げ替えるのが殆どの手法です。そうした場合に大切になってくるのが違和感なんですよー。」
ミィディア「成程なー・・・そう言えばラーナはセイが化けてるのっていつ気がついたんだ?」
ラーナ「違和感を持ったのはヴェロのフリをしてドゥエと僕の前に現れた時ですねー。」
ミィディア「結構すぐじゃん!」
ラーナ「ドゥエと話をしてる姿を見てる時にいつものヴェロの雰囲気と違うというか姿はヴェロなのにヴェロと話してる感覚がないなーと思ったんですよねー。それでヴェロに化けたセイが行った後ドゥエにそのことを報告したんですよー。そしたら〝さっきヴェロがいたところを調べてみろ〟って言われて調べようとした時に丁度ミィディアのところにセイを感知したので駆けつけたんですー。」
ミィディア「それがあの場面につながるわけか・・・。」
ラーナ「そうですー。最後に幻がどういうものかを教えますねー。」
ミィディア「頼む。」
ラーナ「幻っていうのはですねー〝あると思えばあるしないと思えばない〟んですよー。」
ミィディア「・・・なにそれ?なんか都合がいいというか曖昧というか。」
ラーナ「いいところに気がつきますねー。ミィディア。そうなんですー。曖昧なんですよー。幻という存在そのものが。都合よくあることにしたければあることにできるし、無いことにしたければ無いことにできるんですー。」
ミィディア「成程・・・幻が強いわけだな。隠したいものは幻の力で隠せるし逆に何もなくても幻の力であることにして相手に見せることができる・・・その曖昧さこそが幻の強みってことなんだな?」
ラーナ「ミィディアは飲み込みが早いですねー。その通りですー。逆にいうと確実性や矛盾を突かれるのにめっぽう弱い。そこをつけば幻は解けますー。」
ミィディア「良い話を聞いたよ。」
ラーナ「これで僕の用事は済みましたー。何か最後に聞きたいことはありますかー?」
ミィディア「俺の罪について聞きたいんだけど・・・いいか?」
ラーナ「いいですよー?」
ミィディア「俺の罪ってあとどれくらいで終わるとか分かる?シェンスが言うには徐々に天使の声が聞こえなくなるって言ってたんだけど。」
ラーナ「あー・・・ミィディアの罪なら終わらせる準備は始めたっていうのは聞きましたー。恐らくオルゴとフェアが来たら説明してくれますよー?」
ミィディア「オルゴとフェア?どうしてその二人なの?」
ラーナ「熾天使とミィディアと最も交流のあった天使で説明をした方がミィディアの精神的な負担も少ないと思ったんでしょう。一応そういった締めごとには熾天使とそのことに関わった天使が行うのが通例なんですけど、ミィディアの場合は関わった天使が多過ぎますからね。多分そういう理由でしょう。」
ミィディア「そうか・・・分かった。」
ラーナ「じゃミィディアいきますねー。お元気でー。」
そう言うとラーナは姿を消した。