溢れる思い出はカメラロールに。寺町通りのビル奥にひっそり佇む懐かしきイタリアン。【フードエッセイ】
カメラロールをスクロールしていると冷製スパゲッティが現れた。ぼてっとフォルムのトマトたちがバジルに求婚を申し立てるようにずらりと囲む姿は何だか愛らしくて思い出に耽っておりました。
あれは確かKarimoku Commons Kyotoに行った9月の夕方。鳳泉に行こうかとすれば大行列で断念し、行きたかった串カツのお店に電話するも21時以降しか空いてなかったので寺町三条をぶらぶらとしていた。
そういえば、学生の終わり頃、ひとりで京都散策をしたときに初めてトラモントへ訪れた。敬愛する人がトラモントのクリームスパゲティを食べていたのを見てすっかり私も夢中になってすぐさまに訪れたのだ。その時は新聞を読みながら喫茶店で食べることに憧れを持ち、新聞広げながらスパゲッティを頬張るという大人ぶったことをしながらトラモントに滞在した。あれから丸3年。ふと懐かしさが込みあがり、トラモントへ訪れることにした。
店に入ればそこはタイムスリップ空間。今は使われていないであろう「TELEPHONE」とかかれた電話ボックスがレジ横にあって、新聞たちがずらりと並ぶ風景はまるでおばあちゃんの家に来たみたいな感覚なのだ。
席に着くとマスターの奥様ことおばあちゃん(勝手に)がメニューとお水を持ってきてくれて、そのメニューはずっと愛されてきた年季がずしっと感じられる。
メニューを開くとそれはスパゲッティの宝庫でトマト系やらクリーム系、オイル系がみっちりと書かれていた。
突如頭のどこから「トゥットゥルテッッ、ごろうちゃっちゃっ、トゥットゥルテッッ、ごろう…」と孤独のグルメサウンドが流れてきた。こういう時ごろうはきっとスパゲッティの横でちょこんと静かにいらっしゃるモブ的なメニューにも目を向けてじっくりと吟味するであろうとスパゲッティは横に置いてあたりを見渡す。
するとそこにはサラダの文字が書いてあって、こういうお店のサラダって無性に惹かれるもんで頼むことに決めた。
肝心のスパゲッティについては、実はすでに決まっていて、夏の暑さがまだ抜けきらないこの頃にはトマト冷製スパゲティが最適だろうと白のグラスワインと共に注文した。
スパゲティを待っている間にサラダとワインが到着した。付け合わせのパンも付いているから、それだけで晩酌の始まりだ。サラダといっても生ハムが皿の半分以上を占めていて、VIPすぎるおもてなしは愛しかない。
そしてついにお待ちかねのトマト冷製スパゲティが到着した。まだ終わらない夏の暑さもぶっとぶくらいのトマトてんこもりでバジルが控えめにちょこんと添えられていてそのギャップがたまらん。スパゲッティはお互いにもつれないようなベストな細さよ。味付けは優しさもありながらもガツンと後から燃えたぎる炎がやってくる感じ。これこそまさに爽快...!
すっかり口が涼しさで満たされたころ、もう周りは私たちともう1組しかおらずおばあちゃんは店じまいしている。そして、マスターことおじいちゃんは若いお店の男の子が話しかけてるけど、え?!!!の一点張りで私たちの隣の席に来てもう帰る準備をしてるのがチャーミングかつ自由すぎて愛。
お店とお客さんの関係って少し遠く感じるけど長年お店を切り盛りするおじいちゃんおばあちゃんの温かさにしみじみいたしました。
さらにスクロールしていたら、学生時代に初めて行ったトラモントの写真が。11月に訪れてもうクリームパスタを食べているのはきっと京都が寒かったから。今年はまだ薄手の服だというのに。変化してゆく時代の早さを感じます。
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