映画:ジェニーの記憶(The Tale:R18+)
アマプラで見ました。
子供への性犯罪を扱ったかなり重い内容なので
気軽にオススメはできないですが、とても良い作品でした。
主演女優のローラ・ダーンの演技がすばらしい。
子供への性犯罪がどのように行われているのか。
子供はその被害をどのように飲み込んでいるのか。
ということについて、とても緻密に描かれています。
監督のジェニファー・フォックスの実体験に基づく物語で、
主人公も同じ名前でした。
以下ネタバレ満載なので、ご注意ください。
子供への性犯罪がどのように行われているのか。
ジェニファーは親や家族への反抗心や反発心を持つ13歳。
少し内気でおとなしそうな普通の子。
乗馬を習うことになり、コーチとして美しい男女に出会います。
美しく仲の良い2人のコーチに憧れを抱き、
彼らが特別扱いしてくれることに誇らしい気持ちになります。
これもごく普通の感情。そこにつけ込む加害者。
ジェニファーの家族への不満を聞き、
家族はあなたのことを理解していないとか心地よい言葉をかけ、
家族よりも自分たちの方が味方だと思わせ、
特別に大事にしているよ、と言い聞かせて犯行に及びます。
「指導的立場の大人から大事にされ特別扱いされている子供」の状態から
「憧れの大人からのレイプ被害に遭う」までの下り坂がとてもなだらかで、
どこで拒絶できたのか、どこで周囲の大人が気づけたのか、とても難しい。
もちろん子供本人には判断できないし、
そのように仕向けている加害者の巧妙さが悪質でぞっとしました。
子供はその被害をどのように飲み込んでいるのか。
ジェニファーはレイプ被害にショックを受け、
「年上の愛し合うステキな男女と愛を共有した」
という物語に仕立てて飲み込み、
初恋は年上の人だった、
という程度の薄く軽い記憶で蓋をします。
フィクションとして書いたその物語を
30年以上経ってから偶然に母親が見つけて読み、
ジェニファーに連絡してきたことで
40代後半になってから被害に向き合うことになる、
という展開でした。
若い頃は異性関係がかなりひどかったと母親が愚痴を言う場面があり、
被害に起因するものと思われました。
また、ドキュメンタリー作家としてジェニファー自身が取材した
レイプ被害者の言葉がそのまま自分に当てはまっていることに気づきます。
レイプ被害だとはどうしても認めたくないジェニファー。
恋愛関係だったと思い込もうとしますが、
封印した記憶を徐々に掘り起こし、
当時の関係者にインタビューを重ねていくうちに、
レイプ被害に遭うたびにトイレで吐いていたこと、
コーチの男性からのレイプだけでなく、
コーチふたりの性的な行為に参加させられていたことや
同様の立場の別の若い女性も一緒にホテルに呼び出されたことなど、
かなりひどい被害実態を思い出し、愕然とします。
加害者は陸上の指導者として名声を上げながらも、
教え子への性的加害行為を続け、
そのことで大学での地位を失っていました。
そして終盤、ジェニファーが被害をおおむね思い出し、
被害に遭ったという事実を認められるようになった頃に、
加害者が陸上の功績を称えられて表彰されることを知り、
表彰式後のパーティー会場へ行って加害者と対峙します。
主演女優の素晴らしい演技
主演のローラ・ダーンはSWシリーズの最後のジェダイで
紫色の髪とドレスがステキなホルド中将を演じていました。
ホルド中将もとってもかっこよかったのですが、
この映画を見て、すごい女優さんだ・・・と思いましたよ(←語彙)。
被害をまったく思い出せない前半から、
徐々に思い出しながら関係者にインタビューをしていく中盤、
そして被害事実を認めて加害者と対峙する最後。
苦悩する姿、表情がとてもリアルで引き込まれました。
監督の経験を描いた映画ですが、まるでドキュメンタリーのようでした。
子供への性犯罪の手口
子供への性犯罪加害者の巧妙な手口は
ニュース等で見聞きしてもとても気持ち悪いものですが、
手口を知っていることで、第3者としてそういう場面に遭遇したときに
子供に手を差し伸べることができる可能性もあるかもしれない
と思うので、知っててもいいのかなと思います。
とくに親の立場の人は知ってた方がいいのかも。
お金をわざと落として子供に拾わせて、罪悪感を持たせるとか。
毎日決まった場所・時間に待ち伏せて感じよく挨拶して
「知らない人」ではない関係性を作るとか。
この映画のように指導的立場から特別に大事にして
拒否できないようにするとか。
睡眠薬入りの飲み物で眠らせて犯行に及ぶとか。
子供のレイプ被害はまだ赤ちゃんでは?という年齢から発生していますし、
世の中には本当に恐ろしい人がいるものです・・・。
ま、電車の中の痴漢もそうですけれど、
積極的に近づいてくる人は大抵危ないですよね・・・。
例えば子供から大人へ助けを求めた場合には、
だいたいみんな普通の人で助けてくれることの方が多く、
犯罪者に当たる可能性はとても低いと思うのですが、
そのあたりの加減というか判断が難しいですよねぇ。
性犯罪にかかわる法改正と被害者としての男性
性犯罪は暗数がとても多いので、
実態がなかなかわからないものですが、
それでも昔に比べると女性の被害者が声をあげられるように
なってきているのでしょうかね。
最近は徐々に男性の被害も明らかになってきていますね。
2017年に法律が被害者に男女両方を想定したことも大事な法改正でした。
https://imidas.jp/jijikaitai/f-40-190-19-10-g788/2
それでもアマプラのこの映画の紹介文に
「性的いたずら」と書かれているあたり、まだまだだな、と思います。
子供への性犯罪の中でもレイプが描かれている映画、ですよ・・・。
先日、元中学校教員(男性)が
「教材に使う写真を撮らせてほしい」と男性を募集して、
応募してきた男性を睡眠薬で眠らせて性的加害をしていた
というニュースがありました。わかっている被害者は数名でしたが、
他に100名近くの被害者がいるとか。
被害者が男性である、という点以外は
ごく普通の性犯罪のニュースだなと思います。
少数の加害者による大量の被害者。そして暗数が多い・・・。
女性は性犯罪に警戒するように言われていて、
実際に警戒している人も多いわけですが、
そしてそれでも被害は圧倒的に女性が多いわけですが、
このニュースを見ると、
男性も同様に警戒した方が良いのかもしれないですね・・・。
よく知らない人と飲食するときは、
トイレに立ったあとは必ず飲み物を新しくするとか。
でも、アルバイト気分で写真撮られに行って、
現場に飲み物用意されてたら、飲んじゃいますよねぇ、普通。
女性だと写真のモデルという時点でちょっと警戒すると思いますが、
男性だとその警戒心もないでしょうし。
薬で意識がなかったら逮捕要件に「準」ってつくのも
なんか腹立たしいですよね。被害の重さは変わらないのに。
つくづく、普通の人で構成された安心な世界で生きていきたいと思います。
とても励みになります。