就活解禁日の苦い記憶
2年前の、3月1日。
関西での就職を考えていたわたしは、大阪会場で開かれる
合同説明会に向かう電車に乗っていた。
会場の最寄り駅が近づくにつれ増えていく、
似た姿形の就活生たち。
駅に降り立ち、わたしと同じ
黒髪ひとつ結び・黒いスーツに
ベージュのトレンチコート・低めのヒールのパンプスを
纏った女子たちの群生を見て、怖くなった。
これはわたしの目指していたものなの?
こんなことしなきゃ、働けないの?
みんな同じ格好をして、違和感なくここに居るの?
だとしたら、この社会は恐ろしい場所だ。
こんなことが望まれる所で、わたしは働けない。
帰りの電車で、美容院の予約を取った。
次の週には、髪をまとめれない長さに切って、
生まれて初めてのパーマを当てた。
上場しているような大企業には、ひとつも受からなかった。
受かった企業は全部、試験から面接まで
「私服でお越しください」というところばかりだった。
「就活解禁」の文字を見る度に、
会場に向かうあの情景と、苦々しさを思い出す。
わたしは社会に適応できなかったのだろうか。
「あのパーマかけてたときが、いちばん綺麗だったよ」
卒業間際、友人に言われたこの一言が、わたしを救う。
ロックに綺麗に、これからも生きられるかな。
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