温羅を想う【寧静】
その昔、岡山県の吉備地方に温羅(うら)という鬼がいた。
その土地の統治者であったと云う。
温羅はヤマト王権から派遣された皇族の将軍、桃太郎のモデルとされる吉備津彦命(きびつひこのみこと)によって退治される。
その吉備津彦命が祀られる吉備津彦神社には、温羅の首が埋められている。
そして温羅の唸り声の鳴釜神事は現在も続く。
でも、温羅ってどんな鬼だったのだろう。
鬼には鬼になった事情というものがある。
一説によれば温羅はたたら製鉄技術を持った渡来人だったとも云われる。
その温羅に思いを馳せたくなり、温羅の拠点であった鬼ノ城を登る。
城壁が現存する古代の山城である。
ちょっとした登山だ。
復元された城門や鍛冶工房跡を巡りどうして鬼になったのかを考える。
いや、鬼になったのではない。
鬼にされたのだ。
歴史は勝者側の視点で語られることが多い。
温羅は鬼にされたのではないか。
眺望の良い場所で一息つき、温羅の寧静を祈った。
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