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初めてのアルバイト

20年以上前の話。

初めて働いたのは高校一年生の春。

中学校卒業と同時にアルバイトをしようと決意。

理由は簡単。

「働くことに憧れもあったし、自由に使えるお金が欲しかった。」

当時15歳。

仕事の探し方なんて知らない。

毎週日曜日、新聞の折り込み求人のチラシを見ては、ああでもないこうでもない言いながら目を通していた。

『未経験OK!募集年齢18歳〜』の求人はあっても、『15歳〜OK!』はなかなか見つからず。

「そっか、無理か」とならないのが15歳。

「もっと探せばなんかあるでしょ。」と根拠のなき自信(笑)

FROM Aの「か〜かきんきん、か〜きんきん♪」をコンビニで立ち寄みしたり、

タウンページを見たりして…

希望条件は「家から近くて〜、制服もあって〜、ラクそうなところ♪」

タウンページをパラパラ見ていたら…

「あ!見つけた!喫茶店がいいかも。」

タウンページの住所を見て「家から近そうだし、いいかも。」と

早速自転車でお店をチェック!!

運がいいことに、お店のドアに求人募集のチラシもあった。

「うん、制服もある!暇そうだし、店員さんに若い人いるからなんかいけそうな気がする!」

いざ電話。

「面接するから来てください。」

人生初めての採用面接。

「いつから働ける?」

「ホールとキッチンどっちがいい?」

「高校生だと時給安いけどいい?」

喫茶店のカウンターで店長と5分程度の簡単な面接。

結果は後日となる。

1日経っても、2日経っても、連絡が来ず居ても立っても居られず、お店に催促の電話を掛ける(笑)

電話先のアルバイトの方から「店長不在のため明日電話します」との回答。

そして翌日…

「採用です。来週から来れますか?」

ん?!面接の時に4月からと伝えた気がするけど。3月までは中学生気分でいたいいしな…

「4月1日からお願いします!」

そして晴れてアルバイトを開始となりました。

後日談

実は私は誤採用だったんです。

同じ日に面接した大学生を採用しようとしていたそう。

なのに、私が催促の電話をしたことで、お店の方が私を大学生を思い込んだらしい。

そして店長はそうとも知らず折り返しメモに残された私の番号に採用の電話を入れたというわけ。

出勤初日気合いを入れて「よろしくお願いします!」と挨拶したものの、店長の顔がしかめっ面だった。

そう、私を採用するはずではなかったから。戸惑っていた様子。

私が願わくば辞退しないかと再び「ここで働きたいの?」と聞かれ、間髪入れず「はい!」と返事。

私は、出勤初日に何故そんなことを聞かれたのかわからなかったけど、後日先輩から間違って採用されたことを聞かされた。

だけど、なんとなく周りの雰囲気から私は受け入れられていないように感じていた。

高校生だから?バイト未経験だから??

何者でもない自分の存在を否定されたように感じた。

実際、働いてみると、

分からないことばかりでミスもいっぱいした。

怒られても、ため息つかれても、任されたことを取り上げられても、

辞める気にはならなかった。

だって悔しかったから。

「やっぱり高校生は使い物にならん」って絶対言われたくなかった。

言われるなら「高校生でもアイツ採用して正解だった」と言われるまで働いてやる!と決めた。

それから2年。オーナーが変わるまで喫茶店で働いた。

新オーナーから男性は解雇するが、女性は雇用継続と通達。

新オーナーとしては男性は今までのやり方に固執する傾向にあるから解雇だそうで。

女性は協調性があるから新しいメンバーともやっていけると判断したらしい。

そんな考えに反発し、アルバイトを辞めた…。


右も左もわからない私を育ててくれたバイトの男性の先輩。

先輩は解雇されるのに「お前ならこのまま働き続けても上手くやっていけるよ。ガキンチョだったお前が、俺たち抜けたらお前がこの店で1番の古株だな!」

そんなことを言って、私が辞めないように茶化して笑ってくれた先輩たち。

いっぱい叱ってくれた先輩たちのお陰で、ホールにキッチン、締め作業も任せてもらえるようになっていた。

全ての業務をできる女性アルバイトは私だけ。(男性はたくさんいたけど)

新オーナーから時給50円UPの打診があった。

先輩たちと同じ時給だ。

でも私は、新しいオーナーの元で自分が働き続けることの意味を見出せなかった。

最初にバイトを始めた目的は、

「可愛い制服着て、楽な仕事で、遊ぶお金を稼ぐこと」だったのに。

アルバイトを通して、沢山の学びを得た。

親でも友達でも先生でも無い、お客様から「ありがとう」と言われた時、

照れくさいけど、素直に嬉しかった。

バイト時間、バイトの帰り幸せな気分に満ちた。

喫茶店には色々なお客様が来る。

保険外交員の女性から「やっぱりお店で飲む珈琲は美味しいわね。また来るね!」

週一でマダム会をしていた御婦人方から「あなたの接客良いわ〜!あなたの笑顔見ると元気になって私も若返るみたい。」

毎日新聞読みに来てくれた年配の男性から「熱めの珈琲と頼んでから、誰が接客しても熱めの珈琲が出てくるようになった。嬉しいねぇ。」

私はお客様に感謝されることが喜びになっていた。

分からないことだらけで始めたバイト。

がむしゃらに覚えた。

でも一つだけ私にできることがあった。

「お客様が喜ぶことをしよう」と思うこと。

その軸があったから、何者でもない自分を卑下することなく、諦めることなく、ミスをしても怒られても、前向きでいられたような気がする。

そして何より、フォローしてくれた優しい先輩方がいてくれたから。

私は何者でもない自分から、お客様に感謝してもらえるウェイトレスになることができた。

学校では学べない貴重な経験をした2年。

「働くこと」はお金を稼ぐ以上に私にとって大切なことを教えてくれました。

働くとは…

「お金を稼ぐこと」

「成長すること」

「経験の幅が増えること」

「自分という存在を認めること」

今、私の仕事のメインは主婦。

家族に「ありがとう」と言ってもらえるとホッコリした気持ちになる。

20年前と変わらず、幸せな言葉。


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