22q11.2欠失症候群

22q11.2欠失症候群(DiGeorge症候群とも呼ばれる)は、人間の22番目の染色体の一部が欠けることにより発生する遺伝子疾患です。この疾患は、種々の複合的な表現形を示すことがありますが、その根底には22番目の染色体の一部(具体的には「22q11.2」と呼ばれる領域)が欠如していることがあります。この欠損領域には30個ほどの遺伝子が含まれ、その中にはTBX1という重要な遺伝子も含まれています。TBX1は心臓や大血管の形成を制御する役割を持っており、その欠損により先天性の心疾患が発生する可能性があります。

22q11.2欠失症候群を持つ人々の約80%は先天性の心疾患を有しており、その中でも最も一般的に見られるのがファロー四徴症です。ファロー四徴症は、以下の四つの特徴を持つ複合的な心疾患を指します:1)心室中隔欠損(心室を分ける壁に存在する大きな穴)、2)大動脈騎乗(全身へ血液を送る大動脈が左右の心室にまたがっている)、3)漏斗部狭窄および肺動脈狭窄(肺へ血液を送る肺動脈の出口と肺動脈弁が狭くなる)、そして4)右室肥大(左右の心室の圧力が等しくなり、右室が肥大化する)。

極型ファロー四徴症という病型も存在します。これは、通常のファロー四徴症に加えて肺動脈閉鎖を伴うものを指します。22q11.2欠失症候群では、この極型ファロー四徴症がしばしば見られ、特に主肺動脈が存在せず、肺への血流が主要体肺側副動脈によって供給されるケースが多いのが特徴的です。

さらに、22q11.2欠失症候群は精神発達遅延、特徴的な顔貌、そして免疫機能の低下をもたらす可能性があります。これらの免疫問題は、胸腺の低形成または無形成によるもので、これは胸腺が免疫系の発育と機能において重要な役割を果たすためです。また、口蓋裂や軟口蓋閉鎖不全といった口蓋の異常、鼻声、そして低カルシウム血症(血中のカルシウム濃度が低下する状態)もしばしば観察されます。これらの特徴は、患者さんの日常生活や健康に影響を及ぼし、特別な医療的な介入やケアを必要とすることがあります。

このように、22q11.2欠失症候群は、一連の遺伝子の欠損により多岐にわたる複合的な表現形を示す疾患です。心疾患、免疫異常、顔貌の特徴、精神発達の遅れ、そしてその他の身体的特徴など、多様な症状が組み合わさって症候群を形成します。遺伝的検査によりこの疾患の診断が可能であり、患者さんやその家族に対する適切な治療やケアの提供が重要となります。また、この疾患を持つ患者さんとその家族は、生涯にわたるケアとサポートが必要となる場合があります。各患者さんの症状や需要に合わせた個別化したケアプランの作成が、健康的な生活の維持と生活の質の向上に寄与します。