ある書店でのこと
本を買おうとレジへ行き、私に店員が話しかけていたので、
「耳が聞こえません」と声で伝えた。
レジで聞かれる事といえば「ポイントカードやクーポンはお持ちですか?」「袋はお持ちですか?」あるいは本屋ならではの「ブックカバーをお付けしますか?」のどれかを言っているとおもう。
コンビニだと、「温めますか?」「お箸やスプーン、フォーク付けますか?」が加わる。
スーパーだとアイスを買った時に「ドライアイスを付けますか?」もあるし、想定外に「こちらのレジではカード支払いのみですがよろしいですか?」もある。
百貨店だと「こちらの商品はご自宅用ですか?」や雨が降っている時は「紙袋にビニールをお付けしましょうか」もある。
それにしても、レジでこれだけ聞かれる事が多い日本はサービス精神旺盛な国だなぁと思う。
マスクが無ければ、口の形と文章の長さでおおよそわかっていたが、
マスクをしていると全くわからない。
そういう時は、あらかじめ自分で全て言ってしまうこともある。
たとえば「袋は持っています。ポイントカードはありません。カードで払います。お箸を一膳付けてください。」なんて、相手に隙を与えない速さで一気に伝える。
話を戻すと、本屋の店員は私が「聞こえない」と言ってもそのまま話しかけてくる。
私が聞こえにくいだけと思っているのか、おそらく声のボリュームを大きくして話してくれている。
私 「耳が聞こえません。」
店員さん 「@::(「」¥((@@「」
私 「聞こえないのでわかりません」
店員さん 「:/-&¥」「)(@」
私 「…。」
いや、だから、わからんて。
しばらくそんなやり取りをしていた時、隣にいたベテラン店員らしき人が、
スッとレジ横に貼ってあるTポイントカードの媒体写真を指さしてくれた。
そのあとも、いろんな物を指差してくれたおかげでスムーズに会計ができた。
私は普通に話せるので、相手に聞こえていると誤解される事が多いし、
ほとんどの人が滅多に会うことの無い障がい者への対応の仕方がわからないから、戸惑ってしまうらしい。
とある駅では、駅員さんが全盲の人に歩けるのに車椅子に乗せて案内したとか。
少しだけ落ち着いて考えればわかる事でも、
まるで日本語を話せない外国人にでも出くわしたかのようにテンパってしまう。
補聴器を外した生活をしていると、ほんの一瞬の出会いでも、相手がどれだけ他人のことを考えられているのかがわかるようになり
それが良い悪いではなく、個性があって面白い。
これからまた、そんな小さな発見も書いていきたい。