箱根一泊二日で素敵な出逢い 「一期一会」
今から3年前のある日,娘A子と二人で一泊二日の旅行で,箱根へ出掛けた時のこと。二日目の夕方に帰省する為ロマンスカーのホームでの出来事だ。まだまだ,箱根を離れたくないといった私達は,ホームを端からはじまで,くまなく歩きまわって様々な風景を写していた。何処もみな画になる。箱根は「日本のリゾート地」のひとつ,と言われるのも納得出来る。時計をチラチラ見みては,「もう少し大丈夫ね!」電車の到着するまでの時間を満喫。「そろそろじゃない?!」チケットを確認すると,私達の座席の扉を見当つけて並んだ。…と言っても,まだまばらな並び方だ。私達から少し離れた場所に,ひときわ目立つ人に目を向けるとその男性は外国の人で,キャリーバックに手提げバックを持って,じっと到着する電車の線路を眺めていた。暫くすると放送で,「到着します車両の先頭に有ります,展望車の扉からのご乗車は出来ません。お隣の車両からのご乗車をお願い致します。」私達はこれを聞き,並ぶ場所を少しずらした。「ふっ!」と,先程の男性に目を向けると,全く動いた様子はない。「『日本語』からないのかもしれない!」そう思い側へ。「片言の英語でもなんとかなるだろう!ジェスチャーを交えれば,…,『Hello!』」そして,「Hi!!」返事はすぐ返って来た。見た目は少し怖そうでビクビクする想いも有った,それは単なる先入観で良かったと思った。私は一生懸命に片言英語を駆使して,放送の内容を伝えた。男性は片言の英語を喋る私に,だいぶ歩み寄ってくれたのだろ。完璧な英語を喋れないのに,自分へ声を掛けてくれた日本人に好意を持ってくれた。その想いは私の心に深く刻まれた。思いの外喜んで貰えて,私も幸せな気持ちになれた。「あなたはとても優しく親切な日本人だ。私はあなたのお陰で困らなくて済んだ。あなたは良い人だ。此所,箱根に来て良かった。それは,あなたの様な日本人に逢えた。」どこまで本当で,どこまでリップサービスか分からないけど,「喜んで貰えた」それだけで私は良い。電車の到着まで私達はお喋りを楽しんだ。とても表情豊かな男性で,とっても楽しんでいることは私達に伝わって来る。。「日本は大好きで,今までも何回も来ていること。富士山にも登ったことあること。京都は何度でも飽きない町だということ。そして自分は,Australiaに住んでいて,オーストラリア人。ホテルはこの駅すぐにある『湯本富士屋ホテル』に泊まっていたこと。素晴らしいホテルだったこと。この後は京都へ出掛けること。」等を話してくれて私も,「箱根は良いところ。自然に囲まれてゆっくりできる場所。私達のホテルは,宮ノ下にある老舗ホテルで『湯本富士屋ホテル』からみると,本店になるホテル。奇遇ね!」と,私も凄く楽しくて,時計を逆に戻したい想いでいっぱいだった。楽しい時間はすぐに過ぎてしまう。スピード増すわけでもなくて感覚的な話である。日本人同士で初対面でここまで楽しく会話を弾ませることは出来るのか?あまりそういった話は聞いたことはない。2度目の放送,流れ始めた。「電車ホームへ入って来ます。到着後も,暫くお待ち下さい。」「あ~ぁ!もう時間なんだ~!」娘と二人で口々に言う。到着後,暫く待つと扉は開いた。この電車に乗れば,旅行はここまでだ。扉は開き乗車してゆっくり座席まで歩く。展望室とは初めてな娘A子も私も。大きい窓いっぱいに外の景色を見られる。前も左も右も。大きいスクリーンを見ている様だ。座席もグリーン車並みだ。ゆったり広い椅子,リクライニングは殆んど平面的まで倒せ,広い設計になっているため,後ろの人にはぶつからない。足元もある程度まで楽に伸ばせられる,座席指定は優雅に座り心地良いので,快適な時間を過ごせる。時にはこの様な贅沢も良い。そして,少し現実逃避。オーストラリア男性は私達の二つ前の座席だ。振り返り私達を見ると「ニコッ!」と微笑んだ。走り出した通路を歩き,私達の座席に来ると,「手を出して!」理由は言わずただ,「手を出して!」娘に出させると,何かを握らせた。一瞬のことで娘A子も私も何?どうしたの?握った手を開くと,其所にはオーストラリアのドル紙幣だった。私達はなぜか怖くなり,返そうと試みるけど,「あなたの優しい気持ちへの僕のお礼の気持ち。何も心配することはおこらない,大丈夫!」そう言われて,「はい!そうなの。」とも言えず,暫く押し問答。私達二人のやり取りは,展望室全員,聞いている。自然に聞こえてしまう。展望室はゆったりとした,贅沢な座席指定になっているので,20名にも満たないお客様だけの特権の展望室車両だ。かなりの時間を押し問答やった私達は潔く?!男性の想いを受ける事に。座席に戻った私は,「幾つかキーホルダー買ってあるよね!そのひとつをプレゼントする!」娘のバックから1つキーホルダーを出すと,娘A子二人で男性の座席へ。「エッ?まだ何か?」といった表情を見せて私達を眺めている。「これは,あなたへのプレゼント。私達の気持ち!」受け取った男性は,狭い座席で今にも,ジャンプでもやりそうな気配を出していた。もし,もう少し広さ有ったら,やっていたのだろう。娘A子と私は,「これで座席で下車駅まで,車窓の外を眺めて過ごせる」と思った数分?もう少し有った様な?車内アナウンスは流れた。「……駅でお降りのお客様は,何方様もお荷物のお忘れ物なさいませんように!」「楽しい旅行も,もう少しだね~!」娘A子。男性の座席へと二人で駆け寄って,「この出逢いを大切にしたいこと。ドル紙幣のお礼をもう1度伝えて,このあとに出掛ける京都を楽しんで下さい。優しい日本人はたくさんいます……。」等を伝えると男性も,「ここ箱根に来て本当に良かった。優しい日本人に逢えた。キーホルダー僕の宝物だ。」この後,男性と娘A子は連絡先を交換すると,電車は下車するホーム到着する。御互いに,「GoodLuck!」と言い合い,私達はホームへ降り立ち後ろを振り向くと,男性は座席から立ち,バックの中に入っている先程のキーホルダーを手に持つと,目の高さでかざしていた。何やら動く口元へ目線を向けると,「Thank-you!」を何度も何度も繰り返していた。私達には当然,男性の声は届いて来ない。それでも男性は言い続けていた。自分の声はホームにいる母娘に届いていないことを,男性も知っていて言わずにいられなかったのだろう。私は男性のその想いに感動して,後から後からこぼれるものを拭うこともせずに,走り出した電車をただ見つめていた。帰路で強く感じた事は,「言葉は国境を越える!」ではなくて,「人情は国境を越える!」そして,「『想い』は言葉ではない,肌で感じるもの。この体験で私は思い始めた。このオーストラリアの人との出逢いは今でも大切な宝物で,当時の男性とのシーンは瞼に焼き付いている。その後のやり取りの中で,「いつかまた日本に来る時には,『会おう!』と約束を交わした。