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デザイナーの一人語りNo.8「デザイナーがいらなくなる時代」

これからの世の中は、デザイナーがいらなくなる時代になっていくでしょう。デザイン好きの私にとっては非常に残念なことですが、逃れられない現実です。

AI(人工知能)の進化で誰でも制作ができる

AI(人工知能)の進化により、すでにデザイナーの需要は減ってきています。今はIllustratorなど特殊な編集ソフトやデザイン知識がなくても、AIの自動生成で簡単にイラストやロゴが作れますし、ソースコードの知識がなくても誰でもWEBページが作れるツールが世に出回っています。

20年くらい前でしたら、まだパソコンが扱えない人が多かったですし、アプリなどがそれほど充実していなかったので、WEBやチラシなどの制作もデザイナーに頼むといった需要は多かったでしょう。しかし、今はスマホで画像編集も手軽にでき、ちょっとしたデザインなら誰でも作れるようになりました。

ICT教育(Information and Communication Technology)を導入した義務教育

そして、今の小学生たちは義務教育でパソコン(もしくはタブレット)を使った学習をしていて、自分で資料作成することに慣れています。私の娘は公立の小学校に通っている三年生ですが、先日の授業参観では生徒たちはタブレットを使ってCanvaで「一学期の思い出」というテーマで資料を作っていました。Canvaならイラストやデザインも備わっているので、小学生でもある程度見栄えの良い資料が作れるのです。

学校によっては授業で使用するツールが異なるようですが、どの子供もパソコン(タブレット)の扱いに慣れています。学校以外の習い事でも、タブレットを使用した学習が浸透し、iPadの描画ソフトでイラストを描く指導をする教室も出てきました。ご存じの通り、年齢を問わず誰でも操作できる無料アプリも充実しています。

小学一年生からパソコンを使用した授業を受ける令和世代

10数年後には、令和世代が社会人になる

あと10年ぐらいしたら、今の小学生たちは社会人になります。そうなると、デザイナーという職業はいっそう特別なものではなくなるでしょう。その頃にはAIも相当進化していて、誰でも当たり前に制作できる時代になります。

このような話をすると、これからデザイナーを目指す方にとっては夢も希望もなくなるかもしれませんが、これが現実です。これからの時代は、グラフィックデザイナーやWEBデザイナー、イラストレーターといった業界で必要とされる人材はごく僅かになり、「他の人ができないスキル」と言ったものがなければ必要とされなくなるでしょう。

AI(人工知能)がまだできないこと

しかし、だからと言って「デザイナーを諦めろ」と言っている訳ではありません。私もデザインが大好きなので生涯現役で携わりたいです。それに、AIができない事だってまだあります。例えば、ドラえもんのような温かみのあるコミュニケーションというのは、AIのロボットにはまだできません。

AI(人工知能)のロボット

例えば、iPadは「Hey Siri」と呼びかけて質問したり指示を出すと、AIが作動して応答してくれる音声アシスタントの機能があります。とても便利で高度な返答をしてくれますが、たまに面白い回答をしてくる事があります。

娘がまだ幼い頃の話です。たしか4歳くらいだったと思いますが、見たいYouTube動画があって、iPadに「ヘイ!セリー」と呼びかけました。娘は「シンデレラの動画が見たいよ」とSiriに言って指示を出したかったのですが、まだ幼くて滑舌が悪い娘の声は、iPadのAIは正しく聞き取ることができなかったのです。Siriは、娘の呼びかけ通りには正しく応答せず「シンダ動画が見つかりました」とい言って、「死んだ」に関するYouTube動画をiPadに表示させました。何度、娘が呼びかけても、思うように「シンデレラ」の物語の動画が表示されません。

しまいには娘が「ママ、できなよ~」と泣き出してしまいました。そんな娘の声も指示だと受け取ったiPadのSiriは「私はあなたが誰なのか、あなたのママが誰なのかも分かりません」と冷淡に応答しました。AIの冷たい反応で娘は大泣きしてしまいました。

母親の私なら「シンデレラの動画が見たいのね」「よしよし、泣かないでも大丈夫だよ」と優しく慰めることができますが、AIにはそのような温かみのある対応はできないのです。つまり、AIは「正しい言語」で指示を出さなければ、こちら側の希望通りのアウトプットは出せないし、温かみのあるコニュニケーションというがまだできないのです。

滑舌が悪い子供の声はiPadのAIは言語を認識できない

これからの未来

否が応でも、これからはAIの進化が加速していくでしょう。自動車だって自動運転が可能になっています。お店のレジだって、カゴを置くだけで自動計算され、セルフサービスで済ませられる時代になっています。人間による労働の需要がなくなるのは、デザイナーに限ったことではありません。日本中のあらゆる職業において、必要とされなくなってきているのです。

私たちはどうすれば良いか?

では、私たちはどうすれば良いか?答えは二択です。一つは「仕事をしない」という選択と、もう一方は「AIにできない仕事をする」ことです。もし、あなたが仕事をしたいのであれば「AIにはできない仕事」は何かを模索し、今から準備をしなければ時代に取り残されるでしょう。

おそらく今後、日本の大かたの職業で必要とされる労働力は「AIを作る人」か「AIに指示を出す人」になっていくでしょう。もしそれが嫌ならば、無限の可能性の中から「AIにはできないが自分にはできる」ことは何かを考えなければなりません。これは決して脅している訳ではありません。先の未来が分かっているのだから、まだ対策する余地があります。

厳しい言い方になりますが、日々の忙しさに追われて、10年、20年後の自分の未来像を描けないようでは明るい未来はありません。人間の労働力が必要とされない時代は、もう目の前まで来ています。ぜひ、みなさんも現実に目を向けて、将来のビジョンを思い描いてみてください。皆さんはどんな未来を望み、どのような仕事をしたいですか?たまには手を止めて、自分の心に問いかけてみてください。みなさんが、AIに負けない素敵な仕事が作り出せますように。

島津寿制作/デザイナー

(次回もまたデザイナーの一人語りをご覧ください)
※本ページに掲載している写真はイメージ画像です。


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