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デザイナーの一人語りNo.7「天命を全うする」

「天命を全うする」という言葉の天命とは「天から与えられたもの」ではなく、自分が「天に誓ったもの」なのです。人生は、好きなように自分で生き方を決めて良いのであって、寿命を迎えるまでに天に誓った「やりたい事」を「完全に果たす」ことが「天命を全うする」の真の意味なのです。

昭和の時代に生まれた私は、社会の風習や慣習に縛られ「好きなように生きる」なんて、なかなかできませんでした。嫌もしかして、令和の世代でも好きなように生きられている若者は、ごく一部かもしれません。

目標もなく生きている若者たちに落胆していた学生時代

私は高校生の頃、周りの仲間たちが何の目標もなく、やりたくもない勉強をして大学受験を目指している姿を見て「なぜ皆好きなことを目指さないのか」が疑問でならず、ただ偏差値だけを基準に進学を決めている生徒を見ては落胆していました。

クラスの中には、自分のやりたいことをやって、学校の科目とは関係のないネパール語を独学で習得し、単身でネパールへ行っていた子がいましたが、そんな自由人はごく一部でした。彼女は受験勉強の大事な時期でさえ、授業中にネパール語の辞書を広げて夢中で覚えていました。彼女は目指すものがあって必死だったのです。

自分が好きな事や、夢中になっている事が、他人から見たらくだらないようなものであっても、本人にとっては価値があるのです。人から共感されようがされまいが、関係がないのです。自分がやりたい事に夢中になっているときが一番幸せだから、共感なんていらないのです。

障害も個性、できないのは「努力が足りない」からではない

俗にいう障害者というのが身内にいましたので、どんなに努力しても「できないものはできない」ということを、私は幼くして悟りました。人ぞれそれ個性があって、できないものがあります。障害という名の個性なのです。

仮に時間をかけて努力しできるようになったとしても、その頃には人生の大半が過ぎてしまっていることでしょう。しかし、自分が死ぬ頃にようやくできるようになっていては遅いのです。

努力してもできない事は、やらなくても良い事

どんなに時間をかけても、できるようにならないものは「努力が足りない」のではなく「やらなくて良い」ことなのです。人それぞれ生まれ持った個性があります。自分に向いていない事に時間を費やすのは、人生の無駄遣いです。

他人から賞賛されなくても、共感されなくても、自分の魂が喜ぶものがあれば、それで良いのです。むしろ、人の趣味趣向なんて、他人からしたら共感できないものだったりします。どんな事に面白みを感じ、生きがいを感じるかは、人それぞれなのです。

人と違うからこそ格好良い

高校生までの私は、社会の常識や価値観に縛られ息苦しい生活を送っていましたが、美術大学へ進学すると環境が一変しました。個性こそが美徳といった感じで、人と同じだとむしろ「つまらない」と見なされてした。独自の個性とアイディアを出して、どれだけ人と異なる作品を作り出せるかが賞賛される基準でした。

美術大学というのは授業の中でテストというのがない代わりに、毎回たくさんの課題が出されて、そのテーマに沿った作品を提出すると評価されて、単位が取れるという仕組みになっていました。そこで誰かと似たような作品を作っていてはいけないのです。みなと同じだと、ありふれていて「よくある発想だ」と見なされてしまうからです。

私にとっては、美術大学はとても生きやすい場所でした。個性を包み隠さず自由に出して良いからです。学生たちはファッションなど身なりも、みな個性的でユニークでした。お互いどんな個性でも認め合い、面白がっていたという感じでした。ファッション雑誌に載っているような流行ものを身にまとっている方が、逆に目立ってしまうくらいでした。当時、私は自分に似合う生地を買ってきては、母から洋裁を習い、自分で服を作っていました。

趣味や好きなことが見つからない理由

長いこと過干渉の親の元で育つと、自分の意思を押し殺して生きているので、本来自分が本来やりたかった事や、好きな事というのが何なのかが分からなくなることがあります。私も幼少期は過干渉の母に育てられ苦労してきました。

大人になっても「趣味がない」という話をたまに聞きますが、趣味がないのではなく「我慢している」だけなんです。本当はやりたいけれど「お金がかかる」とか「難しそうだから」とか「人から笑われるかもしれない」といった余計な感情で、魂が望んでいることが心の奥底に塞がれてしまっているのです。

魂が望んでいることに気づく方法

自分が好きなことが何かを見つけ出すには、まず「ワクワクする」ものは何かを思い出してみると良いです。幼少期の頃でも構いません。どんな事にワクワクし、時間を忘れて夢中になりましたか?自分に問いかけると、だんだん心の奥底の蓋が外れてきます。

私の場合はデザインの制作をするときや、noteで文章を書くときにワクワクします。いつも食事を取るのを忘れて夢中でやっています。

どんなに思い返してみてもワクワクが分からない方は、まずは金額を気にせず、レストランで好きなものを注文し、ショッピングで欲しいものを買ってみてください。金額を気にしないでいると、素の自分が出てきて、だんだん本心からの望みが見えてきます。

どれだけ満足して死ねるか、そこに価値がある

人が生きる目的というのは、人それぞれです。人の好みというのも人それぞれで、周りの方と同じでなくても良いのです。それが、たとえ皆から価値がないと思われるような事であっても構わないのです。自分が死を迎えたときに、どれだけ満足して死ねるかが価値の基準です。みなさんも、日々好きなことに取り組んで、天命を全うできますように。

島津寿制作/デザイナー

(次回もぜひ「デザイナーの一人語り」をご覧ください)
※本ページに掲載している写真はイメージで、実際のものではありません。


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