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イチ推しお得盤 SANTANA "Amigos"

誰に頼まれたわけでもありませんが、若人に「安くて良いレコード」をお薦めしようと思います。
私が要らぬ節介を焼く気になったのは、ひとえに若いレコードコレクターを不憫に思ったからです。
高いんですよね、いま、レコード。
折からのブームに円安の影響も相まって、全体的に相場が上がっています。
またインターネットが普及したことで、相場が全世界で共有されるようになったので、足繁くレコード屋に通っても、昔のように掘り出しものに出会うことはほとんどありません。
レコードに限らず、なにかを集め始めた時は、とりあえずある程度の数を揃えたくなるものですが、高い上に足で稼ぐことも出来ないのでは、なんとも仕様がない。
このような昨今の事情を鑑みて、私は、若人が効率良くレコードを蒐集する一助になればと思い、この記事を書くことにしたのです。
たくさん読まれたらシリーズ化しようと思っていますし、ぜんぜん読まれなくても、いい暇つぶしになるのでシリーズ化しようと思っています。
若人の皆さま、どうかオッサンの老婆心をウザがらない下さい。
というわけで、栄えある第1回目はSANTANAの "Amigos"を紹介します。
この盤は、日本全国どのレコード屋さんに行ってもあります。
確実にあります。
店頭に出ていなくても必ず在庫があります。
ウソだと思うのなら、お店の方に「サンタナの『アミーゴ』ありますか?」と訊ねてみて下さい。
「何枚ご入用ですか?」と聞き返されるはずです。
しかし、安くて手に入れやすいからといって侮るなかれ。
このレコードは内容も音も良く、かつ踊れるというコスパ抜群の逸品なのです。
ではこれより、お得盤 SANTANA "Amigos"を、テレショップの販売員ばりに張り切って宣伝しようと思います。

SANTANA "Amigos" 1976

A1 "Dance Sister Dance (Baila Mi Hermana)"
アルバムの冒頭を飾るのは、142BPMで始まり、途中で倍速にテンポアップしてそのままフィニッシュするロッキンなブーガルー。
DJをやっている若人にとっては、頼れる1曲になることでしょう。
ラテン音楽の性質上、ハーフタイム71でカウントすることも出来ますし、テンポアップした後はダブルタイム284でカウントすることも出来るので、前後の繋ぎのバリエーションが非常に多いところが特長です。
たとえばレイ・バレットあたりが演る洒落たブーガルーからこの曲を挟んでアップテンポなメレンゲやサンバに繋いだら、フツフツと風呂が沸く、もといフロアが沸くこと請け合いです。
あるいは、レアグルーヴセットからハウスセットにシフトする際にも重宝するでしょうし、歌詞が英語とスペイン語のチャンポンなので、英語曲からスペイン語曲にスイッチする際に、間に挟み込むという使用法もあります。

A2 "Take Me with You"
初期作を想起させる、パーカッションが効いた3/4のブルーズ・ロック。
ギターがこれでもかと言わんばかりにギャンギャン鳴きます。
かと思いきや、途中でスローダウンしてラテンタッチのメローなフュージョンに様変わり。
あら、イイですね。
この曲は、男女の秘めごとの一部始終を表現しているのではないでしょうか。
燃え上がり、絶頂に至り、ベッドの上で仰向けになって1本のタバコをシェアして煙をくゆらせ…。
あ、失敬。
健全な若人向けの記事だということをすっかり忘れておりました😀

A3 "Let Me"
この曲のために初期メンのデヴィッド・ブラウンをバンドに復帰させたのかと思うほど、ベースがブンブン大活躍しています。
パーカッションのソロ演奏にベースが被さって来るイントロが、この上なくDJフレンドリー。
1:32のブレイクでブレーキを掛けてクラウドを焦らす、というエロい手も使えます(イヤ〜ン🥰)。
ケツもバシッと終わってくれるので、繋ぎ勝手も良い1曲です。
ほ〜ら、だんだん「アミーゴ」欲しくなって来たでしょ?

B1 "Gitano"
ここからB面になります。
スパニッシュギターの独奏から始まる、ホーン抜きのサルサとでも呼ぶべきキラーチューン。
アルバムの白眉と言っても良いでしょう。
ジプキンなんかのフラメンコロックからサルサに繋ぐ際に使えそうな、文字通りのワールド・ミュージックです。

B2 "Tell Me Are You Tired"
フロア映えするフュージョンタッチのポップなジャズ・ファンク。
グレッグ・ウォーカーのボーカルもなかなかですが、この曲の肝はなんと言ってもトム・コースターがピロピロ奏でる流麗なエレピ。
悶絶ものです。
リズム隊もタイトで、腰痛を患うオッサンの私とてじっとしてはいられません。
イテテ…。
ソロ演奏をすべて鍵盤奏者に譲り、チャカチャカとカッティングに徹するカルロス・サンタナの、自身のエゴよりも楽曲の充実を優先する姿勢が素晴らしい。
導師スリ・チンモイから教えを受けて達観したのでしょうか❓
踊りながら生き方について学ぶことが出来る、ありがたい1曲です。

B3 "Europa (Earth's Cry Heaven's Smile)"
私たちオッサンが若かった頃には、インターネットなんて便利なものはこの世に存在していませんでしたから、みんなアホみたいに口をあけてテレビを見ていました。
そのせいでアホになり、日本を長期にわたる不況に陥れて若い人たちに迷惑を掛けることに相なってしまったわけですが、アホになったこと以外にも、私どもオッサンはテレビから甚大な精神的被害を受けています。
その昔、テレビのバラエティー番組では、いろんな局面で洋楽のイントロがお決まりのように使用されていました。
たとえば、不思議な出来ごとが起こる場面ではマンハッタン・トランスファーの「トワイライト・ゾーン」が流れ、誰かが闘志をみなぎらせる場面ではサバイバーの「アイ・オブ・ザ・タイガー」が流れる、といった具合に。
色を使った絶対音感トレーニングを受けた人のなかに、色を見た瞬間、頭のなかで自動的に音が鳴ってしまう人がいるそうですが、それに近いんじゃないでしょうか(近くない)。
そんなわけで、私の場合、たとえば外出中に近くにトイレがない状況で便意を感じると(お食事中の方ゴメンナサイ…🙇‍♀️)、頭のなかにヨーロッパの「ザ・ファイナル・カウントダウン」が流れ始めます。
そして、ウン良く間に合った場合には、便座に掛けて用を足した瞬間、ヴァンゲリスの「炎のランナー」のテーマ曲が鳴り響きます。
しかし、ウン悪くダップンダしてしまった時には、別の曲が流れ出します。
それがこの曲、サンタナの「哀愁のヨーロッパ」なのです。
ちなみに私は人生で3回聴いています(知らんがな)。
まあシモの話はさて置き、もしこの曲がフロアに投下されてチークタイムがおっ始まったとしたら、その時ブースにいるDJは只者ではありません。
間違いなく達人です。
頂点を極めし者です。
空手や柔道なら黒帯、冠位十二階なら紫確定です。
あと、これは余談ですが、Wikipediaのページにこのような記述がありました。

メスカリンでハイになった友人がひどい目にあったのを見て、サンタナは "The Mushroom Lady's Coming to Town" というタイトルの曲を作曲した。この曲には "Europa (Earth's Cry Heaven's Smile)" の最初のリックが含まれていた。この曲は作曲された後、しばらくのあいだ手つかずのままストックされていた。

Wikipedia "Amigos (Santana album)"より記事を引用して翻訳

でも、この話っておかしくないですか?
だってメスカリンというのはペヨーテを始めとするサボテンに含まれる幻覚成分であり、マッシュルームに含まれているのはシロシビンですからね。
やったことないから知らんけど🙄

B4 "Let It Shine"
いよいよ最後の曲になりました。
ラテン度をグッと抑制したミッドテンポの朗らかな70'sファンク。
曲調はひょうきんな感じですが、ベースが効いていて使える1曲だと思います。

以上でSANTANA "Amigos"の紹介を終わります。
若人の皆さん、レコードが欲しくなりましたか?
なりましたね?
そうでしょうとも、そうでしょうとも。
まあ冗談はさて置き、ダンスミュージックゆえ、ついついDJ的観点からの評価に傾倒してしまいましたが、リビングで聴いても純粋に愉しめる、とても質の高いアルバムです。
若いロックファンのためのラテン入門盤としても良いアルバムだと思います。
エンジニアリングを担当したDavid RubinsonとFred Cateroは主にソウルやジャズのレコーディングを手掛けている人たちなので、音もそっちっぽい感じに仕上がっており、特にベースとパーカッションの響きがGoodです👍
レコードジャケットのアートワークを手掛けているのは横尾忠則さん。
余談ですが、私は横尾さんがある本のなかで仰った「サンタナのライブを見に行ったら、始まった瞬間客が総立ちになったので、座って見たい私は不満だった…」という言い分が大好きです。
ちなみに2024年12月24日現在、日本盤(CBS/Sony SOPO-117)が、ヤフオクに税込385円即決(牛丼小盛以下😭)で出品されています。
若人よ、急げ!
ウソ、ぜんぜん急がなくていいです 🐢…

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