デイサービスで生き返るお爺とぼく
夕暮れ、デイサービスの送迎。
助手席には、血の繋がっていないお爺。
対向車のヘッドライトで、お爺の顔が光る。無表情だ。
ひと言も会話をせず、ただいつもと同じ帰り道を走る。
デイサービスでは利用者と介護スタッフという関係性だったが、家が近くなるにつれ、一人のただの男、男同士へと顔つきが変わっていく気がした。
男同士なんてものは、とくに会話なんてない。
ましてや世代も違う。生き様も違う。デイサービスでずっと一緒だったのだ。今更しゃべることなんて何もない。
信号を過ぎ角を曲がり、二階建のアパートの前に車を停めた。
エンジンはつけたまま。ぼくは運転席を降り、助手席に周りドアを開ける。
杖が先に地面に着き、2本足が車の外へできてて、お爺は車から降りた。
1階の玄関までは10メートルほど。その10メートルを歩くのに介護者のサポートがいる。腰を悪くしていて歩幅がせまく足が上がらない。
ちょっとした段差が命取りになる。そのアパートはとくにバリアフリーを意識した造りではなく、高齢者に向けたものでもない。おそらく単身者が住んでいるアパートだ。
玄関のドアは開きっぱなしだ。
「ただいまぁ〜」誰もいない部屋の奥へと消えていった。部屋の明かりは煌々としたままだった。
部屋に入るや否や、万年床に横たわりテレビをつける。大ボリュームの音量で夕方のニュースが流れる。
「おう、ありがとな。またな。」
寝そべったまま、ぼくに別れの挨拶。おそらくそのままの位置そのままの姿勢で翌日のデイサービスの送迎までの時間を過ごしているのだろう。
ワンルームの部屋。こざっぱりとしていた。必要以外なもの以外なにもない。とくにもう、何をするわけでもなく、ただそこに暮らしているだけなのか。
・・・
「おう!今日も死に損ないのババアとジジイがたくさん転がってるなぁ!ぐっもーにんー!」
「おーい!俺の今風呂で素っ裸だから見にこいよー。サービスしてやるぞぉ〜」「おれのお尻洗ってくれ〜」
そのお爺は、デイサービスで生き返る。
ぼくもお爺に生かされている。
介護は大変。介護職はキツイ。そんなネガティブなイメージを覆したいと思っています。介護職は人間的成長ができるクリエイティブで素晴らしい仕事です。家族介護者の方も支援していけるように、この活動を応援してください!よろしくお願いいたします。