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ガスコンロ捨てたろか。
カニが失神してひっくり返り、
泡を吹いているようだった。
ガスコンロの上にあるやかんは、今にも吹きこぼれそうだった。
ぼくは慌てて火を止めるわけでもなく冷静に庭先へ向かった。
庭先で家庭菜園に勤しんでいる母に警鐘をならすが如く、ぼくは「どんっ!どんっ!どんっ!!」と壁を叩く。
音の強さに反応して母親は駆け足で台所に向かった。麦茶を沸かしているやかんの火は、人間の手によって安全に消し止められたのだ。
これでもう、3回目だ。
3回、神に生かされ先祖に守ってもらったのかもしれない。
人によっては日常茶飯事で大袈裟な表現と思うかもしれないが、ぼくにとっては高齢者の火の元による悲惨な結末をいくつか聞いているので、これでも大袈裟とは全く思わないのである。
あなたも死にぼくも死ぬ。猫もお隣さんも死ぬ。そんな結末もなくはない。
ひとしきり息子にドヤされ嫌味を言われた母は、ガスコンロの前で猿回しのお猿のように反省していた。
ぼくとてあまり注意したくないのだ。余分なエネルギーとストレスなのだ。
そこで考えた。次回そのようなことがあった時は。
「もう、こんどはガスコンロ捨てるから」
3割冗談の7割本気。
ガスコンロを使えなくすることで、ぼくにもダメージはある。明日の弁当が作れないし酒のつまみも焼けないので。
家は建売住宅で備え付けのガスコンロがついている家だ。ガスコンロを捨てるということは家を捨てることになるのか。まぁいい。なんにせよ命はあるのだから。
母よ頼む。ぼくにガスコンロを捨てさせないでくれ。
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