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Thought To Real Vol.2 ピンストライパー KEN THE FLATTOP

アメリカンカスタムカルチャーが生んだピンストライプアートにて、シーンを代表する日本人アーティストの一人、KEN THE FLATTOP(ケン ザ フラットトップ)氏が 今夏、自身のアートショー”Gold Fish Bowl”を開催した。
単独としては数年ぶりとなる作品展を開催するに至った氏の想いと、長きに亘りシーンを牽引し続ける変わらない創作の姿勢とは? お話を伺いました。

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■ まず今回のアートショー “Gold Fish Bowl” は、アロハシャツブランド 『SUN SURF』とのコラボレーションモデルのリリースに合わせた開催という事で、シャツのデザインも展示作品も全て ”金魚” のみですよね。
どういった経緯で ”金魚” をメインテーマとされたのですか?

KEN THE FLATTOP(以下:KEN)
昔から動物をモチーフにした絵を描くのがとにかく好きで。
生き物の動きをピンストライプで表現する事がすごく面白くていろんなのを描いてるんだけど、海外のイベントに参加する時は 鯉(コイ)を描く事が多いんですよ。
というのも鯉って世界的にタトゥーのデザインとしても人気で、英語でも ”carp” じゃなくて ”KOI” で認知されてるんですよね。

鯉って海外の人から見ると、どこか”和”を感じさせるらしくて、自分が日本人というのもあって意識してよく描くんだけど、お客さんが女性の時は鯉だとちょっとイカツすぎるから金魚がかわいいよって描く事もあるんだよね。

金魚って外国でも飼われてるし、創り出された魚だからバリエーションが多いじゃないですか、出目金だったりランチュウだったりすごく尻尾が長いやつがいたり。。。
そうするとデフォルメもし易いし、いろんなのが描けるから楽しくて。
それで好きでいろんな金魚を描いてる中で、漠然と「これをアロハシャツにしたらすげえカッコいいだろうな。」っていうイメージを温めてたんですよ。

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そしたら今回、偶然SUN SURFの方と知り合う機会があって、「実は以前からこういう構想がありまして。。。」っていう話をしたら、SUN SURFさん側もたまたまピンストライプデザインのシャツをやりたいって構想があったらしくて、即答で「やりましょう」って言っていただいて。

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ちょうど両者の思惑がビタッとハマったって感じかな。
多分、SUN SURFのアーティストシリーズって、これまではSUN SURF側からアーティスト達にデザインのオファーをかけてたと思うんですけど、今回は ”金魚ありき” で僕の方からこういうデザインのがやりたいんですって。
逆プロポーズ的な感じで始まりました。笑


■ SUN SURF はヴィンテージの作りを継承する等、クオリティの高さにも定評あるシャツブランドですが、一緒にモノづくりをしていく中で、特に拘った点や難しかった点はありますか?

KEN:  まず最初の段階で、アロハシャツって今はオーバープリントの生地を使った物が多い中で、今回はレーヨンを抜染する昔ながらの製法に拘って生地を作りたいっていうイメージがあったんですよね。

ただ始まってみてわかったんですけど、抜染で色を抜いていく方法と、ペンキでピンストライプの色をのせていく方法って順番が真逆なんですよ。

抜染ってまず色を入れるための型を職人さんが和紙を切り抜いて作るんだけど、ピンストライプで濃い色の上に薄い色がのっかってる時は、抜染だと下の濃い色の部分は染めちゃいけなくて、型はその都度そこで切らなきゃいけないんですよね。
今回のデザインは特にグラデーションになってる部分も多かったりするんだけど、僕の描いた通りを再現してもらいたかったので、筆入れの順番を説明して何度も何度も型を作り直してもらってっていうところがとにかく大変で。

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今では笑って話してくれますが、SUN SURF担当の中野さんや職人さん達にお掛けしたご苦労を考えると、それはもうハンパなかったと思います。苦笑

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■ アート作品に関しては木製やアルミの板、サーフボードなど様々な素材のキャンバスに沢山の金魚を描かれていますが、どういった想いでこのような構成に至ったのですか?

KEN :  今回、とにかくまずアロハシャツがすごい技術で作られたって事と、SUN SURFのこのシリーズは今後同じアーティストを起用する事は無いと思うし再販もしないって事。
しかも職人さんの高齢化が進んでいて10〜20年経ったら同じ物を作ろうと思っても技術が残ってないかもしれないよっていう話も伺って、これは僕にとっても一生に一度しか作れない物を作っていただけたなたと思ったので、自分でも何かカタチを残そうという想いでアートショーを開催しようと決めたんですよね。

で、せっかくやるんだったら自分と関係のある人達と作品を仕上げたいなという気持ちがあって、守谷玲太氏(藍左師)が作成した天然藍を使用した木製ボードや、金属加工をバッチリやってくれるCAP製作のアルミ板、シェーパー横山浩太氏(FINGER SHAPE)製作のサーフボードなど、友人達に協力してもらったキャンバスに描く事にしました。

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仲間達と一緒に作品を仕上げていくっていうのが楽しかったし、それぞれ違う質感や大きさのキャンバスに描いた金魚達をランダムに並べる事で、いろんな金魚鉢がずらーっと並んでる感じを空間で表現出来たので自分でもほんと満足しています。

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■ ピンストライプアートというと、シンメトリー(左右対称)な作品がベーシックだと思うのですが、KENさんのそれらからは、その概念を覆すと言っていいぐらいの動きを感じさせる独創性を感じます。
描かれる時に意識されている事ってあるのですか?

KEN:  国内にも国外にもいろんなピンストライパーがいて、アメリカのイベントだと100人ぐらいのピンストライパーが集まるんですよ。
その中でも50〜60年とかやってるいわゆるレジェンドのピンストライパーってもうお爺ちゃんなんだけど、ちょっとしたデザインひとつ見ても「あ、あの人が描いたんだ!」ってわかるんですよね。

自分が描き始めて何年かした頃からやっぱりそれがひとつの目標にあって、サインが書いてなくても見た人が「あ、これKENさんが描いたんでしょ」って言ってもらえたら勝ちというか「よしっ!」って思える事だなあと思ってて。
それで勿論基本はあるんだけど、どこか自分らしさを出したいなというのが常にあって、とにかく人と違った感じにしようっていうのは思ってます。

ピンストライプってすごく歴史があるので、トラディショナルな手法を追求して描いてるピンストライパーも大勢いるんだけど、自分のスタイルはどちらかというとニュースクールだと思っていて、ピンストライプで何か新しい事が出来ないかっていうのを常に模索しながら描いてますね。

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あとは描く時に一番意識する事はバランスかな。左右対称の美しいバランスもあるし、それをわざと崩した時の絶妙なバランスもあるし。
ピンストライプをあまり知らない人から「左右対称に描くのがすごいですね!」ってよく言われるんだけど、実は自分自身あんまり意識してないんですよ。
コンピューターの様に正確に左右対称を描こうとは思ってなくて、完成した時にちょっと歪んでても何となく全体のバランスが良ければそれでカッコいいなって思ってて。
だからわざと左右対称じゃなくするっていうのもそこを狙って描いてますね。

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■ これまでKENさんが描かれたいろんな動物や生き物モチーフの作品を見てきましたが、その動きや表情がどんどん進化していると感じるのですが?

KEN:  そうですね、毎日一生懸命描いてるので。笑
職人さんもよく言うんだけど、お客さんには悪いけどやっぱり日々の本番が一番の勉強だし練習なんですよね。

有名なピンストライパーのエド・ロスが遺した「ピンストライプは日記みたいなものだ。」っていう言葉があるんだけど、要は体調が悪い日に描けば線が歪んだり迷いが出ることもあるし、逆に乗りに乗ってる時は脳と右手が直結するってぐらい何にも考えずに「よっしゃ!」っていう線がバシッっと描けたりする。それら全部をひっくるめてお前の作品なんだよっていうのがその言葉の真意だと思うんだけど、その言葉を意識しながら描いてますね。

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それと動物がモチーフの時は筋肉を描こうと思ってるんですよ。
自分が美大を受験する時に予備校で何枚も何枚もデッサンを描いて、ダメ出しされまくって半べそかいてっていう経験が今でもほんとに活きていて。
当時デッサンで肉付けしていたのを今はピンストライプって技法に置き換えて描くっていう事をイメージしながら、毎回生き物を描くごとに修行を積んでる様な気持ちで描いています。

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■  お客様からオーダーを受ける時は、どの様な流れでデザインを決めていくのですか?

KEN:  すごく絵心があったりピンストライプについて詳しいお客さんだと、予め自分でイメージを作ってきてそれを伝えてくれるんだけど、大体のお客さんってやっぱり出来上がりをイメージして「こんな風に描いてください」って伝えるのはなかなか難しいと思うので、それを引き出してあげる様になるべくいろんな会話をするようにしてますね。
例えば、どんな色が好き?とか、オートバイ乗ってんの?とか、どんな車乗ってるの?とか。

短い間だけど趣味趣向からヒントを得るようにして、釣りするんですよって人だったら魚描いちゃえばとか、海が好きなんですって人だったらじゃあブルー系でいこうとかね。

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ピンストライパーってファインアーティストと違って、基本お客さんの物に描く事が多いじゃないですか。
となるとそれを使うお客さんが気に入ってくれないとお話にならないので、僕の描きたいイメージは二の次で、まずはその人の微かにあるイメージを聞き出して、それを形作ってあげる事がゴールなんですよね。

それで完成した時にそのお客さんが「カッコいいです!」「最高です!」なんて言ってくれたらそれが何よりやってて幸せな事だと思うし、それを常に目指して組み立てていくって感じですね。

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■  10年前にも一度KENさんにインタビューをさせていただきましたが、当時を振り返ってみて作品を描かれる上で、今でもブレずに貫いてきた部分はありますか?

KEN:  そうですねえ、とにかく自分のスタイルを確立させるという事をいつも意識するってところですかね。
僕は今27年目で、10年前というと何となく自分のスタイルが出来てきて認知され始めた頃だったと思うんですけど、そこに関しては今もその頃と変わらない気持ちで描いてますね。

あとはやっぱり常にもっと上手くなりたいし、何か新しい事を取り入れたいという気持ちも当時と変わってないですね。

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■  ピンストライプアーティストとして今後の展望はありますか?

KEN:  さっきも少し話したけど、アメリカに行くと1950年代から描いているお爺ちゃんのピンストライパーっていっぱいいるんですよ。
80歳ぐらいの人で仕事歴でいうと60〜70年選手っていうのが当たり前の様にいて、それと比べると僕なんかまだたったの27年なんですよね。
なのでまだまだお爺ちゃんになってもやれる仕事だと思ってるんで、とにかく永く、死ぬまで描いていたいなって思いますね。

かの葛飾北斎も「あと何年か生きれたら俺はもっとすごくなる」というようなニュアンスの言葉を遺してるじゃないですか、僕も常にそういう気持ちであと20〜30年描き続けて達人になりたいですね。

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KEN THE FLATTOP
1969年 横浜市生まれ
ピンストライパー / アーティストとして、車・バイク・サーフボード等のカスタムペイントを手掛ける他、これまで数多くの企業・ブランド・ショップのサインペイント・ロゴ・キャラクター、CDジャケット等のデザインも手掛けている。
2006年と2012 年に英国Korero Booksより発行された「PINSTRIPE PLANET」及び「PINSTRIPE PLANET 3」では、世界各国を代表するピンストライパーの1人としても紹介され、アメリカ、ヨーロッパを始め海外のアートショーにも多数参加。
世界中のピンストライパーやサインペインターが愛用するアメリカのブラシブランド「Mack Brush」社からシグネチャーモデルが発売される等、トラディショナルな技法とオリジナリティを融合させた唯一無二のスタイルは、国内外・世代を問わず多くのアーティストや根強いファン達から支持され続けている。

Gold Fish Bowl 
https://www.kentheflattop.com/artshow.html



Interview / Text / Photo
by YOSHIWO NISHIMURA
https://www.instagram.com/yswbaum/?hl=ja

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