できそうで出来ない。でも、できるようになりたい。

できそうで、できないこと。

そんなものに惹かれている自分に気がついた。

私は、高校で始めた弓道が好きで、部活を引退した今でも無性に弓を引きたくなる時がある。

何がそんなに私を惹きつけたのか、その答えはやっぱり「できそうで、できない」だった。


流派によって小さな違いはあるけれど、基本的に弓を引くには八つの段階がある。

足を八の字に開いて、体がブレないよう力を込める。そこから矢を弓につがえ、構える。息が整ったら、弓をゆっくりと持ち上げる。腕と顔を同時に的がある左側に向けて、胸を開くように弓を引く。これ以上体が伸びきらないというところで右手を離し、矢を放つ。あとは少しの余韻を持たせて、終わり。

言ってしまえば、弓道とは「同じ動作で矢を飛ばして、それを自分で取りに行ってまた飛ばす」ことの繰り返し。


それを、一年と半年ほどやり続けた。道場の先生は、何十年とただひたすらその作業を続けている。

よく飽きないなぁと思う自分にひとつ言い訳をするとすれば、「だって、できそうなのにできないんだもん。」

先生に言われた通りに八つの動作をすれば、矢は的に中る(あたる)。それは、経験からもわかっている。

でも、なかなか中らない。調子が悪い時は、午前中ずっと引き続けても1本中るか中らないか、一日練習して一度も中らない日だってあった。

「こんなの無理だ、運ゲーだ。」と思えれば、私は飽きてすぐ弓道を辞めてしまったと思う。でも、引き終わったあとに、自然とわかってしまう。左に腕を動かす時に肩の力を左右非対称にしてしまった、体を伸ばしきる前に矢を放ってしまった。たったひとつの動作を少し間違えた。だから中たらなかった。

そのたった少しのミスで、中らない。でもそれならば、もう一度そこに気をつけさえすれば次は中る。そう思って、何度も何度も引く。

何かに気をつけると、何かを忘れる。そんなことを繰り返しているうちに、あっという間に引退試合の日が来てしまった。


道場の先生を見ていると、終わりがないんだろうなと思う。いつまでたっても、百発百中には持っていけない、いつまでも未熟なままなんだろうなと思う。

でも、だからこそ面白い。

何かを書く作業だって、誰にでもできる。今の私にもできる。文章だってコピーだって、意味が伝わるものはなんとなく書ける。でも、何かが足りない。頭にはもう描けているのに、それを伝わる言葉に、誰かを動かす言葉にできない。


そんな「できそうでできない」が、私は大好きだということを知っている。

極めるまで、いつまでも失敗と挑戦を繰り返してしまうことを知っている。

だから、言葉を仕事にしたい。

できることでもなく、やりたいことでもなく。

できそうなのに出来ない、でもできるようになりたいことを仕事にしたい。

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