口から出た言葉が取り消せる時代
テクノロジーは、「一度口から出た言葉は取り消すことができない」という常識すら変えた。
メッセージアプリの主流LINE、そしてインスタグラムのDM、Facebookのメッセンジャー。どのアプリでも、制限はありつつも送信したメッセージを消すことができる。
これは、良いことなんだろうか。
LINEがこのメッセージ削除機能を装備するか社内で検討した際も、賛否両論があったそう。
メッセージの誤送でトラブルが起きるのを避けたいという利用者の声と、大切な約束が反故にされたり、いじめの証拠が隠滅されるなどの可能性。両方を考慮しながらLINEは、
・取り消した場合は痕跡がトークルームに残る
・24時間を越えると取り消しできなくなる
という結論に達した。
リリース後は「使えない」と評するメディアもあったが、それで良いと開発者は言う。
いたずらや遊び目的で送信取り消し機能を使ってほしくありません。“24時間しか消せない”、“消したら痕跡が残ってしまう”など、誤爆した人にとっては不十分に感じられる機能かもしれません。送信取り消しはそれでもどうしても消さなければならない誤爆に対してだけ対応する機能です。それこそが、メッセージ取り消し機能の本質だと考えています。
もちろん、意図していなかった人にメッセージを送ってしまったり、変換間違えをして話をややこしくしてしまったりすることはある。そこで、メッセージを消せる機能があれば便利だ。
でも、そんな非効率なコミュニケーションから意味が生まれたりするのも、言葉の面白さだと思う。私たちは、言葉から言葉以上のものを受け取る。
例えば、「明日の夜空いてる?」というメッセージを送ったあとに、別の予定が入ってしまったとする。その場合、もう明日の夜の予定を聞く必要はないし、むしろ聞いておいて自分が空いていないという変な状況になった。
でもそこで、メッセージを消してしまうのと、「ごめん、別の予定が入った」と追加で送るのでは、話が変わる。後者であれば、メッセージを受け取った人の返事次第で、別の日に食事に行こうという話になるかもしれない。
誰かと会う約束をするために、わざわざ送ったメッセージは、予定の調整以上の意味を持つ。
こういう、細かな機能の外に意味を見出すところに、私は人間らしさを感じる。
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