留学生指導員からみた日本の学童保育
初めての留学生指導員
虹の子には留学生指導員が何人かいます。
過去を振り返ると、台湾人、韓国人、中国人、ドイツ人、アメリカ人…
いろいろな文化的バックボーンをもつ留学生たちが非常勤指導員として虹の子で働いてくれました。
小学校から英語教育がはじまる国際化時代を見据えて意識的に採用…
したわけではありません!(笑)
実は、虹の子には求人広告を打っても打っても人が来てくれない、指導員不足にひやひやした時期がありました。
ある保護者の意見:
「いまはどこの企業も採用に苦労してる。もう若者は昔みたいにたくさんいなくて買い手市場じゃなくなってるから時給up も考えないと。でも、いい人に来てほしいから、個人のツテで信用できるところにお願いして探そう!」
を受けて、これまで働いてきてくれた指導員の待遇や経営リスクへも目配りしながら (わずかではありましたが) 時給を上げ、大学の研究室の先生に個別でお願いするなどしてドキドキしながら応募者を待つこと数日。
その時、応募してきてくれたのが台湾人留学生・呉イシュエンさん (のきちゃん) と韓国人留学生・洪スンゼさん (すんくん) のふたりでした。
ふたりは 2018年の親子クリスマス会でサプライズ婚約発表!すんくんの兵役を経てご結婚され、現在も京都にお住まいです。
文化的背景の違うおふたりからは日本 (虹の子) の学童保育がどのように見え、どう感じたかについて、Zoom でインタビューしてみました。
韓国の学童保育: 어린이의집
台湾の学童保育: 課後照顧服務中心と補習班
すん:
韓国の学童は、어린이의집、 オリニジプ といいます。日本語にすると子どもの家かな。基本的には宿題とか、勉強をする場所ですね。
すん:
そうですね、普通です。
だから虹の子で働きはじめた時、みんな宿題全然してへんけど大丈夫かなと思いました!(笑)
のき:
台湾の学童は2種類あります。「課後照顧服務中心」という児童福祉法に基づく保育に近いところと、「補習班」という教員免許のある人や国の決めたカリキュラムで専門の訓練を受けた人しか指導員になれない勉強中心のところと。
台湾はもともと共働きが多いんです。
なので、近所におじいちゃん・おばあちゃんが住んでいるおうちはそこにお願いして、おじいちゃん・おばあちゃんが遠方に住んでいるおうちは習い事や塾に行かせていることが多かったです。
小学校の正規の授業の中に、以前はクラブ活動の時間が組み込まれていたんですが、いまは放課後に回るようになりました。
そう!(苦笑)
虹の子でカルチャーショックを受けたのは、学校が終わるのが早いこと、塾に通う子どもが少ないこと、遊びを教えてくれるところがあるということ。
台湾の学童保育のようなところは、私の頃も今もあまり変わっていなくて、遊ぶことはほとんどなく、基本的には勉強の延長線として位置づけられているので、虹の子に通う子どもが本当にうらやましいです。
子どもの放課後の過ごし方が勉強ばかりなのはよくないと、他国を参考にして変わってきた感じはあります。
ふたりが小学生の頃の放課後の過ごし方
すん:
15時ぐらいだった気がする。宿題とか、塾とかいってた。
のき:
学年が上がるにつれて、半日授業の日数が減り、学校が終わる時間が遅くなる。高学年の時は水曜日だけ昼まで授業があって、他の曜日は16時まで授業でした。学校が終わったら、ベビーシッターの家に帰り、習い事に行ったり、宿題をしたり、おやつを食べたり、遊んだりして過ごしていました。
すん:
いろいろあります。英語とかスピードスケートとか。スピードスケートは僕も結構ガチでやっていましたよ。
のき:
私が小学生の頃はテコンドーやそろばん、英語塾が人気でした。いまはダンス、プログラミングかな?
虹の子でびっくりしたこと
すん:
採用面接に行く前に、大学の先生から学童について話を聞いていたので、勉強を教える場ではないというのは知っていました。ネットで情報を調べたりもしていて。(のきちゃんもうなづく)
でも、初めて現場に出た時は不安になりましたね、自由に。
決められたプログラムがない、何ページから何ページまで宿題しましょ、みたいなのがない。そういうところにびっくりしました、本当に。
あと、ええと、これは、もしかしたら言わないほうがいいことなのかもしれない、虹の子のために(笑) 。誰か忘れたけど、子どもの頭をツッコミで叩いたんですよね。韓国でなら大問題です。今なら、関西独特のツッコミだとわかりますが、当時は関西のノリや子どもを注意する大きな声に驚いてばかりでした。
ぼくは関西のノリはここで学んだかも(笑)。大学の学部では九州や東北の学生が多くて、実は関西人は少なかったから。
のき:
私は、虹の子みたいに自由に遊んで自由に過ごせる場所があることが不思議だった!自分の子ども時代にそんな時間や場所がなかったから…。私は長女でいつも上の立場だったから縦割りの関係がうらやましいと思ったりもしました。日本は学校も縦割りの取り組みが多いなと感じます。
あと、私は台湾では日本の児童相談所みたいなところで働いていたので、問題を抱えていない、純粋な子どもたちに接したのが新鮮でした。
すん:
僕の専攻は社会福祉専攻なんです。学校の社会福祉。
だから、日本の子どもの生活を近くでみたかったのが応募理由ですね。
まず、ドラマなどから日本の文化に馴染みがあって、そこから日本に興味を持って。親もぼくが日本に興味があるのをわかっていたから留学をすすめてくれたんですね。
高校の修学旅行が福岡だったんですが、その時に京都の存在を知って、高校2年で家族旅行で京都へ来ました。その時に今通っている大学がかっこいいと思って志望校を決めました。尹東柱という、韓国でとても有名な詩人がその大学の学生だったというのにも影響を受けたかも。
のき:
応募理由は私も同じ、子どもに関わる仕事をしてみたい、日本の小学生はどのような学校生活で放課後にどのように過ごしているのかを知りたかったから。
私が博士1年の時、すんが修士1年で私がティーチングアシスタントをしていたんです。それで、彼も子どもの福祉に興味を持っていたのを知っていたので、こんな募集あるよ、って勧めてふたりで受けに行きました。
「福祉の哲学思想」という授業があって、そこでよく彼の考えを聞いていて興味の方向が似ているのも知っていたから。
すん:
あ、僕はここで誤解を解いておきたいです!
ぼくたち、職場恋愛って言われるけど虹の子で出会ったわけではないです!虹の子で一緒に働き始める前に、お互いにちょっといいなと思っていて。つき合いはじめたのは虹の子で一緒に働きはじめてからなんですけど…。子どものことや保育のことで同じ話題で話すことが増えて…(以下略)
(虹の子で一緒に働くことが縁を深めたのでは…と思いながら聞くインタビュアー ^^)
すん:
なんどか心折れたことはある(笑)。
子どもが平気で指導員を殴ってくるから。パンチパンチ!とか。
直接アドバイスをいただいたわけではないけど、M先生とか、キャリアの長い指導員がどう接するのかを行動でみせてもらっていたので、参考にして見習うようにしていました。あっち(子ども)がしても流す、みたいな感じで。最近はそんなことで心折れたりしない、ある意味 ”違う自分” になったと思います!
のき:
女子が男性指導員に厳しいケースが多いですね。女子は女性指導員にやさしいから私はそんなに辛いめにあっていないかも(笑)。
子育てするならどの国?
すん:
変な話、性別によって変わります。
のき:
兵役?(笑)
すん:
いや、韓国って性犯罪の問題があるので。(女の子には)日本の方がはるかに安全。勉強がすごく好きな子には韓国はいい。日本は自由でたくさん遊べて遊びのプロになれる。どっちの国にも良さがある。
のき:
日本はジェンダーの問題があまり話されている感じがないですね。韓国は最近すごく話されている。あと、日本はママ友みたいな仲間意識がすごく強い文化があるので、台湾にはそういうのがない分、自分はなじめるかな、と不安に思います。台湾はジェンダー平等や差別などは3つの国の中では一番ない国かもしれない。
日本は育児支援などは充実していますね。でも、日本は家事負担、子育てを含めて女性に偏っている気がします。
ふたり:
虹の子で印象的なのは、子どもを尊重して自主性を守ってあげているところ。班活動などの中で子どもたちに考えさせることを常にやっているところ。
私は子どもの頃、大人からああしなさい、こうしなさいと言われるばかりで自分で考えることは少なかったんです。だから、常に子どもたちに「何がしたい?」と尋ねて、子どもたちが決めて、指導員たちはそれを実現するためにがんばる、みたいな姿に感銘を受けました。あとは手のかかったおやつの美味しさですね!
文化を受け入れることも大事だけど、受け入れないのも大事!
すん:
僕は日本食は大好きだけど、納豆は苦手。
自分の中の軸がしっかりしないと、海外へ行ってすべてを受け入れてしまうけど、それはよくない。
僕でいうと目上の人を敬う気持ちは崩さないとか。韓国の文化として、目上の人をうやまうのは、目上の人のいいところを学ぼうとするというのが原点なんですね。虹の子で心折れそうだった時の僕を救ってくれたのは、韓国のその文化です。
のき:
ルーツを大切にする。
やっぱり海外に行ったら、自分の国について聞かれることが多いので、それで自分が自分の国のことを意外と知らなかったことに気づく。そこで自分の国についてもっと学ばないと、と思うようになるのはとても大切なことですね。
全部受け入れているのは流されているのと同じ。自分の価値観、自慢できるところをブレずに持っていて。その方がいいと思う!
すん:
(1) M指導員の生き方を間近で見て学ぶことができたこと。
一番年上なのに第一線で活躍して誰よりもその場を楽しんでいる。全身に浮き輪をつけてプールに飛び込んで監視員に大人なのに怒られたり。誰よりも子どもみたいに遊んで仕事にしっかり向き合う姿勢というか。
(2) のきさんと出会えたこと。
虹の子で子どもたちに接している姿勢を見ていいなと思った。
のき:
(3) 日本の遊びをたくさん知ることができた。子どもと関われるようになった。
すん:
(4) 外国人の留学生に仕事の場を与えてくれたことが本当にありがたかった。
のき:
おかげで現在の仕事につながりました!
それと関わってだけど、働けるように支えてくれた保護者に出会えたこと。子どもだけでなく保護者と話せる機会があったのがすごく大きい。毎日のお迎え、行事、親キャン。いろいろお話しする中で、
(5) 親子の関わり方が行事で見られることで日本の文化をより深く知ることができた。
最後に雑談: 親子の関わり3ヵ国比較
のき:
親があつまってなにかすることはとても日本っぽいですね。PTAとか。
台湾の PTA 的なものはどちらかというと連絡会っぽい。業務連絡的であっさりしている(笑)。
すん:
韓国は親の言うことを子どもがきく文化があるので、子どもはイエスマンとして生きている(笑)。それと比べると日本の親子関係はフラットだなと思います。そんなところに文化の違いを感じます。
私たちの学童:
一般社団法人 共同学童保育所 虹の子クラブ
2022年に創設40周年を迎える京都市上京区の学童保育施設。
民設で学区のしばりがないため、新町学区、西陣中央学区、御所南学区、乾隆学区のほか、国立大附属、インターナショナルスクールなどさまざまな学校の小学生が集います。
保護者全員が経営者として運営に関わる「共同学童保育」というスタイル。創設時から6年生までの多年齢保育を実施、経験豊かな指導力ある指導員とともに、親も成長できる場としてみんなで協力して運営しています。
モットーは
「子育てに夢とロマンを」
「里芋は子芋と一緒に親芋も育つんだって。里芋のような親子になろう! 」
URL: http://nijinoko.org/
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いただいたサポートは、一般社団法人共同学童保育所虹の子クラブへ寄付させていただきます。