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記事をチェックするコツ、紹介します
中日新聞に入社したとき、校閲部長から配られた資料の中に「注意 間違いのパターン」なるものがありました。
新聞校閲をする上で注意すべきポイントがまとめられています。
文章を書く上でもお役に立つことがあるかもしれません。いくつかご紹介します。
![](https://assets.st-note.com/img/1707566297337-KS88m4BIM3.png?width=1200)
※以下、間違いの数字や人名、描写は実例を基にしたフィクションです
1月31日午後9時。
夜ご飯を食べ終え、コーヒー片手に2月1日付朝刊の記事を一生懸命校閲しています。
①日付
ある原稿に事件の発生時刻が「2月1日午後2時」とありました。いま作っている新聞は2月1日付ですが、校閲作業をしている時点の時刻は1月31日午後9時です。
「1月31日午後2時」はあり得ますが「2月1日午後2時」はあり得ません。
このような”未来原稿”に遭遇することがたまにあります。
②今月 来月 先月
![](https://assets.st-note.com/img/1699773883328-Avah2nFgcr.png?width=1200)
その事件原稿には「同様の手口は今月に入って2回目」とありました。
2月1日付朝刊に「今月」と書いてあれば、読者にとってはもちろん2月のこと。
ですが、いま校閲作業をしているのは1月31日ですから「今月(読者にとって2月)に入って2回目」はあり得ません。
実際に原稿を書いたり見出しを付けたりしているのが1月なので、その現実に引っ張られて1月のことを指して「今月」と書いてしまうことがあります。
前々から準備している原稿や、月またぎの際には特に注意が必要です。
見出しの「きょう」や「あす」も間違いやすいポイントです。
③単位
![](https://assets.st-note.com/img/1699773606662-HQZljk54Ya.png?width=1200)
さて次に貿易に関する原稿が出てきました。
日本の2022年の輸出額が「約9兆8千億円」とあります。
鋭い方はすぐに違和感を覚えるかもしれません。近年の輸出規模からすると桁が違うのではないかと。
調べてみると、「約98兆円」の間違いでは?という指摘につながりました。
入社時の資料を見ると、最後の「身近なものと数字を比較するとよい」に下線が引かれ、「毎日の新聞から学ぶ」と鉛筆書きが残されていました。
![](https://assets.st-note.com/img/1705229502616-bfGO4okyj5.png?width=1200)
部長からそんな趣旨のことを言われた記憶があります。
現実の校閲作業ではまずインターネットで資料を探してデータを突き合わせて、というような考えが先に立ってしまいがちです。
悪いことではありませんが、ネットで調べる時間的余裕などないときに、具体的な根拠はないけど一言疑問を呈することができるかどうか。
日頃の向き合い方が問われるところです。
④最後の単位
![](https://assets.st-note.com/img/1699774211859-IkyGKx1Snw.png?width=1200)
先ほどの貿易の記事には輸入額が「114兆4711円」と書かれていました。
当然これは「114兆4711億円」だろうと引っ掛かります。校閲としては引っ掛からないといけません。ですが・・・
実際に私、かつて経済面の原稿で見落として訂正を出してしまったことがあります。振り返れば単純な間違いで見落とすはずはないと思ってしまうのですが、汗顔の至りです。
その時は「◯億××××円」と、「万」が抜けてしまっていました。
最後の単位、抜けがちです。
⑤姓より名
校閲の対象となるのは原稿だけではありません。写真に添えられるキャプション(エトキ=絵解き)の確認もしています。
さて手元には新しく、大学准教授の中日敏弘さんのインタビュー原稿が出てきました。
ほどなくして整理部(※)からエトキが添えられた写真も出力されてきました。
※整理部についてはコチラ↓↓
おや、エトキをよく見ると准教授の名前が中日敏広さんとなっています。
入社時の資料では、人名で間違えてしまう傾向があるのは「姓」よりも「名」だと注意喚起しています。
確かに「としひろ」さんといっても「敏弘、敏広、俊宏、俊博…」さん、と多くの異なる漢字が使われます。
一般の方のお名前でも、原稿の表記とエトキの表記との齟齬で、間違いが見つかることがあります。
今では「紗」と「沙」、「実」と「美」など間違えることの多い漢字のパターンに対しては、一呼吸置いて見る癖がついています。
⑥途中で別人
中日准教授のインタビュー原稿。
つつがなく校閲を終えようとしていたところ、最終段落の最後の最後で急に田中准教授が登場しました。
問い合わせたところ、何のことはない、田中准教授は中日准教授の間違いでした。
実際、たまにあります。
不意を突かれてびっくりします。
⑦肩書
さて今度こそ無事に作業を終えたと思っていたら…。
中日准教授は中日教授の誤りだったようで、修正原稿が流れてきました。
どうやらインタビューをした時から掲載日までの間に肩書が変わっていたようです。
肩書は絶えず変わっており、以前のものが正しいとは限りません。
人事異動の時期、年度替わりなどは特に注意が必要です。
以上は新聞校閲をする際の注意点をまとめた資料を基に、ミスのパターンをご紹介しました。同時に文章を書くときの注意点ともいえるかもしれません。何かの参考になれば幸いです。
【番外編】
資料にあったものではありませんが、最後にありがちな脱字とダブりの例をご紹介。
✕ 「・・・」述べた → ○ 「・・・」と述べた
✕ ~するともに → ○ ~するとともに
✕ ~するととともに → ○ ~するとともに
✕ ~しため → ○ ~したため
✕ ~したたため → ○ ~したため
このような間違いは、行の終りから次の行にまたがるところに使われる場合に見落とす確率がぐっと上がります。