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ピアノは映す

<ブログ「日乗Writing」より転載>

福岡市の緊急事態宣言が開け、稽古場も再開されたので、久しぶりにピアノを弾きに行った。
多分一ヶ月以上間が空いていたと思う。
指は案外覚えていた。
思ったより快調に弾けていた。

弾いているうちに、なんとなく心のなかに、
黒いもやもやが見えてきた。
自分はどんなもやもやを持っているのだろうと、目をこらしてみた。
ここしばらくずっと抱え込んでいた、気掛かりなことが、ふと明らかになった。
ああ、それが今一番、そして思ったよりずっと深く悩んでいることだったんだ。

そのもやもやは、弾いているうちにどんどん膨らんで巨大になって、
最早弾いてはいられないくらいになってきた。
怖くて怖くてたまらなくなってきた。
今すぐピアノに蓋をして、うちに帰って、
なにか出来ることはないか探して足掻いてみたくなった・・・が
ともあれ時間まで弾きおおせた。


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以前も似たようなことはよくあった。
ピアノを弾き始めると、心のわだかまりがどんどん明らかになってくる。
それは、最初は芝居関係のことが多かったから、
ピアノの稽古場と芝居の稽古場が同じ施設だから
場所が引き金になっているんだろうと思っていた。

そしてここしばらくはそんな現象にも見舞われず、
ピアノに集中できていたように思うんだけど・・・。

ピアノを弾く。
ということは恐ろしい事かもしれない。

せっかく弾いているのだから、鍵盤に集中出来ればいい。
悩みがあったとしても、それが吹き飛ぶほど集中して、
弾き終わればとてもさっぱり、となればいいのに。

それを目指しながら、それでも、
ピアノが心を炙り出すと知ったこともまた、
感動的でないこともなかった。


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