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午睡の夢

<ブログ「日乗Writing」より転載>

あとは帰るだけだったのに、持ち出してはいけないものが荷物の中からたくさん出てきた。面倒だが仕方がない。もう一度あの部屋に戻らなくては。私物の荷物ごと抱えてきれいな階段を降りる。こんなことはしたことがない。どうしちゃったんだ。

バスの座席に座っている。古めかしいバスだ。川の堤と並走した道。面倒だが降りて引き返さなくては。次のバス停で下車し、とって返す。まだ歩いても大した距離ではない。バス停ひとつほど。歩いたほうが早い。

車道に張り付いた、申し訳のような歩道。すぐそばを車や何かが通る。車通りはそれなりにあるが、渋滞ではない。夕方が終わって、もうすぐ夜になる時間。商店街めいたものが見えかくれする。

子供の頃の道に似ている。親戚のうちの、近くに似ている。

夜が近い。

行く手少し先を、道が横ぎっている。交差点だ。
その道を、さっき乗っていた、路面電車が通っていった。
ふと、音が消えた。

何もかもそのままで、すべての音が消えた。
歩きながらわたしは当惑していた。
こんなことになったことはない。何故何も聞こえないのだろう。

それはまさに、とてつもない体験だった。

やがて突然、音が戻ってきた。
その間どのくらいあっただろう。
当惑しながらわたしは歩き続けていた。
当惑はしていたが何故か怖れてはいなかった。
急にそんなことになった理由を、歩きながら一生懸命考え続けていた。

信号機の下を通った。

夢が終わった。



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Mel
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