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第一印象と意外性の印象格差

「あれ、キクラゲや」

いつもの散歩コースで、頻繁に顔をあわせる、背が高くほぼ無表情・無愛想な”おっちゃん”の横を通り過ぎようとした時のこと。 ”おっちゃん” はふと立ち止まり、歩道横の木を指差しながら、ややぶっきらぼうに話しかけてきた。

キクラゲは、春から秋にかけて、広葉樹のニワトコ、ケヤキなどの倒木や枯枝に発生するらしい。(Wikipedia

言ってはなんだが、「あの黒いのがキクラゲ」「食べるとコリコリする」という既知の情報+「雨が降ると大きくなる」という1つの新しい情報は、さほど驚きのネタではない。

というのは、「キクラゲ」ネタはこの秋2度目だから。

その少し前に、同じ場所で、これまた頻繁に見かける小柄でニコニコ元気なおばぁちゃんにも、教えていただいた。香川では、「キクラゲ」は鉄板ネタ、もしくは、誰かに言わずにはいられないネタなのかもしれない。

でも、あの日から、私たちは、
散歩の度に、”おっちゃん” の車があるかを確認している。
車があるのにすれ違わないと、”おっちゃん” のいそうな場所を探している。
その木の前を通るたびに、キクラゲの状態確認をし、”おっちゃん” を思う(頻繁に会うけど)。

そして、これからもきっと、ずっと、
キクラゲや、キクラゲが生えそうな木を見るたびに、”おっちゃん” を思い出す。

あの日、背が高くほぼ無表情・無愛想な”おっちゃん”が、まさかの「キクラゲ」ネタで、ぶっきらぼうに話しかけてくるという意外性は、一撃必殺級のインパクトがあった。

私たちにとって人生2度目・この秋2度目の「キクラゲ」ネタにも関わらず、、だ。

残念なことに、小柄でニコニコ元気なおばぁちゃんのことは、”おっちゃん”ほど思うことはないし、私たちの間で話題になることもない。

”おっちゃん”、正確には”おっちゃん”の意外性は、私たちの心をムギュッと鷲掴みにし、放さない。少なくても私は、遠くで暮らす実母よりも多く、”おっちゃん”のことを、思っているのだから。

コミュニケーションにおいて、極めて大切とされるファーストインプレッション。 ”おっちゃん”よりも、おばぁちゃんの方が、よほど良い(申し訳ないけど)。

しかし、そんな印象格差も、意外性が吹っ飛ばしてしまった。意外性、侮れない。

”おっちゃん”に乾杯、いや完敗である。

”おっちゃん”とは、その後何度もすれ違い、挨拶も重ねているが、会話をすることはない。少し残念な気もするが、そこには、なんの意外性もない。




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