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29.07 微分の初歩(微分で得るもの)

宝の持ち腐れとならないように、微分計算をテスト以外で使えるようになるのが理想です。物理学で利用されているのはよく知られていますが、経済学でも利用されているようです。経済学部の受験で数学が課されるのはそのためだし、大学によりますが数学の授業もあるようです。


問題を解きながら基本事項を確認します。

問1(瞬間の速さ)

手にビー玉を持ち、手を離すとビー玉は垂直に床に落ちます。空気抵抗を考えないことにすると物は方程式 $${y=4.9t^2}$$に支配されて落下します。ここで $${y}$$は落下してからの距離(メートル)を表し、$${t}$$は落下させてからの経過時間(秒)を表します。
十分高い所からビー玉を落としたとき、3秒後の落下するビー玉の速さを求めてください。


これは物理「物体の落下運動」が元ネタです。移動距離が経過時間の関数になっているので、微分することで瞬間の速さを求めることが出来ます。
関数 $${y}$$を変数 $${t}$$で微分すると
              $${y'=9.8t}$$
なので、3秒後の速さは
              $${y'(3)=9.8\cdot 3=29.4}$$
より、秒速 29.4 m です。▮
※ 別のところで触れる予定ですが、もしも物体の速さが経過時間の関数で表されているなら、微分することで加速度が求められます。
$${y'=9.8t}$$が正にそれに当たるのですが、これを $${t}$$で微分すると
              $${(y')'=9.8}$$
となりますが、この $${9.8 \: m/s^2}$$は重力加速度と呼ばれているものです。



問2(微分係数)

実数上で定義された関数 $${y=x^3-3x^2+5}$$に対して、次を求めてください。
(1)  $${x=1}$$における微分係数
(2)  $${x=-2}$$における微分係数


微分係数を求めたいので、$${y=x^3-3x^2+5}$$を微分します。すると
              $${y'=3x^2-6x}$$
となります。したがって
(1)  $${y'(1)=3\cdot 1^2-6\cdot 1=-3.}$$  (2)  $${y'(-2)=24.}$$ ▮



問3(接線の方程式)

関数 $${y=-x^2+3x-1 \:\: (x \in \mathbb{R})}$$のグラフ上に$${x}$$座標が2である点Pをとる。このとき、点Pにおける接線の方程式を求めてください。


点Pの$${y}$$座標は
            $${y(2)=-2^2+3\cdot 2-1=1}$$
なので、点Pの座標は$${(2, \: 1)}$$と分かります。
一方、接線の傾きは微分係数 $${y'(2)}$$です。$${y=-x^2+3x-1}$$を微分すると
              $${y'=-2x+3}$$
なので
              $${y'(2)=-1}$$
です。
よって点$${P(2, \: 1)}$$における接線の方程式は
             $${y-1=(-1)\cdot (x-2),}$$
                $${y=-x+3.}$$ ▮

※ 教科書や参考書には接線の方程式の公式が書かれていますが、覚えるものではありません。図形と方程式で得た知識そのものだからです。



問4(関数の値の変化の様子)

関数 $${f(x)=x^2 \:\: (x \in \mathbb{R})}$$において、次の質問に答えてください。
①  微分係数 $${f'(-2), \:\: f'(-1), \:\: f'(1), \:\: f'(2), \:\: f'(3)}$$ を求めてください。
②  ①の結果を利用して、$${x=-2}$$および $${x=1}$$の前後での $${y}$$の値の変化を増加、減少で答え、なぜそう答えたかの理由も添えてください。
③  ①の結果を利用して、$${x=2}$$の周辺と $${x=3}$$の周辺とでは、どちらの方が$${y}$$の値の変化が激しいですか。理由も添えて答えてください。


① $${f(x)=x^2}$$を微分すると $${f'(x)=2x}$$なので
  $${f'(-2)=-4, \:\: f'(-1)=-2, \:\: f'(1)=2, \:\: f'(2)=4, \:\: f'(3)=9.}$$

②  $${f'(-2)=-4}$$より$${x=-2}$$の前後では減少し、 $${f'(1)=2}$$より$${x=1}$$の前後では増加している。なぜなら、微分係数は平均変化率で $${x}$$の増分をどんどん小さくしたもので瞬間の変化率を表しているので、符号によって増加減少が判断できるからです。プラスの場合は増加、マイナスの場合は減少です。

③  $${f'(2)=4, \: f'(3)=9}$$より、$${x=2}$$の周辺よりも$${x=3}$$の周辺の方が激しく変化しています。変化率を比べると$${f'(2)=4 < 9=f'(3)}$$だからです。▮
※ 答えからはいろいろ考えられそうなので、微分係数から判断できることが書かれていれば良しとします。
②③は関数 $${y=x^2}$$のグラフからも分かりますね。ここで大切なことはグラフがなくても判断できるということです。


微分係数の符号を調べることで、関数の値の変化が分かります。次回はこの話の拡張「関数の増減および増減表のつくり方」について話します。▢

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                           (こと はじめ)

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これまでもそうですが、大学以降の数学を意識して書いています。特に有料部分はそれを意識して書いています。このマガジンから数学の内容が少し高度になり、このマガジンに入る三角関数、指数・対数関数、微分積分の入口は中学数学から大学以降への移行期に相応しいものです。

中学数学と高校数学の違いが明確になるのはここからです。これまで学んだ多くの知識を踏まえて話が展開するので理解するのは容易くありません。でも…

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