【浅草ロック座】ストリップ、それは大人の芸術鑑賞会【まつろわぬもの】
こんにちは。ことです。
芸術の秋!ということで、ストリップショーを観に行ってきたので、初心者の方にも魅力を伝えられるようにレポを書いていこうと思います。
今回は、浅草ロック座の「まつろわぬもの 2期」という公演を観に行ってきました。
実は、ストリップショー自体は去年の秋に初体験しているのですが、その公演で一目惚れした踊り子さん「永澤ゆきの」さんが、浅草ロック座にまた出演されると聞いて、せっかくの機会だしもう一度行ってみようかな〜と思った次第です。
ここからは公演のシステムや、ショーの流れについて簡単に説明をしていこうと思います。
※今回のnoteは、「まつろわぬもの」という浅草ロック座公演のネタバレを含みますので、ご了承ください(そして、公演と踊り子さんに対する愛を綴っていたら気付いたら1万字超えていました。照)
浅草ロック座について
公演のシステム
現在の浅草ロック座の公演数は1日4公演です。
そして、公演ごとにチケットを買うというわけではなく、一度料金を支払えば何公演でも観ることができます。つまり、女性の私なら4000円で4公演観れるわけです。コスパ良すぎか?????
ちなみに、飲み物は持ち込み可能な上に、1時間以内であれば1回外出することも可能なので、プンラス(オープンラスト)したいけど空腹に耐えきれる自信がない!という方も心配ご無用です。
座席はどこがオススメ?
場内は携帯の使用禁止となっていて当然撮影できないため、こちらの写真をお借りします。スミマセン。
私も、初心者に毛が生えた素人なので「絶対この席がいいよ!」とは言い難いのですが、盆とよばれる中央の回転ステージの近くが好まれる傾向があり、ベッドショーも中央ステージでのパフォーマンスもほどほどに見れます。
正面から観れる座席も人気が高く、特に全体を俯瞰して観たい時などはオススメです。(横から観るのと正面から観るのでは、照明の当たり方が全然違うので、ぜひ一度は観てほしい……!)
ショーの流れ
今回の公演を例にあげると、踊り子さんが7人いるので、7演目+フィナーレの構成になっています。途中休憩も挟みますが、大まかな1公演の所要時間は1時間50分と、わりと盛りだくさんの内容です。
浅草ロック座では、その演目のことを「景」という単位で呼び、その景ごとにテーマや世界観、メインで担当する踊り子が異なります。流れとしては、それぞれに持ち曲が3〜4曲あって、1曲は着衣でのパフォーマンス、2曲目以降で脱ぐというような感じです。
前半の1曲は、メインの踊り子さん+サブの踊り子さんやバックダンサーさん(この人たちは脱がない)で曲に合わせたパフォーマンスを行います。
その後、メインの踊り子さんだけのステージとなり、盆という回転ステージでストリップを行うために、衣装を変えて(ベッド着と言うらしい)再登場する流れが一般的なようです。
盆に移動してからは、曲に合わせて、各景のテーマやキャラクターに合った演技や表現、脱ぎ方で私たちを魅了してくれます。
そして、ここで特筆したいのが「踊り子さんがポージングを決める度に、観客の方々で拍手をする」というストリップショーならではの文化があることです。
フィギュアスケートで技が決まった瞬間拍手する、みたいなノリに近いです。
画力がないため比較的分かりやすいポーズを例に挙げてみましたが、どんなにしんどい体勢でも決して表情を崩さず、役になりきって演じてくれる踊り子さんたちは本当にすごいと思います。
その他
客層:中高年の男性が多い印象だけど、若い男性客やカップル、女性のお客さんもちょこちょこいます。男女比でいうと、8:2くらい。最近行った時は外国人観光客も多かったです。
治安:女性1人で行っても誰も話しかけてこない程度には良いです。「いけ!早く脱げ!」みたいな異様な空気に包まれているというより、みんな推しの踊り子さんのパフォーマンスを観るために来ているんだろうなぁという感じ。眼差しがあたたかい。
演出:浅草ロック座はショー形式のストリップ劇場となっています。専属の演出・構成を行うスタッフさんがいたり、衣装班があったり、バックダンサーがいたり。別のストリップ劇場に行ったこともありますが、照明、音響、セット、演出、そもそもの会場キャパなど、全てにおいて最高峰なので、初心者の方は浅草ロック座から始めるのがオススメ。
公演レポ
ここからは本公演のレポに移っていきたいと思います。このnoteを書く目的として、もちろん「ストリップショーはいいぞ!」ってことも伝えたいのですが、本当に「まつろわぬもの」という公演が好きで、そして、2期の踊り子さんたちが好きで、自己満にはなりますが、想いや感動が色褪せないうちに、文章に認めさせていただけますと幸いです。
<公演鑑賞日>
2023年9月23日(土)2回目公演
2023年10月7日(土)1回目公演
2023年10月9日(祝)1回目・2回目公演
1景 ゆきな『土蜘蛛』
本公演のタイトルである、“まつろわぬもの”とは古語で「従わない者」を意味するそうです。1景目はゆきなさんの『土蜘蛛』。トップステージでどこまで観客を魅了できるかによって、公演の完成度や満足感が違うと思うので重要な役割です。
土蜘蛛とは、大和朝廷に恭順せず敵対した古代の「まつろわぬ人々」へ向けた蔑称だそうです。ゆきなさんがセンターに登場すると共に、背景にはクモの巣に見立てた布が張られ、ゆきなさんの周りで伏せていたダンサー6名が起き上がりました。
忍者みたいな装束の衣装に黒ブーツ。ゆきなさんメイン景ということもあって、女郎蜘蛛的なポジションなのですが、もうなんかオーラから違くて。高貴で気高い絶対的なボス。1人だけ髪を結いていないのもあって、激しいダンスで揺れる髪すら美しい。
そして、和風ながらもロック味のあるノリのいい曲をBGMに、総勢7名での群舞。すごい。圧巻すぎる。途中花道に並んで踊るシーンがあったのですが、一糸乱れぬダンスがカッコ良すぎて、一瞬で心を鷲掴みにされました。
群舞が終わった後は、キラキラと光るシンバーのロングドレスに身を包んだゆきなさんが再登場して、ベッドショーへと移ります。この後、この人が脱ぐのか…?と思うと、女性の私でもドキドキします。
ドレスの下は黒いハーネスブラとガーターベルト。透明感のある白くて弾力のありそうな肌に、桃色の乳首がよく映えます。盆と距離の近い席で観た時に、両方の乳房の下にホクロが1つずつあることを発見したのですが、さすがにどエロすぎるだろ。
どちらかと言うとロリ系というか、可愛らしい雰囲気の方だと思うのですが、終始クールな態度でしびれました。「絶対に可愛いなんて言わせない!この景の世界観を崩してたまるか!」という気概を感じます。特に、ベッドショーでの挑発的な目線にはゾクゾクしました。踏まれたい。
2景 永澤ゆきの 『浅茅が宿』
『浅茅が宿』とは、江戸時代の怪異幻想短編集「雨月物語」の中の物語です。7年ぶりに男が故郷に残した妻の元に帰ったが、実は妻はすでに亡くなっていて、会ったのは幽霊だったという顛末からすれ違う男女の模様を描いています。
英語の会話音声が流れて、「なんだなんだ?」と思っているうちに、推しである永澤ゆきのさんが下手側から登場。あーーー可愛い。ダンサーみたいなパンツスタイル衣装に身を包んでいます。
しばらくは、ピアノのインスト曲をBGMにソロでダンスを踊っていたのですが、ステージ中央に橋下まこさんが座った状態でふわりと現れ、ゆきのさんに笑顔で手を振ります。愛する2人の再会。
そこからは、本当に至福の時間といった感じで、2人で優雅にデュエットダンスをしたり、シンメトリーダンスをしたり。互いに深く愛し合っていることが表情や仕草から伝わってきます。
そんな幸せなひとときも束の間、急に花道を走り出して去っていったまこさん。「帰りを待ってくれていたはずの妻はもう存在せず、男が幻想を見ていただけ」という現実を叩きつけられるシーンです。
もう一緒にダンスを踊った妻はいないんだ。手を差し伸べても、その手を取ってくれる人はいません。ここからの、ゆきのさんの表情が本当に切なくて、切なくて。一観客である私ですら胸が張り裂けそうになって、気づいたら涙が溢れおちていました。
ベッドショーも圧巻の演技。推しということを贔屓目に見ても言うことがありません。ドレスを脱ぐ、ただそれだけなのに、表情や指先からこれでもかというくらいの“深い愛”が伝わってきます。リボンをほどく時の愛おしそうな表情が本当に好き。私は100回くらい恋に落ちました。
閉幕の瞬間は、「隣で手を握って」という歌詞と共に、ゆきのさんがドレスを脱ぎ、左手を観客に差し出して終わるのですが、この時の表情や指先の美しさといったら…!バレエ経験者だから、あんなにしなやかで繊細な表現ができるのだろうか。
本当に表現の鬼だなと思わされるし、アイドル並みに表情管理ができるのすごいし、切ない表情させたらゆきのさんの右に出る人はいないと思います。
3景 藤川菜緒『虫愛づる姫君』
『虫愛づる姫君』とは、年頃の美しい女性でありながら、身だしなみや作法もおろそかに、ただ虫を愛し続けた風変わりな姫の物語です。
打って変わって平和ムードの3景。明るくポップで元気になれるステージ。さっきから情緒が揺さぶられっぱなしなので心穏やかに鑑賞できそうです。某森で虫を捕っていそうなBGMと共に、藤川菜緒さんこと「なおぴ姫」の登場。
ティアラに水色のミニドレス、といったいかにもプリンセスな装いなのに、虫取り網をあちこちに振りかざして、しまいには観客も捕獲しようとしているチャーミングで元気いっぱいのお姫様。
ステージ中央の王座に座って、側にあった花瓶から花を掴んで、投げ捨てるところでリズミカルな曲になり、下手側から3匹の虫ちゃんズ(カマキリ、イモムシ、カタツムリ)が登場し、軽快なダンスタイムの始まりです。
思わず手拍子をしたくなるような楽しげな曲と、目の前に広がるコミカルな光景。そして、ハイヒールを履いているとは思えないくらい縦横無尽にステージを走り回る、笑顔が絶えないなおぴ姫。これが藤川菜緒さんの魅力なのだろうか。
ベッド着は、上品な印象のピンク色のドレス。ドレス姿が2回も観れるなんて、もはや披露宴のお色直しです。ファン大歓喜。大好きな虫ちゃんが入ったバスケットを片手にゆっくりと盆へ移動します。
ベッドショーでは、虫ちゃんを胸に這わせたり、股に挟んだり、騎○位みたいな腰の振り方をしてみたり、虫オ○ニーってこと?えっっっろ。ていうか、ポップで楽しい音楽と表情豊かな菜緒さんの相性が良すぎて、一言で言えば「元気なエロ」って感じでした。菜緒さんの弾ける笑顔が大好き。
4景 鈴木千里『平将門』
大問題の4景。うわあああこんなん好きにならないわけないでしょ!もう! 気を取り直して、前半のトリを飾るのはクールビューティー姐さんの鈴木千里さん。いえ、千里様と呼ばせてください。
『平将門』は日本史の授業で習った方も多いと思うのですが、平安京の政治体制に不満を持ち反乱を起こした人物で、非業の死を遂げたことから日本三大怨霊の1人と呼ばれています。
不穏そうなBGMから始まりました。赤い上衣に白い袴を着た千里さん(平将門)の周囲には、黒い和服を着た4人のダンサーがいて、追手に包囲されてしまった状況であることがわかります。
ラップ調の音楽に変わり、5人での群舞です。激しそうなダンスをしていても表情一つ変わらない千里さんだけど、軽やかなステップやピタッと止まる動作がすごく美しくて好き。
あの手この手で応戦しつつも、曲の最後には4人のダンサーから撃ち放たれた弓矢によって、倒れてしまいます。このシーン、何度観ても呼吸するのを忘れるくらい魅入っちゃうんだけど、照明を激しく点滅させてスローモーションかのように見せる演出も、撃ち抜かれてズタズタになるその一コマ一コマの動きがとても細やかなのも好きです。
暗転して、雷雨の音と共に稲妻の光が落ちるような演出がありました。明かりがつくと、4人のダンサーたちは一目散に千里さんの居場所を探し始めます。どうやら殺したはずの平将門が目の前から消えてしまったみたいです。
そして次の瞬間、真っ赤な照明に照らされて軍帽と軍服風ワンピースみたいな衣装を身にまとった千里さんが現れ、ダンサーたちを次々と念力みたいな技で1人残らず倒していきました。
どういう展開?生き返ったの?と思う方もいると思うのですが、「帝都物語」という作品もこの景でのテーマになってるらしく、魔人加藤が女として蘇ったということらしいです。
ここからの千里さん、人ではない何かが憑依してるんじゃないか?と思うくらい、何一つ変わらない表情で終始演技をするのですが、「人間ってこんな脆いのか?」「たかが弓矢で私を殺せると思うなよ」とでも言うかのような冷たい視線をダンサーたちに向けていて、本当に怖かったです。観客である私ですら妙な緊張感が走りました。
盆で、カッとブーツで床を蹴るのも、マジでかっこいい。距離が近くなった分、千里さんからの脅威をより密に感じて、絶命しそうになりました。
軍服風ワンピースの下には、黒いロングドレスとハーネスブラ。もはや「解釈不一致だから脱がなくていいよ〜!」と心の中の自分は言っていましたが、色白の細くて引き締まった身体を見て「綺麗だ……」と思ってしまったので私の負け。
ベッドショーの後は、軍帽を被り直して軍服風ワンピースを手に持ってステージに戻っていきました。閉幕直前に軍服を再度羽織り、後ろ姿のまま退場。閉幕する際は、衣装を脱いで真っ裸になる踊り子が多い印象(少なくとも肌は見せている人が多い)なので、あえて肌を見せずに終わらせるのかっけええええええってなった。
登場から退場するまでずっとカッコよくて、というか千里さんの端正なお顔と冷めた表情とウルフカットと軍服風ワンピースとその下の黒いハーネスブラの組み合わせずるくない?女性ファン囲い込みに来てるでしょ。4景終わりに休憩が挟まってくれて本当によかったです。「さっきのヤバくない!!?」って言わないと気が済まない。もちろん公演自体の完成度が高くて全部オススメなのだけれど、千里さんの4景を観て「あ、この公演は絶対に誰かに布教しないといけない…」と感じました。私も短期間で3回も浅草に来ることになるとは思っていなかったです。
5景 笠木いちか 『好色五人女』
『好色五人女』というのは、実際に起こった5つの恋愛事件を題材とした5章からなる小説だそうです。不義密通(現代で言う不倫、浮気)が許されなかった江戸時代に、本能のままに愛を貫き通した5人の物語。
学校のチャイムが鳴り開幕。5人の踊り子たちが椅子に座って登場。パステルカラーのライトにポップで可愛い雰囲気の曲、そして、制服×振袖というあまりにも最強すぎる衣装に、アイドルオタクの私はすでにハートを射抜かれています。
笠木いちかさんのメイン景なのですが、今まで永澤ゆきのさんにしか興味がなかった私にとっては、とてつもなく衝撃的な出会いでした。「なんだ、あの可愛すぎる女は。アイドルじゃん。」と。
ただね、話は脱線するんですが、ゆきのさんも負けてないんですよね。いや、三つ編みセーラー反則では?そして、一緒に5景を支える友坂麗さん、藤川菜緒さん、橋下まこさん、皆さんも本当に可愛くて。というか、踊り子さんが5人も揃っているという光景が贅沢すぎて失神しそうです。
話を戻します。振袖をひるがえす動きが曲中にちょこちょこあるのだけれど、品がある上に可愛いし、元々の衣装の良さを生かしすぎてて最高でした。というか、いちかさんのスカート丈だけ膝下なのも大正ロマン感あって、めちゃくちゃいい。
上手側で椅子の上に立ってダンスする時の、キャラ設定を生かした個々の動きというか振り付けも可愛いです。あと、このシーン2期メンバーの仲睦まじさが垣間見えるのもいいよね。勝手に栄養素を摂取していました。
はい、可愛い可愛い言ってる間にベッドショーのお時間です。ベッド着は、薄紫色のふりふり振袖風ドレス。「ゆめかわいい」という言葉は、笠木いちかさんのためにあるのではないか?と思うくらい似合ってます。
「こんなに可愛い女の子が……目の前で脱いでくれるんですか……?」もう完全に思考がキモオタになっていました。ちょっとドレス脱ぐの焦らしてくる仕草とか、悪戯な表情とか、透明感のある白い肌が見え隠れするのもヤバいんですけど。
「バイバイ」という歌詞に合わせて、左右の客席に向かって手を振る演出良かったな〜〜。いちかさんの投げキッスで救われる命があります。
6景 友坂麗 『鉄輪(かなわ)』
元は能の演目で、夫に捨てられた妻が、毎夜神社に通いつめ、夫と新しい妻に復讐するために鬼になってしまうという悲しいお話です。
鈴虫とフクロウの鳴き声と共に物語はスタート。ステージには6本の灯籠が立っていて、ゆらゆらと炎が揺れています。白い着物姿の友坂さんと、陰陽師の装いをした千里さんが登場。
バイオリンの音色に乗せて、鬼と化した女と陰陽師(安倍清明)の戦いが始まります。友坂さんと、千里さんというベテラン姐さんコンビ。安定感がすごいし、シンメトリーダンスが美しいのなんのって。
途中、女が陰陽師を誘惑するようなシーンもあったのですが、そんなことには動じません。なんやかんやで陰陽師の術にかかった女が、苦しみながらスモークの中に消えていくという結末を迎えます。というか、ここの照明の使い方どうなってんの!本当に!息を呑むような演出技術です。いや〜〜本当に奥が深いな、浅草ロック座。
場面転換。「うー……うー……」という女の呻き声みたいな音声が流れます。一瞬曲なのか本物の肉声なのか分かりませんでした。普通に怖い。そうこうしている間に、スモークの中から赤い布を羽織った友坂さんがふらふらした足取りで登場。
悶え苦しんでいる様子で、俯きがちだったこともあり、しばらくは表情が確認できなかったのですが、正面を向いた瞬間に般若のお面をつけているのが分かります。ふらついた足取りで花道を進みベッドショーへ。
ラップ調の激しい曲と赤いライトに照らされた美しい肉体。ほとんどステージに寝そべった状態でベッドショーを終えることとなったのですが、ここの友坂さんの表現力がすごくて。
お面をつけたり外したりすることで、人間の自分と鬼の自分で感情が揺れ動いてることが伝わるし、お面をつけた状態で泣く演技は、身震いがすごくて、本当に泣いているんじゃないかと思わされるほどでした。
愛と憎しみは表裏一体なんだなぁ、と改めて思わされたけれど、心から夫を愛していたからこそ、裏切られたことが許せないし悲しいんですよね。
鬼になってもいいと思えるほど、嫉妬心や復讐心に満ちていたけれど、頭の片隅では夫への未練が断ち切れない自分もいて。呪い殺したところで、夫の気持ちも尊い日々も帰ってはこないことは分かってはいて。でも、苦しい。辛い。助けてほしい。相反する感情にもがき苦しむ女の、心の叫びが、痛いくらいに伝わってくるステージでした。
7景 橋下まこ 『蝦夷』
大トリを務めるのは橋下まこさん。浅草ロック座のルールがよく分かっていないのですが、なんでも9年半ぶりに内部昇格という形で、まこさんが大トリを務めることが発表されたようで、スト客(ストリップ劇場に通う常連客)の間ではかなりの話題になったとのことです。
ラストの演目は「蝦夷(えみし)」。北陸・関東北部から東北地方にかけて住み、朝廷に服従していなかった人々のことを指します。東北地方を支配しようと何度も兵を送ってくる朝廷に対し、アテルイという人物が蝦夷のリーダーとして指揮をとり、勇敢に立ち向かったとされています。
幕が開くと、7人のダンサーたちが倒れていました。左右にある岩山に剣が刺さっていることから、壮絶な戦いが起こっていたことがわかります。下手から登場するなり、倒れている仲間一人一人に声をかけ優しく起こしたまこさんは、「アテルイ」の役回りなのでしょう。
全員でセンターに集合したあとは、列をなして前進。当然まこさんが先頭を切っているのですが、2景・5景のまこさんとは違って、とても凛々しい表情で勇ましく、「浅草の新しいリーダーは私だ!」と言わんばかりの力強さを感じます。
全員が一直線に並んでダンスをしている時は本当に壮観でした。「これから戦場に向かうんだ…」と思わされるような壮大な音楽と、息ぴったりのキレッキレなダンス。覚悟を決めたような表情には、どこか寂しさが残っていて。ミュージカルでも観に来たのかと錯覚するくらい、衣装も演出もパフォーマンスもすごくて、感動しました。
そして、ベッド着に着替えて登場するシーン、これが本ッッッ当に良かった。曲の雰囲気が一気に変わって、まこさんに注目が集まるの主人公感あっていいし、仲間たちの制止を振り払い、優しい眼差しで頷くその姿はまるで令和のジャンヌ・ダルク。美しく気高い孤高の女戦士の誕生です。
ベッド着は、赤いロングドレスにロングブーツ。毛皮のファーを腕や身体に巻き付けているのはもちろん、小物一つ一つのセンスが良すぎて、ロック座の衣装さんってすごいな……って思っていたけれど、ツイートを拝見する限りでは踊り子さんが小物も用意されているみたいです。マジか。
ベッドショーでは、手足が長くてモデルのような体型の素敵な肉体を十分すぎるくらい魅せつけてくれました。というか、こんなに綺麗な人の裸をこんなに近い距離で見ていいのでしょうか…?(n回目)
ベッド中のまこさんは、溢れんばかりの希望の中に、若干の苦悩やしんどさが垣間見えて、若くして大トリを任されたまこさん自身を表現されているかのようでした。ただ、ステージに立っているその姿は本当に美しく、凛々しく、最後まで力強さがあって、たくさんの勇気と感動を与えてくれたと思います。大トリ、本当におめでとうございます。
フィナーレ 『火の鳥』
まだ続くんか?と思った皆さん、すみません。もうちょっとお付き合いください。フィナーレは『火の鳥』。手塚治虫作品などでお馴染みの方もいるかと思いますが、時を超えて人間の生き様や歴史を見守ってきた不死鳥のことを指します。
開幕すると、まこさん以外の踊り子6人+バックダンサー4人が登場。衣装は、ひらひらと揺れる黄色のロングドレスに、赤色の羽がついたイヤーアクセサリーをつけています。
まるで、バレエのような指先までしなやかで舞うようなダンスを順番に披露した後は、千里さんを先頭に10人が縦一列に並び、千手観音のようなパフォーマンス。先頭であまり手の角度をつけられない千里さんが、小刻みに手を動かしているのヒヨコみたいで本当に可愛かったなあ。
その後は、着替えが終わったまこさんが合流してソロでのダンス。この時のまこさんが本当に本当に神々しくて、笑顔がとても素敵で、毎回泣きそうになっちゃうんですけど、女神という言葉でしか表現できないなと思います。
途中で、MC(ゆきなさん)によるメンバー紹介が行われ、花道で横一列に並んでダンスを披露してくれた後は、1歩ずつ惜しむように後退りしてメンバーが戻っていき、閉幕です。華やかで神秘的なとても良いステージでした。
7つの「まつろわぬもの」たちの物語を、不死鳥である『火の鳥』が見届けていた、という解釈でいいのか分からないけれど、時代もテーマもバラバラで世界観もかなり異なる作品たちを、綺麗にまとめ上げてくださりありがとうございます。
そして、不死鳥は“ 何度も甦る ”ことから、本公演のフィナーレとして、この演目を持ってきたのは、「廃れつつあるけれど、私たちはストリップ劇場をもっと盛り上げていくぞ!」というファンや観客に対する強いメッセージなのかなと感じました。
最後に
いかがだったでしょうか。ストリップショーの魅力、そして「まつろわぬもの」という公演がいかに素晴らしいかが少しでも伝わったでしょうか。
私も行く前は、下世話な好奇心ありきというか、「女性が徐々に脱いで裸になるだけの低俗で下品なショーなんじゃないの?」と思っていました。
ただ、実際に行ってみると、エロいというより美しいという感想が先に出てくるんです。柔らかくてすべすべの肌、見た目とは裏腹にしっかりしている体幹、演じている時の真剣な眼差し、アイドル並みに徹底されている表情管理、計算され尽くされた指や腕の角度、全身全霊で魅せてくるその姿勢、努力あってこそのプロポーションの良さ、本当に芸術としか言いようがない。いわば、“ 大人の芸術鑑賞会 ” なんですよ。
地下アイドルのライブとは比べ物にならないくらい距離感が近い上に、バッチリ照明が当たっているので、表情どころか身体に滴る汗や肌の質感、生傷の有無まで確認できるのすごいですよね。
中々自分以外の女性の裸を見ることがないので、人それぞれ身体や部位に個性があって面白いなと感じたし、何だか自分の裸まで肯定してもらえような感覚があって不思議でした。踊り子さんたちが、性的消費されている感を全く出さずに、自分の身体を美しく魅せるためだけに、全力でパフォーマンスしてくれる姿がとても綺麗で、そんな人たちの裸を見ても、大きいとか小さいとか色や形がどうだとか全く気にならないからだと思います。
ストリップの世界で生きている人がいて、その文化を今まで守ってきた人がいて、25年もの間知らなかった自分がいて。もちろん、過去本番行為が行われていた事実も、多くの女性が搾取され続けてきたという悲惨な歴史があることも決して忘れてはならないけれど、私はストリップショーの魅力を少しでも多くの人に伝えて、この素晴らしい文化を後世にも残していけたらいいなと思います。
拙い文章でしたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。まつろわぬもの2期、最高だったよ!!!!!同じメンバーでの公演がまた観られる日を楽しみにしています!!!!!!
↓初めてストリップショー行った時の感動や衝撃を疑似体験したい方はこの方の記事がオススメ
10月23日追記:参考にさせていだいた記事
今回、ストリップショーレポの記事を書こう!と思い立った時に、何をどう書いたらいいのか本当に分からず、色々な方のレポやSNSでの投稿を読み漁りました。その中で、特に参考にさせていただいた記事が、下記の2つになります。
どちらも、浅草ロック座「まつろわぬもの」公演のレポート記事になりますが、各景の細かい描写やテーマに対する解説が丁寧にされており、構成もふまえて大変参考にさせていただきました。
本記事では触れていない点もありますので、是非「他の人視点でのレポも観てみたい!」「より公演の詳細の内容を知りたい!」という方は、ご覧いただけますと幸いです。