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【玉葉集】13 子の日の松④
今日よりは君に引かるる姫小松
いく万代か春にあふべき
(春歌上・13・九条兼実)
今日からは
貴女はあの方の所に引かれてやってきた
小さな松であれ 我が姫よ
これから何万年の
春に出逢うことだろうか
「文治六年女御入内屏風に」と詞書。嫁ぐ娘に父が贈った歌です。嫁ぎ先は帝。政治家兼実は万々歳でも父兼実は心で泣いていたと信じたいなあ。
そんな花嫁の父・兼実は婚礼を寿ぐため娘を子の日の松に見立てました。
和歌文学大系『玉葉和歌集 上』で中川博夫が本歌としてあげている歌が面白いと思います。
千歳まで限れる松も今日よりは
君に引かれて万代や経む
(拾遺集・春・24・大中臣能宣)
1000歳までと
寿命を定めていた松も
今日からは
親王様に引かれて
10000年先までも生きながらえましょうか
詞書には「入道式部卿の親王の子日し侍りける所に」とあります。やんごとなき方の力で長寿の松が超長寿になると詠まれたんですね。
この歌を兼実歌は本歌とした。つまり拾遺集の能宣歌に保証された寿命を延ばす力を兼実歌の「君」にも付与したのです。
松を土台に皇族をヨイショしつつ娘を寿ぐ。
何とも器用な一首となったものです。内心に葛藤を抱えてる人の歌じゃないですね。やっぱり万々歳一色だったのかな。