見出し画像

【玉葉集】28 緑一色

 日曜の今日は薄曇り。時々雨もぱらついていました。
 この頃はかなり暖かくなりました。朝には山が煙ります。昼時には初夏の空気を感じる日もしばしばです。だけどたまに今日みたいに寒い日もあって、そういう日には体温の高い子ども達とくっつくのがとっても心地良い。
 今朝は家族みんなでのっかったりのっかられたりしながら、しばらく朝のうだうだを楽しみました。そのまま一日うだうだしすぎた長男は、今日の分の公文をすっぽかしたみたい。明日はいっしょに机に向かおうね。

題不知
花遅き外山の春の朝ぼらけ霞める外は又色もなし

玉葉和歌集・春歌上・28・覚助法親王

 どうやら春は来たようです。だけどそれはまず山にやってくる。山の奥深く、人の目には触れもしないところでひっそりと。そこで春に触れた木の枝は、誰も知らない花を咲かせます。

 人里近い外山ではそうはいきません。霞は立ちますが、花が咲くのはもう少し先のようです。
 花が咲かない眼前一帯は、春の霞の淡い緑に染まります。緑一色なのは花が咲いていないから。しかしその色は、桜の季節が確実に近づいてきたサインでもあるのです。
 杜牧の「江南春望」に咲く紅の花を、待ちわびるような風情ですね。

千里鶯啼緑映紅
水村山郭酒旗風
南朝四百八十寺
多少楼台煙雨中
千里鶯啼いて 緑、紅に映ず
水村 山郭 酒旗の風
南朝 四百八十寺
多少の楼台 煙雨の中

杜牧「江南春望」


 クリスマスの朝を指折り数える子どものように桜の開花を待ちわびる春の歌。期待に溢れた瞳に映る緑は、これもまた幸せの色でもあるのでしょう。

春が来ても花が咲くのはじれったくなるほど遅い
そんな人里近いこの山の春の
夜がほのぼの、明けるころ
霞が立ちこめる我が家の外は
霞の緑の外には何の色も見あたらない 

 

 

いいなと思ったら応援しよう!