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人形劇『カエルの勇者』脚本 #人形劇

はじめに

この作品は、小学校低学年向けに執筆させていただいた人形劇用の脚本です。
僕は、2019年より小学校で図書ボランティアとして月に一回、読み聞かせのボランティアをさせていただいているのですが、その図書ボラ仲間の有志の方々が「お話の会」と称して、小学校低学年やこども園の子供たちに向けて、人形劇やブラックパネルシアターなどを上演する活動をしています。
僕自身はその活動には参加していないのですが、そのボランティアにも参加している奥様から、先月、10分程度の人形劇用の脚本を書いてくれないか、と頼まれました。
カエルのパペットが二体あるので、それを活かせる作品を、というオーダーでした。

必要なのはカエル二体とカタツムリ、それからお星さま。ペーパーパペットでも構いません。
背景の書き割りなどが用意できなければナレーションなどで補足してください。
小学校低学年向けに書いておりますが、未就学児相手に上演する場合は、掛け合いを省略したり、「故郷」や「平等」などのワードを簡単な言葉に置き換えた方がいいかも知れません。
公開時点で、すでに提供した有志の方々が、こども園や小学校で計三回、上演してくれています。
気に入ってくれた方は、ご自由に上演していただいても構いませんが、出典は明確にしていただけると幸いです。

使用するパペットの例

「カエルの勇者」

作:たけうちこうた

《登場キャラクター》

◆ミカエル:主人公。働き者のカエル。夢は英雄になること。
◆マイケロ:ミカエルの友達のカエル。運動は得意じゃないけど頭がいい。いい学校に行きたい。
◆エル・カラコル:泉の魔女と呼ばれ恐れられている大魔法使い。実はカタツムリ。
◆星:ミカエルを導くお星さま。ミカエルは神様の声だと思っている。
◆ナレーション:語り部

《あらすじ》

蛙のミカエルは体力自慢の働き者。今日も元気に畑仕事。でも、いつかは英雄になって皆を救うのが夢。
友達のマイケロは身体が強くないので、そんなミカエルを尊敬している。一方、ミカエルも頭のよいマイケロを尊敬していた。
マイケロは優秀なので、都会の学校へ進学することになった。淋しいけど誇らしい気持ちで見送るミカエル。
ある年、日照りが続いて作物が実らなくなってしまった。マイケロなら雨を降らす方法を知ってるかもしれない、と思い都会を目指すミカエル。
もちろん、マイケロ(や彼の先生である学者たち)にも気候をコントロールすることなんてできるはずもない。
そこで何でもできると言う泉の魔女を捜しに行くが……。

◆1◆カエル村の親友

ナレーション「昔々、カエル村に陽気なミカエルというカエルが住んでいました」
ミカエル「よいしょ、よいしょ」
 ミカエル、畑を耕している。
ナレーション「ミカエルは働き者で頑張り屋さん。いつか英雄になる日を夢見て、今日も元気に畑を耕しています」
マイケロ「やあ、ミカエル。今日も精が出るね」
ミカエル「マイケロ」
ナレーション「マイケロはミカエルの親友。身体は強くないですが、お勉強が大好きです」
マイケロ「ミカエルは凄いね。こんなに広い畑を一人で耕しちゃうんだから」
ミカエル「僕は英雄になるのが夢だからね。これくらいどうってことないよ」
マイケロ「凄いなぁ」
ミカエル「キミだって凄いだろ。僕はマイケロほどお勉強が得意じゃない」
マイケロ「そのことでミカエルに話があるんだ」
ミカエル「なんだい?」
マイケロ「実は僕、都会の学校に行くことになってね」
ミカエル「良かったじゃないか。都会の学校に行くのはキミの夢だっただろ」
マイケロ「うん。でも、キミと会えなくなってしまうのは哀しくて……」
ミカエル「なに、また会えるよ。人生は長い。そうだろ?」
マイケロ「そうだね。じゃあ、行ってくるよ!」
ミカエル「行ってらっしゃい!」
 マイケロ、去っていく。
 ミカエル、手を振る。
ナレーション「旅立つマイケロに、ミカエルはいつまでもいつまでも手を振っていました」

◆2◆とある夜

 セミの鳴き声が響き渡る。
ミカエル「暑いな~。いくらなんでも今年は暑すぎる。夜だっていうのに全然涼しくならない」
 ミカエル、うろうろする。
ミカエル「こんな夜中でもセミが鳴いてるなんておかしいよ」
ナレーション「ある年、村は長い長い日照りで、作物がまったく実らくなってしまいました」
ミカエル「うーん、困ったな。ここまで雨が降らないと、僕たちカエルはどうにもならないぞ」
 ミカエル、うーんと悩む。
ミカエル「なんとかして雨を降らす方法はないものか……」
星「ミカエル、ミカエルや」
ナレーション「悩むミカエルを見かねて、お星さまが声をかけてくれました」
ミカエル「お星さま、聞いてください! 僕たちは今、すっごく困ってるんです」
星「知っています」
ミカエル「どうしたらいいでしょうか?」
星「困ったときは、お友達を頼るといいですよ」
ミカエル「友達……そうか! マイケロなら何かわかるかも知れない。僕、マイケロのところまで行ってきます!」
ナレーション「こうしてミカエルは、マイケロの住む都会に旅立つことにしました」

◆3◆ペンネン研究室

マイケロ「ここはこうでもない、ああでもない……」
ナレーション「都会の学校では、マイケロが研究に没頭していました」
マイケロ「ああ、やっぱり難しい問題だ……」
 ミカエル、登場する。
ミカエル「こんにちは!」
マイケロ「ミカエル? ミカエルじゃないか。久しぶりだなぁ。どうしたんだい?」
ミカエル「実はね、カエル村が日照りで大変なんだ。マイケロなら雨を降らす方法を知ってるんじゃないかと思って」
マイケロ「それでわざわざこの研究室まで来たの?」
ミカエル「村を救うために旅に出たんだ。伝説の勇者みたいだろ?」
マイケロ「キミは英雄になるのが夢だったもんね。でも、残念なことに僕は雨を降らせる方法なんて知らないんだ」
ミカエル「キミが教わっている先生でもかい?」
マイケロ「ペンネン先生は確かに天気の研究をしてるけど、さすがに雨を降らすことはできないよ」
ミカエル「そうなのか。せっかく都会まで来たのに……」
ナレーション「ミカエルはがっかりしました」
マイケロ「あ! あの人ならできるかも知れない」
ミカエル「誰?」
マイケロ「泉の魔女さ。魔女なら雨を降らせるおまじないくらい知ってるかもしれないだろ?」
ミカエル「ま、魔女~? 大丈夫かい?」
マイケロ「とりあえず行ってみようよ。何か面白い話が聞けるかも知れない」
ミカエル「話が面白いだけってのは勘弁してくれよ」
ナレーション「ミカエルは、マイケロの誘いに乗って、泉の魔女のところまで行くことにしました」

◆4◆旅路

 夜、星が輝いている。
ナレーション「それから、ミカエルとマイケロは何日も何日も、泉の魔女が住むという西の泉に向かって旅をしました」
ミカエル「進め、進め、どんどん進め♪」
マイケロ「ミカエル~、待ってよ~」
ミカエル「どうしたんだい?」
マイケロ「もうすっかり日が暮れてしまった、今日はこの辺りで休まないか? 僕はキミほど体が強くないんだ」
ミカエル「そっか。じゃあ、今日はここまでにしよう」
マイケロ「おやすみ、ミカエル。ぐ~ぐ~」
ミカエル「もう寝た。早っ……」
星「お友達との旅は順調ですか? ミカエル」
ミカエル「あ、お星さま! はい。魔女が住むという西の泉を目指して旅をしています」
星「そうですか。解決するといいですね」
ミカエル「ねえ、お星さま、あなたは神様なのですか?」
星「どうしてそう思うのです?」
ミカエル「だって、いつも僕たちを見守ってくれてるから」
星「私は神様なんかじゃないですよ。光ることしかできない、他には何にもできないただの星です」
ミカエル「でも、お星さまはいつでも僕たちを見守ってくれてます。ありがとうございます」
星「見守ることしかできませんが、頑張ってくださいね」
ミカエル「はい! ぐーぐー」
星「もう寝た。早っ……」

◆5◆魔女の住処

ナレーション「やがて、ミカエルたちは魔女が住むという西の泉に辿り着きました」
ミカエル「ここが噂の西の泉?」
マイケロ「聞いた話ではこの辺りに魔女が住んでるって話だけど……」
ミカエル「おーい、魔女―!!」
マイケロ「こ、こら、呼び捨てにして怒らせちゃったらどうするんだよ」
ミカエル「魔女様? 魔女ちゃん? 魔女くーーーん!」
カラコル「誰だ~?」
 魔女の声だけが響き渡る。
ミカエル「うわ! 魔女?」
カラコル「カラコルカラコルエルカラコル、私が泉の大魔法使い、エル・カラコル様だ~」
マイケロ「声だけ?」
ミカエル「姿を見せろ~! 魔女~!」
マイケロ「故郷の村が日照りで困ってるんです。どうか魔女様のお力で雨を、雨を降らせてください、魔女様!」
カラコル「魔女と呼ぶでない! 私は大魔法使いエル・カラコル様だ。カラコルカラコルエルカラコル!」
マイケロ「すみません、カラコル様」
ミカエル「姿だけでも見せてください!」
カラコル「やれやれ、せっかくいい気分で寝ていたのに。しょうがない、見てびっくりするなよ?」
 カラコル、姿をあらわす。
マイケロ「わ!」
ミカエル「カタツムリじゃないか」
カラコル「レディーを見た目で判断するんじゃないよ。私は大魔法使い。どんな願いも叶えてやるよ。言ってみな」
ミカエル「マイケロが今言ったじゃないか。故郷の日照りを何とかして欲しいんだ」
カラコル「いいだろう。ただし、条件がある。お前の夢を言ってみな」
ミカエル「夢? 僕の夢は英雄になることだけど」
カラコル「その夢をもらうぞ。私は人の夢を食べることで無限の力を得るのだ」
ミカエル「食べられちゃうとどうなっちゃうの?」
カラコル「どうもならないさ。ただ、お前がその夢を思い出すことは二度とない」
ミカエル「わかりました。村のためなら」
マイケロ「そんなの駄目だよ! ミカエルから夢を奪わないで!」
カラコル「ならお前の夢を食べさせてくれるのか?」
マイケロ「そ、それは……」
ミカエル「駄目だよ、マイケロの夢は立派な学者になることじゃないか。僕は英雄にならなくても生きていける。食べるなら僕の夢を」
マイケロ「でも、それではキミがキミでなくなってしまう」
カラコル「あー、早くしてくれんかね? 私はどっちでもいいんだ」
ミカエル「すみません、もう少し考えさせて下さい」
カラコル「時に、キミたちの故郷はどこかね?」
ミカエル「え? カエル村だけど」
マイケロ「水が綺麗で素敵な村です」
カラコル「カエル村か」
マイケロ「どうかしたんですか?」
カラコル「いや、君たちも知っての通り、世界には水が豊富な場所とそうでない場所がある」
ミカエル「はあ」
カラコル「それでは不平等だと思ってな、水の豊富な場所からそうでない場所へ雨をおすそ分けすることにしたんだ。平等になるようにな」
ミカエル「それで水の豊富なカエル村が日照りになったのか」
マイケロ「それはいけません。雨の少ない場所には雨の少ない場所が住みやすい動物や植物がいます。彼らのすみかがなくなってしまう!」
カラコル「やはりそうか。どうやら私はしてはいけないことをしてしまったようだ。よし、今回はお詫びのしるしに無料でこのエル・カラコル様の魔法を見せてやろう。特別だぞ?」
 カラコル、どこからか魔法の杖を取り出す。
カラコル「カラコルカラコルエルカラコル、世界中の雨よ、元の位置にもどれ! カエル村にも適度な雨を降らせたまえ~!!」
ナレーション「ピカピカピカ! 世界は大きな光に包まれました。そして……」
ミカエル「あれ? 雨だ。雨が降ってきた」
カラコル「この辺りの雨も、砂漠におすそわけしていたからね。お前たちの村にも今頃、雨が降っていることだろう」
二人「ありがとうございます!」
カラコル「やはり雨はよいな。カエルにとってもカタツムリにとっても」
ミカエル「はい!」
カラコル「では私はふたたび眠るとするよ。カラコルカラコルエルカラコル、さらばだ~!」
 カラコル、行ってしまう。
ミカエル「行っちゃった……」
マイケロ「僕たちも帰ろうか」
ミカエル「そうだね」
マイケロ「よ~し、帰ったらたくさん勉強して、魔法に頼らなくてすむ立派な学者になるぞ」
ミカエル「マイケロならなれるよ。それに比べて僕はいつになったら英雄になれるのか」
マイケロ「ミカエルはもう英雄だろ? 村を救ったんだから」
ミカエル「そうかな?」
マイケロ「そうだよ」
ミカエル「でも、もっともっとすごい英雄になりたいんだ。勇者ミカエルって皆が言ってくれるような英雄にね」
マイケロ「ミカエルなら絶対なれるよ。だって、キミは頑張り屋さんだから」
ミカエル「じゃあ、夢が叶うよう二人で頑張ろう!」
二人「おー!」
ナレーション「こうして、ミカエルとマイケロは帰っていきました。二人の夢がかなうよう、お星さまはいつまでもいつまでも二人を見守っていました」

《おしまい》

個人的なイメージスケッチ


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