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帰郷
おれは何年か振りに故郷の駅に降り立った
駅前のロータリーを歩き出すと
見覚えのある小型車がゆっくりと近づいて来るのが見える
運転しているのは恵子
上京を口実に別れた女
そしておれを呼び出したひと
目が合った、と同時に彼女の車は急に速度を増した
おれは撥ね飛ばされ、ロータリー中央のモニュメントが目の前に迫った
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目が合った、と同時に窓から突き出てきた円筒状の何かの先が光り
おれはその場にへたり込み、染みが拡がりつつあるアスファルトを眺めた
恵子はため息をつくと書き上げた原稿を、高く積まれた原稿用紙の山の上に置いた
彼女の小説のタイトルはすべて『帰郷』だった