僕等の時代 -神山まるごと高専視察R5.5-
私立高専新設
2023年4月に開校した徳島県・神山町の神山まるごと高専。
日本で19年ぶりの新設高専ということもあり準備段階から注目を集めていた。私立の高等専門学校として現存するのはこれで4校となるそうだ。
私もときどきの報道を見聞きしていたので、準備中であることは知っていたし、開校となってSNSの情報を気にかけるようになっていた。
私が徳島県・徳島市に住んでいるから関心があるとも言えたが、正直なところ、県内のことであっても、神山町やその他の基礎自治体がやっていることは、遠い土地の出来事と同じ程度の認識だ。高専に直接関係できるわけでも無いので、関心はあっても深く調べることはしていなかった。
今年に入って連日、AI関係のトピックスに振り回されていて、機械学習や深層学習の基礎知識をアップデートするのに四苦八苦していたこともあり、神山まるごと高専の開校を真正面からは追いかけられてはいなかった。
視察ツアー募集
2023年5月1日に神山まるごと高専がお知らせを出した。
全学生・教員にChatGPTの有償ライセンスを付与
https://kamiyama.ac.jp/news/20230501-01/
「おお、さすが新しい高専は違うな」
そんな感想を抱いていたと思う。
私自身も大学の授業でChatGPTを導入して、毎時間「訊いて応えて」なる名前の課題を出し始めて、学生達に登録を促していたので、有償ライセンスを全員に付与することに羨ましさを感じたりもした。
公式Twitter等を見返していると、同日、もう一つのお知らせが公開されていた。
外部向け視察ツアーを順次開始
https://kamiyama.ac.jp/news/20230501-02/
関わる機会は無いと考えていたところに、視察ツアーという機会が投げ込まれてきた。日程は5月と6月。
6月は先約があるので行くなら5月。さて、行くべきか、行かざるべきか。懐具合とも相談だ。そもそも神山にはどう行く?あれこれ考えていたが、実行しない後悔より実行する後悔を選びがちな私のセオリー通り、申し込むことにした。
レンタカーを借りようかと思っていたが、後日、バスでもいけることがわかったので、当日は徳島駅から出発することになった。
視察当日〜神山へ出発
神山まるごと高専の最寄りバス停「西上角」までの道のりは約1時間。途中、いくつもの病院を経由しながら、バスは神山方向へと走る。
そして「西上角」バス停に到着したバスから降りずに乗り続ける。
周辺散歩
土曜日のバスは本数が少ないため、12時からの受付けに対して間に合うバスは10時40分頃に到着してしまう。次のバスは12時40分頃になる。
高専を視察するだけでは意味がない。神山まるごと視察するくらいはしたいが、それだと時間が足りない。まぁ、周辺を散歩するくらいはしてみたい。
動画が反転していたことにも気が回らずにTwitterにあげた。
というか、当日は私以外にSNSで発信している人間がいなかった。公式も1期生アカウントも視察ありましたっけ?といった雰囲気である。
しかし、バスには参加者らしき人たちが乗車していて「西上角」で降りていったし、ツイートには「いいね」がぽちぽち付いている。視察はあるはず。
景色をボーッと眺めながら、無邪気な初老、なんとなく人生を考える。
「♪ もうそれ以上 そこに 立ち止まらないで
僕等の時代が 少しずつ いまも動いている」
亀が動いた。
さて、通学路を辿って神山まるごと高専へ向かおう。
神山まるごと高専到着、そして給食
現在の神山まるごと高専は、2つの建物「HOME」と「OFFICE」から構成されていて、私たちが受付と給食をいただいたのはHOME(外観が学校校舎)であった。
給食は地産地食のメニューで構成され、この日も美味しいランチをいただいた。
視察開始前のできごと
視察ツアーの参加者は定員が30名で、ほぼ埋まっていたのだと思う。
参加者の中には、かつてフューチャースクール推進事業でお世話になった小学校の先生や、親子プログラミング教室を阿波銀行営業本店でやっていたときに取材に来てくれた徳島新聞社の記者さん、東京でご挨拶したことのある教育シンクタンクの編集長さんもいた。
編集長さんとは久し振りの再会だったので、ランチをご一緒しながら、近況報告などを交わした。その後、お顔の広い編集長さんに高専の事務局長さんをご紹介いただきご挨拶。そこで自炊していた学生の皆さんから、土日は給食がないのでフードファンディングを絶賛募集中といったことなど聞かせてもらった。
その後、視察のレクチャーが始まるまで、私たち二人は神山まるごと高専のパンフレットを見ながらあれこれとお喋りを続けていた。
すると、さきほどの事務局長さんが一人の学生さんとともに寄ってきて彼女を紹介してくれた。どうやら視察ツアーの参加者と話がしたいという。
私たちは少し驚きながらも「どうぞ、どうぞ」とお招きした。
彼女は私たちと同じテーブルの席にちょこんと座り、自己紹介を始めた。
編集長さんが、彼女の入学経緯から尋ね始めた。
彼女はこの学校の価値観に惚れ込んだこと、自分が行くならここしかないと考えたこと、授業も普通じゃなくて面白いことを熱く語ってくれた。
私は彼女に「何かやりたいことはあるの?」と尋ねた。
その答えとともに彼女が自分のことを語るのを聞いて、少しばかり(性格が)私と似ているなと感じたりもした。私の勝手な共感だったのかもしれないけれど、人と違うポジションに紛れ込んだことを楽しめるようになると「いいね」と思う。
君の時代は少しずつ今も動いているのだから。
視察ツアーレクチャー
読んでいるあなたはそろそろ「なんじゃこれは、視察に関する記事じゃないのか?!」とお怒りかも知れない。
やっと視察ツアー始まりだ。
といっても、視察ツアーは今回が初めて。しかも開校から2ヶ月ばかり経ったところで、濃い2ヶ月だったのだとは思うけれど、視察ツアーに用意された情報自体はWebサイトや各種メディアで発信されたことのあるものが多い。
もちろん学校認可までの準備段階の苦労話や裏話をいろいろお聞きすることも出来たわけだが、それを私が書いちゃうと視察する楽しみが無くなるというものですから、ひみちゅ。
視察ツアーの内容自体も今後どんどん拡充されるはずなので、今回は2023年5月時点の内容をもとに書いているとご理解いただきたい。視察ツアーだって「βメンタリティ」の対象なのだ。
施設見学へ
レクチャーを終えると、施設見学と教育内容の紹介があり、最後に学生さん達と懇談をする機会が設けられていた。13時から16時過ぎまで。時間的には慌てすぎず視察できたと思う。
やはり施設を実際に見ることには意義がある。
まだ1期生しかおらず、学校として完成形とは言えない状態ではあるが、どんな環境で生活や勉学やプロジェクトに取り組むのかを体感できる。
学生さん達が利用できる環境としては羨ましすぎて、自分の職場にも学生のためのこういう環境があちこちに存在していたらなぁ…と。
そして、教育内容に関するプレゼンが始まる。
大枠のお話
教育内容に関しても、おおよその内容はWebサイトに掲げられている内容が中心。人物像やカリキュラム、学生の一日など。
目指す人物像
https://kamiyama.ac.jp/guidance/personality/
もちろん、この2ヶ月間の様子もスライドで写真を拝見できた。
ITブートキャンプや起業家講師を招いたウェンズデイナイトなど、一般科目の勉強以外にも様々なプログラムに取り組んでいるようだ。サークル活動も現在4つあり、今月中にもう一つ増えるとか。
また、スカラーシップパートナー(SP)制度は5年間を通してパートナー企業とともに歩んでコラボレーションしていく大事な活動である。
在学生たちとの懇談
最後は在学生の皆さんとの懇談時間を設けていただいた。
小グループに分かれて、学生さん一人とツアー参加者数人で15分くらいだったか。それを2回。二人の学生さんとお話しできたということになる。
(もちろんそれ以外にも話すチャンスはいろいろあった。)
私たちのグループは、学生さんと神山まるごと高専の出会いをお聴きして、それからご本人のエピソードを中心にお話を伺った。
視察全体を通してわかったこと:
44人で揃って授業を受けている。
普通に時間割はある。(今回のツアーでは公開されなかった)
一般科目の勉強と専門科目の勉強はいまのところリンクは薄い。
評価に関しても模索中。
団体活動に対して学生一人ずつファンドがある。
SP(パートナー)とのやりとりも始まっている。
教職員、学生との連絡手段はSlackである。
大塚美術館まで自転車で出かけた強者がいる。
市街地にはタクシーを利用する。町民優遇と割り勘でお安い。
外泊申請は二日前までに。
土日は食事がないので近隣の人々がいろいろ差し入れてくれる。
5,6年生用の寮は今後建設。一期生が計画参加中。
まだいろんなことがこれから創られていくこと。
視察もお開き
というわけで、腰据えて書く余裕がないことがバレバレな状態の記事ではあったが、一通り視察の出来事をメモしてみた。もっと骨太でしっかりしたものを期待していた皆様には申し訳ない。
視察の感想は「参加してよかった」である。
繰り返しになるが、現地で実際の学校を見ることには意味がある。仮に知っていることばかりだったとしても、そこで活動されている方々と接して言葉を交わすことで理解は深まる。私自身は事前学習をあまりしていなかったので、いろいろと新鮮に聞くことが出来た。
おそらく、来月以降、視察内容は充実していくだろうし、何よりもう一ヶ月分いろいろ経験した学生さん達の様子や話を聞けるはず。
まだこの高専は始まったばかりだし、学校内には一期生しかいない。4年後の完成年度に200名が揃った神山まるごと高専がどんな雰囲気になっているのかはわからないけれど、そこからが本番のスタートだろう。
一期生たちを遠くに見ながら、彼女彼らが中学卒業年齢であることを思い出す。15歳あたりというのは、まだまだいろんな経験と変化を繰り返す頃だ。それが許されていい頃だ。それを汲み取り、本人の変化を周りの変化につなげていくことは大人の役割だろうし、この高専の立ち位置なんだろうと思う。
さて、次回以降に視察予定の皆様。ぜひツイートや様子の報告をお願いしたい。
視察ツアー、関係者の皆様に大変お世話になりました。感謝感謝。
君等の時代ということで…
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