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元クルーズ客船乗組員が思う、船上生活ならではの距離感。

「夫とは成田空港で出会い、そのまま一緒にイスタンブールへ行きました。」
これだけ聞くと、だいぶ破茶滅茶な感じですね…。

私は以前、クルーズ船の乗組員として働いていました。少し特殊な勤務形態で、3〜4ヶ月間の船上勤務の後、1〜2ヶ月間の休暇をもらうというサイクルが基本。楽しい楽しい休暇が終わりに近づく頃、こんなものが手元に届きます。

ー乗船通知ー
20○○年○月×日○時 イスタンブール港
つきましては、 
○月×日○時、成田空港にご集合ください。
△航空□便利用予定。
同時乗船者は、Aさん、Bさん、Cさん・・・です。

次の乗船が確定したお知らせ。休暇の終わりと乗船へのカウントダウンが本格的に始まる、憂鬱な瞬間です…。

前置きがだいぶ長くなってしまいましたが、このイスタンブール乗船時に成田空港で出会ったのが夫です。「成田空港で出会って、そのまま一緒にイスタンブールへ」という冒頭の下りは、実際の出来事。私は当時入社3年目でしたが、夫にとっては初めての乗船でした。新メンバーとして初対面の人たちと成田空港で待ち合わせた上、機内では隣の席でイスタンブールまで…っていろいろとキツかっただろうなぁと想像します…。

この出会いから2年で彼との結婚に至ったのですが、乗組員ならではの暮らしが、距離を縮めるのに一役買ってくれた気がしてなりません。今回は、そんなちょっぴり独特な生活を振り返ってみようと思います。他の職種を覗いてみる感覚でお楽しみいただけると嬉しいです。

  1. 仕事終わりの飲み会は、部屋着&すっぴんが定番。
    1日の仕事疲れを発散する飲み会は、乗組員にとっても大事な時間。
    ただ、陸上と違って、街の飲み屋さんに繰り出して、ということが出来ないので、船内の乗組員専用のバーやラウンジ的な場所で飲むのがお決まりです。制服から部屋着に着替え、女子はメイクも落としてすっぴんで参加するのもごくごく当たり前。男性社員の前ですっぴんを晒すなんて、普通は考えにくいですが、これは働く場所と住む場所が同じゆえなのでしょうか。男性陣がどのように感じていたかは不明ですが…。

  2. 休憩時間は、男女問わず一緒にお出かけ。
    入港中に休憩時間がもらえる場合、現地で観光や食事、買い物をするのが乗組員の楽しみの1つ。基本的にはシフト制の勤務で、休憩時間が誰と一緒になるかは直前まで分かりません。でも、相手が誰であれ、休憩時間が一緒のメンバー同士は一緒に出掛けるのが自然な流れでした(もちろん無理強いはしませんが)。そんな時は仕事のことだけではなく、プライベートの話もたくさんします。特に海外だと開放的になり、話がはずんだ記憶が。ちなみに、夫と初めて一緒に外出したのは、地中海に浮かぶマルタ島のバレッタという街でした。普通に2人きりでしたが、彼がユーロを持っていないことに衝撃を受けた記憶しかありません…笑(クレジットカードが使えない場合に備えて、米ドルとユーロはある程度現金で持っておくのが、乗組員の間の常識だったので)。

  3. 家族よりも長い時間を一緒に過ごす。
    仕事を終えて「お疲れ様でした!」とオフィスを後にしても、自室近くでばったり会う、なんてことは日常茶飯事でした。3〜4カ月の乗船期間中は、仕事中はもちろん、プライベートの大半も同僚と過ごす毎日。この間休日は1日もないので、乗船の後半になるとどうしても疲れが出てきます。調子が下降気味の時も一緒に過ごすので、お互いの素が見えやすい環境ですよね。

こうした合宿的な生活のおかげで、短期間で人柄を知ることができ、距離が縮まるのも早かった気がします。私は仕事を辞めてからだいぶ経ちましたが、夫だけではなく、当時のメンバーと今でも良好な関係を続けていられるのは、この暮らしがあったからこそと言えるのかもしれません。

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