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Linkin Park 3rd "Minutes to Midnight" 2007年…いつの間にかCD1000枚近く集まってしまったのでお気に入りのレビュー残しておく
過去2作で培ってきたラップメタル最終形態ニューメタル完成形という看板やら実績やらをあっさり捨てて有機的なオルタナティブロックバンドへ一気に転身、今までの重厚で完璧主義で徹底的に洗練されたサウンドメイキングを行ってきたリンキンとは全く正反対なバラエティ溢れる曲を並べており、破壊的でバンド感剥き出しのロックサウンドから歌心満載な沁みる本格バラードからチルが効いたヒップホップまでどこか人間的な曲群でバンドの引き出しを全部開けてみたらラップメタルもただの1つの引き出しだっただけのようで時流と我流のバランス
歌詞や表現テーマにも変化が起きており、今までの人間関係の苦悩や人生の悲哀といったパーソナルなテーマから災害・環境破壊・貧困・戦争・弾圧といった世界の負の情勢をテーマにしたものが増えており、これはこの頃に基金団体"Music For Relief" を設立し世界の大規模災害における被災者支援活動を開始したこととリンクする
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ストリート男子感も無くなり、バンドロゴも変化
1.Wake ★
最後の曲と同じメロディラインかな?やや陽性のメロディによるごく短いイントロ
2.Given Up ★★★★
今までのきっちりかっちり優等生だったリンキンが反抗期迎えたかのような直球ハードロックサウンドとチェスターの怒り満載なシャウトがインパクト大で、彼らはライブハウスやガレージでビッグなロックサウンドも鳴らすことができるバンドということを強引に表現
マイクのラップパートは無くギタリストに徹しており、ジョーのDJプレイも何だか聞こえないが、この曲調ではわざわざ入れる必要性が無いことは彼ら自身が分かっている
3.Leave Out All the Rest ★★★★★
丁寧に折り重なったサウンドと哀愁メロディによる重厚なバラードで、チェスターの歌が沁みることこの上なく、ここでも当然のごとくマイクのラップは登場しない
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映画「アルマゲドン」並のSFドラマ仕立て
4.Bleed It Out ★★★★★
性急で破れかぶれなマイクのラップと噛みつくような荒々しいチェスターの歌唱、ヒステリックなブラッドのギターにフェニックスの直線的なベースにロブの力任せなドラムと、1曲目と同じく完璧主義で徹底的に洗練されたサウンドメイキングを行ってきた過去2作のリンキンとは全く正反対な無濾過原酒ロックサウンド
「血を流せ」というタイトルや歌詞は、激しいライブシーンの様子と戦争による犠牲を表すダブルミーニングと読み取れる
5.Shadow of the Day ★★★★★
壮大で都会的な完成度の高い完全歌ものバラードで、ここでも伸び伸びとチェスターが歌う様が今までラップメタル無理矢理やっていたんちゃうか思わせるくらい素晴らしい
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混乱する街をチェスターが苦悩の表情で歌いながら歩くものだ
6.What I’ve Done ★★★★
映画「トランスフォーマー」の主題歌、グラミー賞ノミネートされたことでも有名な哀愁泣きメロックで、バンドサウンドはシンプルに徹している中でチェスターのボーカルは熱を帯びてどこまでも伸びていく、ロックバンドたるLinkin Parkがよく表現された曲
MVは環境破壊や飢餓、戦争やテロなどの映像が多数流れ、歌詞も自分(人類)がやらかした過ちに対する後悔や決別を宣言しているように見える
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2024年のバンド再始動には不参加
("What I’ve Done" MVより)
7.Hands Held High ★★★
マイクの語りかけるようなラップが心地よい牧歌系穏やかヒップホップで、アーメンアーメン連呼する歌詞なんて過去の自虐的で絶望的な世界からは考えられないチルでピースフルな曲調
8.No More Sorrow ★★
このアルバムで唯一前作までのメタルな香りが残る曲でゴリゴリ轟くベースとギターに重厚なドラムによるヘヴィチューン
9.Valentine’s Day ★★★★★
リンキン史上屈指の名バラード、開始2秒で涙腺崩壊、もの悲しいギターの音色とチェスターの枯れた声色により奏でられる切ないメロディが堪らなく沁みて、寂しく儚い前半から感情が溢れてしまうような後半へのドラマティックな展開もまた素晴らしい
10.In Between ★★★
これもピースフルなヒップホップ路線の曲でラップメタルで攻めていた頃とは正反対のチルサウンド、暖炉の火でも眺めながら聴くべし
歌はマイクによる独唱で、チェスターと比べるのはさすがに野暮だが、その素朴な歌声はこういうチルで穏やかな曲には似合っていると思う
11.In Pieces ★★★★
前作の"Breaking the Habit" というエレクトロ仕様の曲に近い雰囲気の、閉塞感と疾走感が共存する機械的サウンドとダークながら心地よいメロディが特徴の曲で、実はこのサウンドが次作のヒントになっていると思っている
なお珍しくブラッドのギターソロが途中で聴ける
12.The Little Things Give You Away ★★★
サウンドはマシーナリーなリズムサウンドとアコースティックギターで構成、メロディは1曲目とリンクするアトモスフェリックな曲