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Black Sabbath 1st "Black Sabbath" 1970年…いつの間にかCD1000枚近く集まってしまったのでお気に入りのレビュー残しておく

イギリス・バーミンガム出身のバンドBlack Sabbath、1970年2月13日の金曜日発売のデビュー作
たった2日間で制作した逸話を持つ

沼のほとりに立つ魔女のイラストに逆さ十字架の写真に13日の金曜日発売と、ロックが不良の音楽だった時代にその不良さえもドン引きさせるようなオカルト要素を売りにしてデビュー、ホラー映画の映画館に人々が列をなしているのを見て音楽で人を怖がらせたらウケるんちゃうんかと割と浅い考えでのバンド結成だがサウンドは本格的に禍々しく、Beatlesによりバンド音楽が急激にポピュラー化していた時流からはとても考えられない程に反抗的で陰鬱で重たく遅い黒魔術で、後に「リフマスター」と評されるトニー・アイオミによる地面をひたすら這いつくばる重厚リフレインギターを軸に、痙攣しているような激しいギーザー・バトラーのベース、火炙りの中で錯乱したかのような性急で手数の多いビル・ワードのドラム、そして「マッドマン」「プリンス・オブ・ダークネス」ことオジー・オズボーンの、重金属溶かして飲んどるのか思えるヌメヌメでキシキシした完全オリジナルな歌声と、悪魔超人達によるブルースやジャズを地獄のBGMと位置付けた暗黒物語がここに誕生

このデビューアルバム時点ではまだまだ彼らのルーツであるブルース/ジャズの色が濃くその後の暗黒オリジナルなサバスの世界にはまだ至っていないものの、逆にここまでブルース/ジャズのダークサイドのみをピックアップしたようなどろっとしたサウンドはやはり不気味な雰囲気に満ちており、特に1曲目にしてバンド名を冠するタイトル曲が余りにもインパクト強烈で、不吉、邪悪、陰湿、鬱蒼、奇怪、不穏、不安、病的、呪詛、荒廃、重圧、悪魔、地獄といったこの世の最底辺かつあの世の全てが集まったかのごとく凄まじい瘴気を放っている


いやーおどろおどろしい
当時のジャケデザイン界で売れっ子だった
Keefによるジャケット
インナーは逆さ十字架の写真がどーんと掲載

1. Black Sabbath ★★★★★
雨と雷と鐘の音から始まるこの伝説の一撃の曲、黒い安息日というバンド名を冠するこの曲が産まれて50年経った今でも、音楽リスナーにとって「重い」かどうかが好みの分かれる要素の一つとして人類の耳に植え付けられているなんて誰が想像しただろうか
たった3つの音符を淡々と震わすことでこの世の全ての恐怖を表現し尽くしたトニーとギーザーのヘヴィリフ、人間のリズム認知能力の限界を試されているかのようなビルの超絶スローテンポなドラム、そしてオジーの極めて不穏で不気味で不安定なメロディと歌声で、最初聴いた時は一体何を聴かされているのかわけわからず気持ち悪くなること請け合いで、この世にならざる存在が忍び寄りせせら笑う歌詞とも相まってサバスという呪いの音楽が凝縮し表現されており、こんなエクストリームな音楽を半世紀も前に発明していたことに驚愕よ

2. The Wizard ★★★★★
長いサバスの歴史の中でもオジーのブルースハープ(ハーモニカ)が聴ける唯一の曲で、このハーモニカも何か不気味で悪魔召喚の儀式めいた感じ
また隙間とタメを多めに取ったギターリフの間隙を突くようにビルのドラムの手数がまあ凄いことになっていて、カオスに陥るギリギリ手前でリズムを構築するテクニカルなドラミングが悪魔に取り憑かれた感じで凄味強め

当時の写真
左からトニー、ビル、オジー、ギーザー
バーミンガムという工業都市出身で、
今や全員バーミンガムの名誉市民だ
オジーなんて「俺刑務所にいたのに」だってw

3.Behind The Wall Of Sleep ★★★★★
前曲から一転してシンプルで小気味良いリズムを叩くビルのドラムと相反して、妖気漂う祭祀のような明るいのか暗いのか分からんノリのギターリフと暴れるようなギーザーのベースと機械とも思えるオジーの個性的な声色によって終始引き摺られる曲で、これでボーカルがラップだったら思いっきりRage Against The Machineになるようなフリーキーでグルーヴの効いたリフが秀逸

4.N.I.B. ★★★★★
ギーザーの鼻詰まりと痰詰まり両方いっぺんに患ったようなワウペダルサウンドによるベースソロから始まる元祖グルーヴメタルで、横ノリのリズムとリフとちょい泣きギターソロが特徴のヘヴィグルーヴチューン
そして初期サバスでの1つの特徴である、ギター・ベース・ボーカルが同じ音階をユニゾンする方法も既に見られる
なおタイトルは「ペン先」の意味で、当時のビルがたくわえていたヒゲがペン先のように尖っていたからだそう

5 Evil Woman ★★★
こちらは"Crow"というブルースロックバンドのカバー曲ということもあり他の曲に比べてシンプルな展開で実はサバスのデビューシングルなんだがひっそり過ぎで印象薄い
ただそんな中でも無感情とも思える程不気味で淡々と同じフレーズを繰り返すリフ演奏方式でサバスの曲に転化しており、更にやたらと自由にドライヴするギーザーのベースが目立つ目立つ

6.Sleeping Village ★★★
前半は陰鬱なフォーク風で、後半は実にサバスらしいヘヴィでスローなギターリフとギターソロによるインスト

バンドのブレイン、トニー・アイオミ
常時首から十字架をぶら下げています
まさにいぶし銀という言葉が似合う男で
ステージングも演奏自体も決して目立とうとせず
リフ(リフレイン)という、同じフレーズを
淡々と刻み続けるプレイスタイルで
後に「リフマスター」と評されることに
その背景は…
トニーは何と義指のギタリストなのだ
17歳の頃に働いていた溶接工場での事故で
中指と薬指の第一関節から先を失ってしまったが
自作のプラスチック製の義指を付けて
ギターを続けるという苦労人
弦を限りなく緩めたりバンジョー用の細い弦を使ったり、
単音やパワーコードという2つの音だけのコードを駆使したり
指への負担をできるだけ減らそうと工夫した結果、
Black Sabbathの深い重みのある音楽が生まれて
プロとして大成功を収め、その功績が称えられ
コベントリー大学から名誉博士号を授与する程に
諦めないことがいかに重要か


7.The Warning ★★★★
こちらもサバスのオリジナル曲ではなく"The Aynsley Dunbar Retaliation"というミュージシャンの曲のカバーだが、このドゥーミーでストーナー過ぎるブルースの酩酊感は完全サバスワールド
途中アイオミの複数パターンのギターソロパートを挟んでまたブルースパートに戻る10分近い長編曲

8.Wicked World ★★★★
ジャジーなパートやダークフォークなパートも入れたりと中々凝った展開ながらアイオミ師匠得意の単音リフによるヘヴィグルーヴに戻ってくるあたりはサバス以外の何者でもない

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