戦争は始めるより終わらせる方が難しい~一読をおススメします


「合理的には戦争は両陣営の交渉空間が重なったところで終わりを迎えるはずである。つまり、少なくとも交戦国のどちらか一方が、戦争から得られる利益を戦争による損失が上回ってしまったと判断する状況である。」


「しかし実際には、戦争終結に関する計算には高い不確実性が付きまとう。多くの場合、交戦国は自国の戦いぶりを知る判断材料となる客観かつ明白な情報を有しておらず、もし情報が手元にあったとしても、今後は戦況が好転するだろうという楽観的な意識が常にある。」


「仮に指導者が自国軍の軍事的状況が悪化していることを認めることがあっても、和平の実現には交戦国双方で信頼できる政治的合意の形成が可能であるという確信を持つ必要がある。しかし対立が価値観に基づいた複雑なものである場合、妥当な和平合意を描くことは難しく、その実現には困難が伴う。」


「加えて指導者が自国、自らが属する集団、あるいは自身が支払うことになる広範囲に渡る敗戦のコストを恐れ、戦争を継続する可能性もある。指導者が和平の実現を望んでも、その支持基盤も同じ結果を望むとは限らない。」


「戦争の終結は長く混乱したプロセスである。事実、戦争終結に伴う問題は特別なものでも過去のものでもなく、必ずしも誤った戦略や戦略的思考の欠如により発生するというわけでもない。要するにこうした問題には、どのような容易な解決策もほとんど当てはまらない普遍的で構造的な難しさがあるのだ。」


戦争終結に関する理論的視座
クリストファー・タック

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