The Orchardと独占ディストリビューション契約した理由。
皆さんこんにちは。作曲家で音楽プロデューサーの齊藤耕太郎です。
前回の記事で書いた通り、私事ですが無事に入籍し、家族が増え、気合を入れて4月が始まりました。結婚したからといって僕自身の音楽活動が大きく変わることはありませんが、家族の存在は間違いなく僕にとって前向きなもの。今は次回のリリース作品、アルバムプロモーション、さまざまなクライアント向けの楽曲制作に明け暮れる日々です。
新譜リリース!
さて、そんな僕の2021年最初のシングル、
「Oval (Piano Solo ver.)」がリリースされました!
Apple Musicはこちら。
今作は僕にとって、パートナーへのプロポーズとして作った曲。僕らが入籍した日に、僕らの日常を切り取ったウェディングムービーを公開しました。
今回の楽曲、国内のプレイリストだけでなく、海外のプレイリスターからも非常に評判が良く嬉しい限り。
国内では2021年4月14日現在、Spotify「静寂と黄昏」の1曲目にピックアップされています。Spotifyにはユーザーの試聴傾向に合わせて曲順が変わる「Personalized」タイプと、キュレーターによる曲順決定を行う「Editorial」の2種類の公式プレイリストがあり、こちらは後者。先頭に入るというのは、僕としても嬉しい限りです。
欧米、台湾などのアジア圏の個人キュレーターには約20のプレイリストに。ピアノソロの前作「Right」と「Jasmine」も尻上がりにプレイリストでピックアップされて160万再生に至っているので、徐々に広がっていってくれたら嬉しいなと思います。
海外プレイリスターへのピッチはSubmitHubというサービスを使いましたが、今までの作品の中でもっともキュレーターからの反応がよく、Jazz / Classical部門の人気曲で世界4位に!Spoitifyのプレイリストイン以上に、よりリスナーに近い個人のキュレーターがプレイリストやブログ、SNSでポストしたいと思ってくれるのは本当に嬉しいです。
この楽曲を皮切りに、僕の作品はよりグローバルへと羽ばたいていけるよう、これまで以上に「具体的に」展開していきます。今日は、そのために僕が決断した、これからの配信体制について書こうと思います。
The Orchardとの出会い
以前からシェアしているこちらのリンク。
音楽業界に詳しい方はこれでお気づきかもしれませんが、僕は今作から「The Orchard」と独占ディストリビューション契約を締結しました。NDA(機密保持契約)も含まれるため具体的な契約内容については一切触れることはできませんが、僕の作品はThe Orchardのチームの皆さんに託してリリースすることになります。
独占ディストリビューション契約とは?
わかりやすく言えば、DIYで自らリリースするのとメジャーデビューの間、もしくはいいとこ取りという考え方が正しいかと思います。楽曲の権利はアーティストやレーベル側にありつつ、売上手数料を渡すことで彼らのネットワークでプロモーションしてもらうという、現代音楽シーンの理に適う形態。
幾つものディストリビューターとお付き合いし楽曲をリリースしてきた僕。The Orchardの皆さんと年明け頃からリモート打ち合わせを重ね、契約締結に至りました。結婚、ディストリビューション契約、そしてまだ言えない別の契約と、僕は最近自身のライフステージをどんどんアップデートしている気になれています(笑)
ちなみに、これまでのディストリビューターの皆さんから円満かつ激励をいただきお話を進められた本件。手厚いサポートをいただいた皆さんには感謝しかありません。更なる飛躍を以て、恩返しできるよう頑張ります。
本題の前に、2020年の活動振り返り
それでは、このnoteをご覧のアーティストやレーベルの皆さんにも通じるであろう、なぜ僕がThe Orchardとの独占契約に踏み切ったかをいう経緯をお伝えしたいと思います。
大前提として、僕がこれまで伸び伸びと活動してこられたのは、これまでの音楽活動を全面的にサポートいただいた全てのディストリビューターの皆さんあって。彼らに不満があったわけではなく、僕自身の課題をクリアしていくための最適解を持っていると感じたのがThe Orchardだったので、僕が100%原盤を持つ過去作品含め、彼らに預ける覚悟ができました。
まず、2020年の僕の活動の整理をします。年初から掲げていた
・ライブで魅せられる楽曲を揃えたい
・コロナの最中に、ポップフィールドで勇気を持って進める曲を書きたい
・楽曲の中心になるのはボーカル入りのトラック
・デジタルマーケで追いきれない、マス含むシーンに領域拡大したい
というのをテーマにがむしゃらに走りました。そうしてできたのが、
アルバム「VOYAGER」でした。
Spotifyを中心に活動していた僕が、Apple Music、そしてラジオへの展開が実現したのは、ディストリビューションに尽力してくれたFRIENDSHIP.チームの皆さんのおかげです。
FRIENDSHIP.はレーベルサービスを持つ審査制のディストリビューター。確かな耳を持つキュレーターと共にアップカミングな楽曲たちを次々に配信プラットフォーム(以下、DSP)にプレゼンするだけでなく、アーティストに気持ちの面でも寄り添いながらそれぞれのニーズに応える素晴らしいサービスです。では何故、僕はThe Orchardに自分のフィールドを移したのか。
改めて「KOTARO SAITOとは?」を考えてみた
2020年の年末から2021年の頭にかけて、僕は自分自身の音楽の在り方を、それまで培ったものを一度整理したいと考えました。
KOTARO SAITOというプロジェクトはまだ、道半ば。
ならば、一度しっかりそのブランドを築き上げ切りたい。
それが、僕のたどり着いた答えでした。
僕が2018年にリリースした「BRAINSTORM」というアルバム。
以来、一貫して突き進めてきた、2019年のインストゥルメンタルトラック中心の楽曲展開戦略の本質は、「KOTARO SAITOというアーティストの明確な居場所づくり」だと考えたのです。
昔、こんなnoteを書いたことがあります。
リスナーである皆さんにとっての、僕の楽曲の活かし方。CM音楽の制作畑出身の僕だからこそ考えられる。音楽を楽しんでもらう「ムード」を重視した楽曲スタイルに立ち返る。そうすると、自然とこれまでキュレーションされてきた、多くのプレイリストと僕の音楽スタイルは重なったんです。
以下、これまでの僕のSpotifyでのプレイリスト実績。
こう見ると、多くは「ムード系」と言われる"聴くシーンありき"のプレイリスト。AppleやLINE MUSICでも同様の現象が起きているから、僕がどういう楽曲を作ろうと、僕の曲を楽しもうとしてくれる皆さんの聴取機会や傾向には少なからず、この性質はあるなと感じました。
今まで、それに変に抗おうとして「よりポップフィールドを!」「よりマジョリティを!」って思っていたように思いましたが、今はその頑なさはなく、僕が純度100%で作る僕のトラックを活かしてくれる場がこれだけの数あるならば、僕は作ることにおいて無理に領域拡大しなくていい。ただ、好きにやろうって思えたんですよね。
一見すると「自分の中で実績が良かったことだけやる」みたいに見えそうなんですが、実は真逆。僕は僕らしくやり続けよう、それに需要があったら、めっちゃ嬉しい。そんな気分です。
それが僕のいう「KOTARO SAITO」ブランドだなと。
ブランドの価値を決定するのは僕ではなく、
「自然な僕らしさとリスナーの皆さんとの掛け算」
だと思ったんです。
そのために必要な「海外多角化」「具体的なデータ」
楽曲のスタイルを、
僕自身のもっとも自分らしいものだけに絞り込むのであれば、
展開の戦略はたったひとつ。
今のスタイルで、展開されるエリアを拡げる。
これ、2019年冒頭のJASRACシンポジウムの頃からずっと狙ってきていて、ずっと確かな手応えを掴めていなかったことなんです。
日本という、ストリーミング「超」後進国から、DIYで自身の楽曲を真の意味でグローバルに展開するのは本当に大変だということがよく分かったこの2年。色々とトライしてきましたが、そこは自分自身のアーティストパワー不足もあるのか、累計100万人以上のリスナーの皆さんに出会えていても未だに掴めたと思えていないんです。
2019年はまだ、それを叶えられる体制構築方法が、
日本の市場構造的にも不明瞭だった。
方法論的には、
・現地のDSPに直接楽曲をプロモーションできる体制
・各DSPから供給されるもの以上に細かい、データ分析ツール
があれば、糸口は掴めると思っていました。
日本から現地に直接プロモーションするのは、2年やってみて、正直まだまだ難しいことだと感じます。現地には現地の地場がある。それはどの世界も同じみたい。そして、遠い遠い日本から海外含めた細かい動きを知るためには、SpotifyやAppleが供給してくれるデータだけでは細やかなことは理解しきれませんでした。
例えば無料版で聴いているのか、有料版で聴いているのか。
聴いてくれている人のうち、どれくらいの割合が、
どのエリアのスーパーファン(特に僕の曲を聴いてくれている方々)か。
実態がわかれば、SNSでのアプローチ、広告でリーチ拡大すべきエリアももう少し見えてくる、そんなふうにずっと思っていました。
The Orchardで叶えたいこと
僕が知る限り、僕が抱えている課題を今もっとも具体的に解決できるディストリビューターはThe Orchardです。僕のnoteで度々紹介している松島さんの記事がとても具体的で分かりやすいのでご覧ください。
僕がThe Orchardの話を聞いて魅力だと感じたのは、
①世界各国に専任スタッフの方々がいて、各DSPに直接提案できる
②細やかなアクションやデータ分析が可能な独自ツールを持つ
という2点です。つまり、僕のようにグローバル思考が強いアーティストにとって、その魅力を海外のチームの方々に伝える手段を持っていて、かつリリース前の再生リンクの用意から事後の広告運用に至る色んな過程を、データ分析ツールを使いながら「僕自身が主体的に」思考し検証できるんです。
各国へのプロモーションサポートをしてくれるだけでなく、アーティスト(正しくは「レーベル」)がストリーミング実績を主体的にチェックでき、それに対するアクションをオンラインで行える体制を作ってくれているのは、まさに僕のように「自律思考型のアーティスト・プロデューサー」にとっては理想の相手と言えます。
この環境を通じて僕は、
・世界中のリスナーの皆さんの耳に届く瞬間までを考えた音楽作り
・楽曲をどのような方針で届けていくかを練り上げる戦略術
・自分が得意とする「ムード系プレイリスト」でのグローバルハック
・ファンベースを拡大し、「更に先のやりたいこと」に注力する環境整備
をしたいと思っています。
The Orchardを利用開始したばかりの僕の感想
デジタルマーケティング、そして英語に強いメンバーの皆さんが在籍しているThe Orchard Japan。まだまだ僕との取引は始まったばかりですが、契約から音源の申請、プロモーション情報の整理整頓に至るまで、すでに色々と助けていただいています。
僕が彼らと会話していてすごく思うのは、
・「デジタルマーケティング」に、物凄く力を入れている。
・チーム体制が非常に磐石。全体的に、ロジカルでクールな方々。
・かなりの部分、「自分で考えなくちゃダメ。」いい意味で。
ということ。
頼り切っていては、絶対に僕の目標は叶えられないんです。
僕の楽曲、いい曲なんです!!!
今年、絶対にくるんです!!!!!
当たり前ですが、そんなワードは通用しません(笑)
当該作品に期待できる理由を、過去の実績を基に各拠点にプレゼンテーションしなくてはなりません。着実に、少しずつでも、実績を重ねてステップアップしていく思考が自然と身に付きます。
アーティスト/レーベル自身がきちんとグローバル意識を持ち、
楽曲制作からプロモーションに至る全ての部分で
海外まで届ける手段を考え抜く。
それを重ねつつ、DSPごとの動きも
きちんとチェックし少しでも状況が好転したら経過をまとめる。
デジタルマーケティングを行う上で当たり前なことを、改めてフォローしていく必要が原盤主サイドにはあると感じます。でも、僕からしたら、それはとても嬉しいこと。どうしても属人性が物を言いがちな音楽の世界で、超戦略的なビジネススキームで世界に音楽を届けている方々に出会えたから。
もちろんアーティストという存在は究極の属人です。でも、僕のサウンドは「聴く人の暮らしを豊かにする」ことを第一に考えて作っている。だからこそ、まずはグローバル規模でKOTARO SAITOの音楽が持つ「Chill」「Calm」な部分に気づいてもらいたい。その後、僕自身を知ってもらい、ファンになってもらう。更に先に、より聴く皆さんのライフスタイルを豊かに出来るプロジェクトを届けて行けたらいいなと考えます。
まだまだ走り出したばかりの、「具体的な」グローバルに向けた音楽活動の第一歩。16日(金)には先の「Oval (Piano Solo ver.)」含む3曲入りピアノソロシングル「OVAL」のリリースが、そして4月30日(金)にはアルバム「STELLAR」から先行シングル「Gem」のリリースが控えます。
OVAL
Gem
僕の個性を更に尖らせながら、皆さんの日々の生活に「心の豊かさ」をもたらすサウンドを目指して作っています。是非、ご期待ください。
KOTARO SAITO / 齊藤 耕太郎