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Spotify発:音楽を「聴く」から「活かす」に向かう時代の、楽曲と試聴シーンのカンケイ


はじめに。記事の概要
①新たに加わった公式プレイリストへの想い
②曲調ではなく試聴価値を意識したアルバムコンセプト
③プレイリスト文化の先駆者、Spotify
④音楽の楽しみ方、活かし方の提案が広がる

つい先ほど、新たにSpotify公式プレイリストに僕の作品が入りました。初期段階で大きな反響いただき、本当に有難うございます。今回はそのお話に関連して、音楽という「商品」を取り巻く試聴環境の変化についてのお話を、アルバム制作の過程で意識したことを交えて書いてみようと思います。


”Deep Focus”に入った「秒の間」

複数の海外プレイリスト、そして先日Spotify公式の"静寂と黄昏"に入れていただいた「秒の間」が、先ほど新たに12,000人強のプレイリストにランクインしました。しかも、ファーストビューで閲覧可能な5曲め!超嬉しい。

このプレイリストへの掲載は、僕にとって非常に特別な思いがあり、ここに入れていただけたことに大きな価値を感じています。理由は後述しますね。


「いつ、どう聴いて"考えてもらうか"」に特化した全体コンセプト

最初にコンセプトから考えついた「BRAINSTORM」には、「発想を広げ、人のアイデアや思考を促進させる起爆剤サウンド」という意味を込めました。全10曲、様々な角度や試聴用途を意識して楽曲を作っていて、アルバム全てを聴いていただいた方はよくご存知かと思いますが、今回は全く曲調に統一性がありません。あえて持たせませんでした。

曲調以上に、自分が音楽を聴きたくなる時はいつなのかをバックキャストして考えた上で、溜まりに溜まった作品アイデアのどれを今回形にして仕上げるか、を考えました。CM音楽のお仕事の経験上、比較的幅広い音楽を作ってきているし、何より元々「ジャンルより好きなアーティスト」という聴き方をしてきた僕にとって曲調という区分けは昔からピンとこない。ならば自ら享受してきた「アイデアが生まれるシーンに寄り添える音楽」というテーマの方が、僕らしいカタチで聴く人たちの心に寄り添えるのではないか。


プレイリスト文化の先駆者、Spotifyの凄さ

そこで僕が注目したのは、元々自分自身が好きで毎日使っていたSpotifyでした。特に、Spotifyが持つ「プレイリスト」というカルチャーに。(先に言いますが僕はSpotifyの回し者でもなければお金を頂いていることも一切ありません。ただのヘビーユーザー・ファンとして、制作者としてチャンスを作ってくれた感謝を込めて書きます。)

Spotifyのことをある程度知っている前提で書かせていただきます。基本的なスペックや他社サービスとの比較については別の方の記事をご覧ください。例えばこれとか。

検索すると、自らを「音楽発見サービス」というタグラインで名乗るSpotify。PCアプリのトップブラウザをみるとそこには、シーンや時間帯、曜日や趣味趣向に合わせたプレイリストが立ち並びます。時事的プレイリストも掲載されることがあります。

彼らは日々プレイリストを情報更新しており、シーンや季節によってより良い音楽を提供するために非常に多くの時間と労力を注いでいます。そのため、プレイリストに掲載される音楽は有名無名問わず、曲順に至るまで非常に綿密で聴きごたえがあるのに、それでいて人の生活の邪魔になるような聴かせ方をしない「プレイリスト職人術」が詰まった「作品」と呼べるものばかりです。

時間帯くくり、コーヒータイムや半身浴のような日常、オフィススタジオやサーフタイムなどの外出時を彩るもの、本当に痒いところに手がとどく、人のライフスタイルに寄り添うプレイリストが次々と並びます。

僕がアルバムについて思案したり制作途中に息抜きする際に、そんな「作品的プレイリスト」の一つである"Deep Focus"のことを目にしたことがありました。「あ、まさにこういうのに入ったらいいな」なんて思ったりしていたので、今回の掲載は本当に驚きましたし、とっても嬉しいです!

加えてSpotifyが優れているのは、楽曲やアルバム、さらにはプレイリスト自体を手軽にシェアしてそのままアプリ連携して聴くことができることです。

特に昨今「インスタ映えよりストーリー映え」と言われて久しいInstagram ストーリーズに直接ジャケットと試聴リンクを貼れる仕組みはApple Musicなどにはまだ搭載されておらず、聴いた音楽が良かった際に友達やフォロワーの方に簡単に共有できます。

僕はSpotifyを使っている音楽仲間とは、日々の楽曲情報交換や制作時にヒントになり得る表現手法を説明する際にこのリンクをLINEやMessanger、直コピーを駆使しています。YouTubeはスマホ上で視聴以外のことを行おうとすると映像も音楽も止んでしまいますが、Spotifyなどの音楽プレイヤーは音さえ出さなければ他のアプリを同時起動できる。ゆえに僕は公私ともにSpotifyを使いながら他の作業を行っていることが多いです。


音楽の楽しみ方を提案する動きが、どんどん広がる。

先日、アルバムリリースをきっかけにTwitterで知り合い実際に会って仲良くしていただいている、音楽プレイリスト共有サービス「DIGLE」の西村謙大さんが、とても腑に落ちることをおっしゃっていました。

プレイリストは音楽への関心が低い人でも、シーンや時間帯、行動の目的に合わせてキュレーションされた音楽によって日常を豊かにすることができるものです。音楽を共有し楽しむ新しい形であり、音楽家や音楽専門家以外の方だからこそ作れるプレイリストが非常に魅力的なものになり得ます。

西村さんはSpotifyプレイリストを媒体視点で早期から発展に取り組まれている方。noteに書かれている以下の記事も僕だけでなく、沢山の方が音楽配信・デジタルマーケティングにおいて参考にされたかと思います。28歳ですって。マジすごい。ミレニアル世代の雄です。

音楽を商材として捉えた時、果たしてそれは「嗜好品」に向かうのか「消費物」に向かうのか、という疑問や議論。CDが売れなくなったことを捉える際、「音楽にお金を払うのは音楽好き・一部のアーティストの熱烈なファンだけ」と考えれば音楽は嗜好品と言えそう。一方、YouTubeを筆頭にストリームサービスを使わずとも無料で音楽が聴けるプラットフォームも存在し、サブスクリプションどころでない「音楽の大量消費」は人々の意識を大きく変えました。

僕は、西村さんの考えにとても共感しました。

音楽は本来、一つの楽曲のみで人々の生活を豊かにするものではない。その場に合う楽曲同士の連続性、起承転結をいかに曲順で作るか。だからDJが必要であり、ミックステープやコンピレーションCD(シーンに合わせて曲順が組まれたCD)などが古くから重宝されてきました。

それにより、音楽はファッションやアート、ひいては恋愛や友情と結びつき、互いにより強い力をシェアしてきました。音楽は本来、音楽好きが歴史やディテールを語らうためのものじゃない。(そういう楽しみ方も超楽しいですが)もっと身近で、もっと敷居が低い、誰もが喜びを得られるものなんだと思います。それに関連して、これとても観たい。今日からじゃん!

Spotifyがもたらしたもの、そしてDIGLEが普及させている価値とは、人間にとって普遍的な価値である「ライフスタイルに音楽があった方が豊かになれる」という思想を、現代にあったデバイスとシステムで誰もが簡単にシェアできる喜び。さらに、やろうと思えば自分自身でシーンやムードに合わせたプレイリストを発信し、ファンを獲得し、アーティスト同様「キュレーター」として価値付けを行えるインタラクションの概念だと考えます。

音楽とは、消費のカタチを変えながらも不変の価値に知らぬ間に救われる「嗜好品」と言えるもの。これからもそう呼べる音を作っていきたいです。


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leift / KOTARO SAITO
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