10年後なにしてると思う?
と、10年前の自分に聞いたら…
なんて答えるだろうなあ。たぶんちょっと困った顔をして「えーっと、うーん…どうでしょうねえ」とか言いながらごまかしてそう。万が一ですよ。ちゃんと答えていたとしてもきっとハズしてる。だって平成最後の夏、2018年。コピーライターになって、その後、映画のプロデューサーをしてる未来なんて当てられっこいから。ぜったい。
人生は、伏線だ。
人生には伏線であふれていて、それを回収していくと面白くなる。そんなことを思いながら日々過ごしている。アメフトをずっとやっていた僕は、10年前の2008年、広告会社の電通に入社。そして、配属されたのは人事局だった。予想外の状況に陥った時、「頭の中でこれおいしい」という魔法の言葉を唱えるようにしている。でも次第に「言葉を通じて感動する仕事がしたい…!」と心の底から思ってしまった。強引に努力をして転局試験を突破。翌年、コピーライターになる。仕事は甘くない。うまくいかなくて、なにかを掴みたくてあちこち見ていた時、再会したのが松居大悟監督だった。
大学のクラスメイトという偶然。
1000人近くいる学部、40個くらいあるクラス。ほんとにたまたま同じクラスだった。大学のクラスメイトって、めっちゃ仲良くなるのは稀で、みんな部活やらサークルやらアルバイトにそれぞれ自分の居場所を見つけると思うんです。僕らもそう、まれに昼メシをいっしょ食べるくらいの関係で、お互いをそんなに意識してなくて。社会人になってコピーライターになった僕の耳に飛び込んでくる「あの松居くんが演劇公演をしてる!」きっとなにかあるぞ!直感が働いて、下北沢駅前劇場に向かった。そこで衝撃を食らった。
映画にしようよ、あれはすごいよ。
その後、映画「アフロ田中」や、ロックバンド「クリープハイプ」のMusicVideoを次々と発表する松居監督の勢いに食らいつくように「僕がやる、僕にやらせてくれ」と、企画書を持ち込み、松居監督作品の宣伝コピーを書くようになる。月日は流れ2015年のことだ。これは欲ばりなのかもしれない。コピーを書く歓びを感じつつも「一緒につくりたい!」という気持ちがほとばしってしまった。映画の企画を募集するコンペがあったのだ。あれしかないと、頭の中に鮮明に残っていた衝撃。
あの時、悔しかったなあ。
コンペに選ばれなかった日の帰り道、すべてがスローモーションに見えた。
毎年話し合う新年の抱負。
諦めるタイミングなんていくらでもあったと思う。世界中でお蔵入りになる企画なんて星の数ほどあるし。でも監督は諦めない。なんとか実現しようという話が新年の抱負でも出てくる。ちくりと胸が痛む。僕は広告の仕事をしている限りは、映画の仕事はできない。コピーを書くことはできても、製作はできない。
…あ!
とてもシンプルなことだった。
映画の仕事ができる部署に異動すればいいんだ、と思い立つ。異動できたのが2017年だった。
本当にやりたいことはとってもこわい。
やりたくて仕方がないのに、できないかもしれない。本当に思い入れのある仕事は、油断したら気持ちがすぐにあふれそうになる。認められなかったらどうしよう。駄目といわれたらどうしよう。こわい。いくつもの不安を呑み込んで、気丈に振る舞う。僕は思った。希望も絶望も味わいつつ日々を過ごすこと、本気で生きるってそういうことだよなと。たくさんの人に助けられながらここまで突っ走ってきた。いくつもの出会いで完成した「君が君で君だ」という映画。
いよいよ、7月7日(土)からはじまります。
あの時の衝撃を共有したくてつくりました。
だからもし観てくれた人がいたら、感想を分かち合いたいんです。それが僕の最高の歓びです。そして僕は、映画の中の「10年後の自分へ」あのシーンにどうしようもなく心を揺さぶられてしまう。あなたはどうだろうか?
※
最初の問いに戻りたい。
いまから10年後、僕はなにしてるんだろう?
…さっぱりわからない。
ただでも。このまま人生の伏線を回収し続けられたら、きっと面白くなる。偶然を、必然に。未来は、過去にある。
10年前に想像してない、今。今、想像のつかない10年後へ。
7月7日(土)。二十代の出会いのすべてを回収して、僕の平成最後の夏がはじまる。今のこの気持ちをずっと覚えておこうと思う。
※2019年4月11日_追記※
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あの3人のとてつもない純情をご自宅でも。あの夏の衝撃を受けてほしい。DVDには特典のコメンタリーも!ぜひ、ご覧ください…!