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親友にふられた話をしてもいいかな?

スージーへ

たぶん、長くなっちゃうんだけど、
書くなら今だ、今しかない!って、
そう思ったんだ。

だからこの近況報告を読んでほしい。

今、読んでもらってるこのnoteにさ、
2014年から書きつづけていたら、
めっちゃありがたいことに、
「投稿コンテストの審査員をお願いします」
ってnoteの事務局さんから、言われたんだ。

いやあ、もうほんと、信じられないよね。

昔は、ただただ、
「ここにいる俺を誰か見つけてくれ〜!」って、
ひたすら願っていたから、
続けてみるもんだなってつくづく思う。

でね、審査員がお手本として、
コンテストのテーマに沿って、
まずは書いてみる、ということになってて、
そのテーマが「#やさしさにふれて」で。

どうしよう、何書こうってたくさん考えた後に、
どうしようもなく書きたいテーマに辿りついたんだ。

親友にふられた話をしてもいいかな?

親友のスージーに、ふられた話。

覚えてる?

スージーが言ってくれた、この言葉。

『阿部ちゃん、家族が大切なんだよね。
 一番というか。一番大切なものが
 仕事じゃなくて、家族なんだよね。』

スージーの顔には「ゴメン!」って書いてあって。

もしかしたらだけど、
強烈に覚えているのは俺だけで、
スージーが覚えてない可能性もあるんだけど、
ほら、20代中盤。2013年くらいかな。

広告のコンペに一緒に出そう〜!
俺がコピーを書くから、スージー、デザイン頼む!
って、いつもみたいに誘った時。

見事に、ふられた。

「そっか」

って俺も言いながら、テーブルを挟んだ
手の届く場所にいるはずのスージーが、
遠くに行ってしまったように思えたんだよなあ。

親友は、結婚した。
親友は、父になった。
親友は、一軒家を買おうとしていた。

スージーにとっては、
そんな時だったんだよね。

俺は、いったい何をしているんだろう…?

・・・・・

コピーライターになったのは、
いや、コピーライターになれたのは、
間違いなくスージーのおかげなんだ。

はじめて出会ったのは、
今から14年前、2006年。
大学3年生の時。
広告会社の夏のインターンシップ。

大学でもつづけていたアメリカンフットボール。
「ごめんなさい!どうしても行きます!」と、
勇気を出して俺からチームの幹部陣に伝えて、
飛び込んだインターンシップ。

インターン初日、全員集合。
60人だったかな。
大きな会議室にずらりと。
壮観じゃなかった?

砂ぼこり舞うグラウンドを、
駆け回っている自分にとって異世界だったな。

みんな何かに取り組んでて、
みんな瞳がきらきらしてる。

一人ひとり自己紹介していって、
(どうしよう何話そう!?)って
考えながら見てた窓の外の景色まで、
よく晴れててきらきらしてたのを覚えてるなあ。

そこにいたのが、鈴木智也くん。
あだ名は、スージー。

柔らかで、にこやかで。
大学でデザインを専攻してるのもあって、
毎回出す課題は、手づくりで超良くて、
見せて、すごいね、すごくいいね!って、
毎度、話しかけていた気がする。

意気投合、というのかな。

自宅にまで遊びに行かせてもらって。
見せてもらったあれって、
当時スージーの通ってた、
コピーライター養成講座の課題だったのかな?

え、なにこのフォント!?カッコいい!

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これ、もらっていい?とか言って、
俺、自分の部屋に飾ってたんだよね。
毎日、見てた。
やばいね、もはやファンだね。

すごい憧れた。いいなあ、って。

俺、アメフトばっかりやってたからさ、
こうして言葉とデザインで
人の心をつかむ表現をできることが、
すごくすごくカッコよく見えたんだ。

でも、それは、
自分とは縁のない世界…
だなんて思わせないでくれたのは、
まぎれもなくスージーだったよ。

「一緒につくろうよ」

学校終わり公園に遊びに
誘う子どもみたいに声を掛けてくれて。
手を引っ張ってくれて、
すげーうれしかった。

大学を卒業して、それぞれ別の広告会社へ。
でも、一緒に広告賞にトライして。

違う会社の僕らが
コンビを組むからおもしろいんだ!

とか言って。

広告賞は取り組む課題を選べるから、
この課題でこんなのはどう?とか言い合って、
過去の作品集を見ては、
これはイケてる、イケてないとか、
どの口が言うんだって感じだけど、
夜な夜な集合してはたくさん話したよなあ。

あれは、びびった。
社会人1年目、2008年。
朝日広告賞、入賞。

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俺はその時、人事局で働いてて。
職場の方たちは「え!なんで!?」
どうして感がハンパなかった。

部署なんて関係なくて
やりたいことがあれば出来るんだ!って、
暗に伝えられた気がして、
それがすこし、誇らしかったな。

広告をつくる仕事を生業にしたくて、
会社の転局試験をなんとか突破して、
その翌年、俺も、なんとかコピーライターに。

それからも、一緒につくろうって、
仕事が終わっては、スージーの家に通って、
秘密基地にこもるみたいに広告賞にトライしてたよね。

合言葉は「グランプリか、総スカン」

フルスイングして、つくるんだって、
息巻いてた。

たくさんつくったなあ。
でも、その後は、
なんにも、起こらなかった。
見事に総スカンだったね。

焦ってたのもあったんだ。

何かで結果を出さないと、
存在感を放っていかないと、
この仕事はつづけられないかもしれない。

だから、まだいける、まだやれる、
今ここから、もっともっと遠くへ飛びたい。
一緒に大きなことしようって声を掛けて、
伝えたのが冒頭に書いたあの時。

しっかりふられた。

ああ。

俺たちが組めば最強、テッペンとるんだって、
俺だけが盛り上がってたんじゃないかって、
俺だけ楽しんで、負担かけてたんじゃないかって、
帰り道、恥ずかしくて、切なくて、怖くなった。

それからだ。

スージーと連絡とれなくなったのは。

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当時のこのやりとり、やばくない?

「やりとり」というか、
俺が一方的に送ってるだけだから、
「やり」か。

やりを投げつづけて、全く反応がなくて。

目の前の仕事を、
めちゃくちゃ頑張ってるって、
風の噂で聞いてて。

あえて俺に返信しなかった部分もあるだろうし、
忙しい中で、何に時間を使うかを
スージーはずっと考えてたんだと思う。

でも、年賀状のやりとりだけは
ちゃんとするという不思議な関係。

不安だったんだよね。

ひよこははじめて見た親鳥についていくでしょ。

ポジティブな自分でいようとしてるし、
前向きなことを基本伝えようとしてるから、
よく勘違いされるんだけど、
仕事でも、まあまあ、凹んで、傷ついて、
うまくいかないことも往々にしてあったから、
スージーというクリエーティブ親鳥に
話を聞いてもらいたかったんだよね。

次第に…

俺は俺で、自分の道を進んでいく。
企画する仲間を見つけていって、
少しずつ成果がかたちになっていって、
2016年に「待っていても、はじまらない ➖潔く前に進め」
という書籍を刊行することができたり。

進めば進むほど、思い出したのは、はじまりだった。

書籍のスペシャルサンクスに、
スージーの名前を書かずにはいられなかった。

一年に一回、
年のはじめに短く、
近況報告をする親友。

それからまた数年が経つ。

「絶対に会いに行かなくちゃ!」と思ったのは、
2019年、東京コピーライターズクラブ新人賞、
受賞者の中に、スージーの名前を見つけた時。

授賞式に行けば絶対に会える。
そう思った。

新人賞には、CMでも、
ポスターでもエントリーできる。
大人数が関わるCMに比べて、
ポスターの方が若手は任せてもらいやすい。

ポスターをつくりエントリーしていた僕は、
スージーよりもはやく新人賞を受賞していた。

スージーは、
デザインもできるCMをつくる
プランナーとして、
着実に実績を積み重ねていた。

そしてこの年、
サントリー伊右衛門のCMコピーで受賞。

草彅剛さんが、
本木雅弘さんと宮沢りえさんの
伊右衛門夫婦のもとに訪れるCM。

「来たかったんです。この茶屋に。
 大変ですよね。生きるって。
 傷つけたり、傷ついたり。」

当時、SMAPから「新しい地図」に
活動の拠点を移した草彅剛さんのセリフ。

それを受けて、宮沢りえさんが言う。

「お茶は、揉まれて傷がついて、
 ええ味が出るんですって。」

このコピーで受賞。おめでとう。
めちゃくちゃいいコピーだよ。本当に。

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写真右側が新人賞を受賞したスージー

スージーのご家族もみんな来てて、
スージーのご家族とも写真を撮って、
スージーの大事な家族と会えて話せて、
満たされた気持ちになった。本当に。

何年ぶりに会えたんだろう。

久しぶりに会っても、
昨日会ったみたいに会えるのが
本当の友達だとか言うじゃん。
あれは、本当だね。

この写真を撮った時から半年後。

2020年、俺も結婚してさ。

ちゃんとわかったよ。

何が一番大事か。

いやもちろん仕事も大事だし、
友人も大事だし、全部大事だし。
でも、一番が出来るってことがわかる。

あの時、わからなかったことが、わかったよ。

ようやくわかった。

俺は、あの時、
やさしさにふられてたんだ。

そして今ならわかる。
やさしさにふれてたんだって。

スージーが家族に向けるやさしさ。
あたたかいやさしさ。

あの時、本当の気持ちを話してくれてよかった。
あの時、なあなあに一緒にやらなくてよかった。
あの時、ちゃんとふられていて本当によかった。

だから今、
自分の中にある一番の気持ちに手応えがあるよ。
特別な気持ちに手応えがすごくあるんだ。

・・・・・

そんな長い近況報告をしたら、
スージーがつくり贈ってくれたのが、
このイラストでした。

掘り進めたスージー

挿絵画像suzuki

飛ぼうとしていた俺

挿絵画像abe

添えられてた言葉

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僕らはすこし違うだけ。

向かう方向は違くても、
お互いをちゃんと見てる。

違う道のようで、
「特別をつくりたい」って、
おなじ気持ちで生きている。

それが今どれだけ、心強いか。

また、そのうち、
ファミレスで語ろうね。

また、会おう。

カレー食べにいこう。

テキスト:阿部広太郎 イラスト:鈴木智也

このnoteは、Panasonicと開催する「#やさしさにふれて」投稿コンテストの参考作品として、主催者の依頼により書いたものです。

書けて良かった。その依頼に心から感謝します。

※※※

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