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お気に入りの本「太陽の門」

「太陽の門」は2020年に日本経済新聞で連載されていた小説です。

私は連載中からこの作品が大好きで、毎朝その日のぶんを、2回読んで味わうのが日課でした。

私は社会人になってから、小説をあまり読まなくなりました。

そんな私が、社会人になって唯一ハードカバーの単行本で購入した小説が「太陽の門」です。

スペイン内戦を題材にした小説

物語の舞台は1930年代のスペイン内戦です。

アメリカの元軍人である主人公のニックが、スペイン内戦に巻き込まれます。

そこで民兵組織の一員として活躍しつつ、恋をするというお話です。

なお「太陽の門」というのは、スペインの首都マドリードの中心部にある広場の名称です。

「カサブランカ」という名作映画があり、この小説はその前日譚という設定で書かれています。

「君の瞳に乾杯」という言葉は、この映画のニックのセリフです。

皮肉屋のニックがカッコいい

この本の最大の魅力は、主人公であるニックのカッコよさです。

ニックは少年漫画の主人公みたいな、明るいヒーローではありません。

暗い過去を背負っていて、ほとんど笑うことがなく、いつも皮肉ばかり言っています。

でも、男女を問わず惹きつける魅力あります。

自分自身では出せないタイプのカッコよさでです。

だからこそ憧れる気持ちで、私はニックが好きになったのかもしれません。

名シーンで雰囲気を感じてほしい

あとは、物語全体の雰囲気が独特でいいんです。

ハードボイルドで哀愁がただよっています。

その雰囲気や文体を感じてもらうために、物語中盤の名シーンを引用して紹介しましょう。

私が大好きな場面で、この部分を読むだけでも感動がよみがえってきます。

「ラモンが遅いな。何をしてやがる」
「足止めしてるよ。あいつは、馬に乗れねえんだ」
驚愕するリックの隣で、ミゲルがにやりと笑って手綱を引いた。
「じゃあ、後の戦争は頼んだぜ!」
疾走を続けるリックの背に、ミゲルの大きな濁音が飛んだ。
「アメリカさん、達者でな。ブランカによろしく!」
馬上で慌てて振り返ると、ミゲルが辻で馬を止めていた。

リックが逃げる時間を稼ぐために、ラモンと計ったのだろう。常にリックの作戦に愚直に従ってきたミゲルが、ラモンと二人で最後に犯した、心憎い軍律違反だった。

戦友たちが捧げてくれた命を、無駄にはできない。
ーーマドリードを、守り抜いて見せる。
軍馬を疾駆させた。
はるか後方で爆発音がする。
街を駆け抜けてから、リックは振り返った。
雨上がりのラス・ロサスの空には、見事なまでの虹が場違いに大きく架かっていた。

「太陽の門」赤神諒

いかがでしょう。

これだけでも、この物語の空気感が伝わったかと思います。

このnoteを読んでくれている人の中で、普段から「太陽の門」のような小説を好んで読んでいる人は、たぶんいないでしょう。

だからこそ、気になった人は読んでみてほしいです。

いままで味わったことのない種類の感情や感動が、湧き上がってくると思いますよ。


このコラムは以下の企画に参加しています。

Discord名:梅澤浩太郎
#Webライターラボ2410コラム企画

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