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道端で暴言をはかれることはないが、オンラインゲームではよく起きている

 子供のころからTVゲームが好きだった。ゲーム本体を購入すると、コントローラは1つしか付属していなくて、ゲームは一人でプレイするものだった。他の人と一緒にプレイするときは、各自のコントローラを持ち寄って、一緒に1つの画面を見ながら遊ぶものだった。
 インターネットが一般家庭にも普及して、オンライン対応のゲームが一般的になった。画面の前にはひとりで座っているが、ゲームの中では見ず知らずの人間と戦ったり、お互いに協力して遊んでいる。友達と一緒にプレイするときも、昔のように1つの画面の前に集まる必要はなくなった。テレワークならぬテレゲームは、すでに当たり前のものになっている。

 見ず知らずの他人がゲームのなかで登場することによって、人間同士の細かなトラブルが起こるようになった。納得いかない他人のプレイに対するメッセージやボイスチャットを使った誹謗中傷は日常的になっている。道端で暴言を受けたり、口喧嘩をしている人を見かけることは少ないが、オンラインゲーム上では珍しいことではない。オンラインゲームの世界は、現実世界よりも息苦しいところがある。
 オンラインゲームでの口喧嘩の様子(メッセージやボイスチャットのやりとり)を観察していると、ただの言い合いに終始していることがほとんどだ。一方が「ばか」といえば、他方が「おまえこそばかだ」と言う。「偉そうに言うな」と言ったら、「おまえこそ偉そうだ」と言う。暴言に対して暴言を言い返しているのだから、外野からみればどっちも同じにみえる。お互いに似たもの同士だから、もしかしたら仲良くなれるかもしれない。暴言メッセージのことを「ファンメッセージ」というのも理解ができる。

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当たり前だと思っていたことを疑うと、新しい発見があるかもしれない。繰り返しの毎日にスパイスを与えるエッセイ集

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