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五月蝿いは、余裕のあらわれ

 車通りが多いところに住んでいることもあって、普段からバイクや車の音がうるさい。信号待ちのエンジンの空ぶかし、クラクションの音も煩わしい。ただ、こういった意図的な騒音が聞こえている間は、ある意味では平和で安全な状態といえる。

 ここ数年の内に、2回の交通事故を目撃した。1つ目は、スピード違反の2台のバイクが信号待ちをしている軽自動車に後ろから衝突した。衝突する数分前まで、2台のバイクは法定速度を守って走行していた。2台のうち1台が右車線へ車線変更を行い、エンジン音をあげながらスピードを上げて走っていった。もう1台のバイクも後ろを追いかけていった。その後すぐに2台のバイクは、アンダーパスの下り坂で停止していた車の後方に衝突したと思われる。僕がアンダーパスへ進入したときには、転倒した2台のバイクのそばに、バイクの運転手が立っていた。
 衝突したとき、僕は事故現場の約200m後方の交差点で停止していた。衝突音は聞こえなかった。クラクションの音もなかった。クラクションを鳴らす余裕すらなかったのだろう。

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当たり前だと思っていたことを疑うと、新しい発見があるかもしれない。繰り返しの毎日にスパイスを与えるエッセイ集

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