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絆やチームワークを見たいわけではない

 野球には「流れ」という言葉がある。別のところでも触れたが、僕はこの「流れ」という言葉をあまり信頼しておらず、曖昧な言葉だと思っている。
 麻雀にも類似した言葉で「ツキ」がある。「今日は、ツキがなかった」と言うように、「ツキ」は「運」と同じ意味合いで使われる。そのため、「ツキがない」は「運が悪い」と同じ状況を指す。
 ある雀士が、先輩雀士の調子が悪い時には「ツキがなかったですね」と声をかけ、調子が良い時はツキには触れずに「強いですね!」と称賛するのがよい接し方だと話していた。
 ツキは、当人では動かしようのないもので、「ツキがなかったですね」は、勝てなかったのが本人の責任ではないことを暗に意味していて慰めの言葉となる。そのため、好成績を収めている人に「ツキがいいですね」と声をかけるのは、失礼にあたるので気をつけよう。

 ただ、麻雀の世界では「ツキ」という単語が独り歩きする傾向がある。「ツキを呼ぶ」「ツキが離れる打ち方」「ツキを呼ぶあがり方」というフレーズは、僕にはオカルト話に聞こえてくる。
 たしかに麻雀は、ランダム要素が高く、確率によって勝敗が分かれるゲームといえる。確率は、多くの試行回数から算出された数値のため、1つの試合だけみれば、確率通りに結果が出るわけではない。確率の低い選択をしても、結果的に1位として試合を終えることもある。
 そのため、麻雀であれば人間もAIに勝てる。AIが麻雀をすれば、ゴールする(あがる)確率とリスクのバランスを計算して、堅実な戦いを淡々と行うだろう。AIとプロが千回試合を行えば、プロ雀士もAIには勝てないと思うが、数試合の短期決戦であれば、人間もAIに勝てる余地はある。AIが人間に勝利を収めたチェスや将棋との違いは、競技の中にどのくらい運要素があるかどうかにある。
 運要素が大きいので、プロ雀士の試合を数試合見ただけでは、雀士の強さを感じることは難しい。大会で優勝している姿を見ても、ツキがよかっただけではないかと邪推してしまう。1年間通しての成績を見てはじめて、雀士の強さを認められるだろう。

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当たり前だと思っていたことを疑うと、新しい発見があるかもしれない。繰り返しの毎日にスパイスを与えるエッセイ集

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