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嫌いこそものの上手なれ

 好きなものと得意なものが一致するのは、自然なことだ。野球が好きな人は、野球の試合を見たり、友達と野球をしたりするので、好きでない人に比べて対象のものに接する機会が多く上達する。うまくこなすことができるようになると、ますます楽しくなり好きになる。
 「好きこそものの上手なれ」という言葉があるが、好きだから熱中して上手になることもあれば、とりあえずやってみて、気づいたら好きになって上手になっていることもある。その場合は、「やってみるこそものの上手なれ」といえるが、やってみないと上手になれないのは当然なので、ことわざになっていない。好きと得意は循環しやすく、両者は一致していることが多い。

 僕は、人からコミュニケーション能力が高いと言われる。会社の同期や上司にもそう見られたことがあり、他の会社との打ち合わせや商品説明を行う業務を任された。正直に言うと、僕は誰かとコミュニケーションをとることは好きではない。人間嫌いかもしれない。しかし、仕事は自分の好みよりも、自分の能力が発揮できるものを選ぶべきだと考えている。
 振り返ってみると、大学生のときは塾でアルバイトをしていたが、子供が好きというわけではなかった。大人よりも子供のほうが信頼できると思っていただけで、大学生のときから人間嫌いだった。それでも塾の講師を選んだのは、教えることが他の人よりも上手くできると自分では思っていたからだ。好みよりも自分の能力が発揮できるものを選択していた。好きと得意が一致してはいなかった。

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当たり前だと思っていたことを疑うと、新しい発見があるかもしれない。繰り返しの毎日にスパイスを与えるエッセイ集

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