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なんのためのコスパか?

 テレビ、雑誌、本だけではなく、インターネット上に流れる広告でも「効率性をあげる方法」「時間をムダにしない生き方」という文言をよく見かける。タイムパフォーマンス(タイパ)やコストパフォーマンス(コスパ)という言葉も一般的になり、時間やコストあたりの作業量をいかに増やすかが大切らしい。
 労働環境の変化も影響している。国民の意識変化や法律の変更によって、昔のように残業して仕事の成果を出すことはできなくなった。テキパキではなくゆっくりと働く人には逆風だ。決まった時間のなかで、いかに多くの結果を出すことができるかが求められている。

 「コスパ」「タイパ」が日常の言葉として使われるようになるとともに、効率を上げることはビジネス現場だけの話ではなく、普段の生活でも行うべき態度になっている。「時間がないから・・・」「お金がないから・・・」は忌み嫌われる言い訳となり、時間やお金はコスパやタイパを上げて、自分自身で作り出すものとなった。
 時間やお金をうまく使いこなせない人は、「無駄な生活を送っている」すなわち「ダメな生活を送っている」ことになる。スマートフォンを片手に、だらだらと一日中過ごして罪悪感を抱くのは、このもったいない精神が裏にあるのだろう。

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当たり前だと思っていたことを疑うと、新しい発見があるかもしれない。繰り返しの毎日にスパイスを与えるエッセイ集

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