オレは女が嫌いだが 4
面白味に欠ける。
こんなに人を殺す言葉があるだろうか?
オレはその日一日中、テンションの最下層の中で暮らしていた。もはや林田さんすら目に入らない。後日同僚に聞いたところによるとブツブツつぶやいていたらしい。ハイビスカス女の野郎……、と。
そんな調子で一日を終えて、オレは居酒屋へ向かった。
居酒屋の名前は「天」。大将の名前が天と書いてたかし、と言うのだ。だから、天(てん)。
「いらっしゃい」
威勢のいい声に迎えられて暖簾をくぐるとカウンターにあの女の姿があった。
「ゲッ……」
「あっ……」
視線がぶつかり合い、互いが制止すること2秒、今度は同時に口を開いた。
「ハイビスカス女」
「変態」
へ、変態……。ショックが隠せなかった。その場でへたり込み、オレはまた呪詛を唱え始めた。
「ちょっと、ちょっと! 京平君もシュリちゃんも!!」
大将が調理場から出て来て、オレたちの間に立った。助けが必要なのはオレと判断して、オレに駆け寄り、肩を貸してくれた。ありがと、大将、今日もいい男だ。
「だって、この男、昨日部屋まで連れ帰ってやったら彼氏ヅラしよんねんもん」
「なっ!! 誰が、お前なんかの彼氏ヅラした?!」
「したやろ、やらしい目で見とったやん。変態」
そこでしばしオレはまたフリーズする。大将に気合いを入れてもらい、なんとか蘇った。
「お前な……! 失礼なんだよ!」
オレは結構な声を出した。ここが店であるのも忘れて。そうすると、すっと、女の目が細くなった。オレは寒気がするのを感じた。
「ここは人の店や。そんな大声出すなら、表へ出なさいな」
冷たく言うと、そこから一切何も受け答えをしない。これだから、これだから女は嫌いだ。ふざけるな。
オレは怒りを抑えきれず、女の元へ歩み寄って、女のすぐ脇、カウンターに乱暴に手をついた。
「あのな、ふざけるのもたいがいにしろよ? 人のことバカにして面白いのか?」
「アホにアホ言うて何が悪いねん」
悪びれもせずに女は言う。大将はオロオロ、オレと女を見比べてどうすればいいかが分からなくなっているようだった。
「お前……!」
怒りのやり場がなく、歯ぎしりをした。その嫌な音に女は顔をしかめる。
「とりあえず、座りや。横」
そう言って、女は自分の隣の席の椅子を二度、叩いた。
「昨日、面倒見たったお礼もしてもらわなアカンし、付き合うたる」
女は大将を呼んだ。
「豚の角煮と龍の落とし子!」
コイツ、人の金だと思って……!
続く
おはようございます、こんにちは、こんばんは。 あなたの逢坂です。 あなたのお気持ち、ありがたく頂戴いたします(#^.^#)