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アバ捨て山

 とある田舎の山奥に村がある。その村はある山の麓にあり、その山はこのように呼ばれていた。

 “アバ捨て山”

 その由来は古く、この村がまだ出来たころ江戸の中期までさかのぼる。

「そよ」という名の女がいた。そよは大変美しく、村中の男の視線を我が物としていた。そんな魅力的な女だったからか、次々に男をとっかえひっかえしていた。

 騒ぎがあればその中心にいるのはそよで、そよが寝取った男の妻が激高し、まくしたてる姿が連日のように見られた。

 ある時、耐えかねてある女が言った。

「そよを山に捨ててしまおう。あんなアバズレ、この村にいてはいけない」

 女の団結力はすさまじく、その日のうちにそよを殺して山に埋めてしまった。突然消えたそよに男たちは落胆したが、女たちはほくそ笑んだ。

 その十数年後、村にある女が訪れた。名前を「かよ」と名乗った。かよは次から次に男を籠絡し、そよを知る古い女たちはそよの再来だと口々に言った。

 そしてまたしてもかよを殺して、山に埋めた。その十数年後「とき」という女が現れ、また男たちを誘惑し、また女たちに山に埋められた。

 それから幾度となくいたちごっこのように魔性の女が現れては、殺して埋めるということが続いた。ゆえに、山の名は「アバズレ捨ての山」、「アバ捨て山」とあいなった。

 終わり

Twitterで“アバステ”という言葉を見て思わず。笑

おはようございます、こんにちは、こんばんは。 あなたの逢坂です。 あなたのお気持ち、ありがたく頂戴いたします(#^.^#)