坂本龍一 音を視る 時を聴く | 東京都現代美術館
年明けの美術館初めに、東京都現代美術館で会期中の「坂本龍一 音を視る 時を聴く」企画展を鑑賞した。
会場には多くの人が訪れていて、たぶん↓こんな、坂本龍一さんの演奏コンテンツを期待して、来館したんだと思うだけど、
残念ながら、坂本龍一さんの演奏プレイ的なコンテンツは、ほんの少しあるだけ。ほとんどの展示作品は、なんていうか実験的というか、別のアーティストとのコラボ作品がほとんど。これらの展示が面白いかどうかは、人によって評価が分かれるかもしれません。
この企画展を見に来た人の帰りの会話は、
「坂本龍一だったね」
「うん、そうだね。坂本龍一だったね」
といったやり取りで、モヤモヤしている人が多いんのではないか。
しかし、アートというものは、本来それくらい曖昧で、観る人の解釈に委ねられる部分が大きいもの。その余韻や違和感こそが、アートの面白さでもあると思う。そういう意味では、今回の展示は、これはこれでよいのではないかと思う。
一部の展示は、2023年に京都で見た「AMBIENT KYOTO 2023」での展示されていたものがあった。京都のは、京都新聞社の印刷所跡地という独特の空間での映像展示で、廃墟的な雰囲気と坂本龍一さんが亡くなられたことに対する哀悼の思いが不思議と融和し、作品に深い余情を与えていた。東京都現代美術館のは、普通の展示室で、またスクリーンが少し小さく、京都での展示と比べると、少し物足りなさを覚え、ちょっと残念な展示だった。
個人的に興味深かったのが、坂本龍一さんのスタジオと言うか仕事場を写した写真をいくつか展示している作品。以前、NHKか何かのドキュメンタリー番組で、その仕事場で、外に降る雨音を収音したりする様子が紹介されていたことを思い出した。シンセサイザーの人工音や作曲による音楽から、最終的に自然が奏でる音そのものに惹かれていった感じを、そのとき思ったりした。
本展「坂本龍一 音を視る 時を聴く」は、2023年に惜しまれつつ逝去した坂本龍一さんが生涯を通して探求してきた音楽や思想、そして多彩なコラボレーションの足跡を追体験しながら、改めて「坂本龍一」というアーティストの存在の大きさ、そして“音”がもたらす無限の広がりを感じることができる企画展だと思う。
会期:2024年12月21日(土)- 2025年3月30日(日)
場所:東京都現代美術館(東京都江東区三好4-1-1)