CTO室の振り返り~権限拡張と権限委譲~
ROXXでは9期(2021/10~2022/09)の振り返りとして各部門長からのnoteを掲載していきます。今回は第1回としてCTO室の振り返りをさせていただきます。
今期は職務範囲を広げることと、権限委譲がメインの1年だったので、そのあたりを重点的に振り返っていきます。
CTO室の組織の変遷
まずはCTO室のミッションがどのように遷移したのかを振り返ってみます。
※このセクションは長くなってしまいましたが、本記事においてさほど重要ではないので読み飛ばしてもらって大丈夫です。
期初:back checkへのコミットとSRE
拡張した権限
back check のプロダクトマネジメント
Site Reliability Engineering(以下略、SRE)
委譲した権限
なし
期初のタイミングはなんと言ってもプロダクトマネジメントに課題感を強く持っていた時期でした。
CTO室という、中立的な立場からの介入では限界があることが見えていたため、特にプロダクトマネジメントの介在の余地のありそうな back check にプロダクトマネージャー(以下略、PM)として入っていくことに。
PM をやり始めた経緯はこちらの記事を参考にしていただければとおもいます。
また同時期に業務委託で強力なインフラエンジニアの方に入っていただくことになりました。
今まで注力できていなかった事業部をまたいだインフラ・セキュリティーの整備を推進しておりました。
1月~: 情報セキュリティを統合して見るミッション
拡張した権限
ROXX 全体の情報セキュリティ
委譲した権限
なし
上述の back check のエンタープライズ戦略に伴い、エンタープライズ企業からのセキュリティチェックシートの回答依頼が増加。
ROXXとしては今までコーポレート ITチーム(以下、コーポIT)が組織の情報セキュリティー面を管理してきたのですが、プロダクトのセキュリティを含めて全体感を持ってセキュリティに対峙していく必要性が出てきました。
CTO室にSREとコーポ IT を内包することで、ROXXのセキュリティ面を包括的に管理できるようにしました。
2月~: back check PdMの委譲とディスカバリーチームの組成
拡張した権限
ディスカバリーチームの組成
委譲した権限
back check のプロダクトマネジメント
back check にてプロダクトマネージャーを採用し、自分が担っていたメインストーリーのプロダクトマネジメントを委譲することに。
また同時並行で、より不確実性の高いプロダクト要件に向き合うチームとしてディスカバリーチームを組成。アジリティの高い不確実性マネジメントを実施していました。
詳細は下記記事を見てもらえると良いかと思います。
4月~: インフラの抜本的改革
拡張した権限
新インフラ環境構築
委譲した権限
新インフラ環境構築の実行
ROXXの経営方針として新規事業・プロダクトが増えることが決まりました。
ただ、当時のインフラ構成には Single Point Of Failure(以下略、SPOF) な箇所があり、今後の事業拡大に耐えられるインフラ構成になっていないことが課題に。
新規プロダクトがスケジュールどおりにリリースできることと、SPOFにならないインフラ構成にしていくことを同時期に向き合ったタイミングでした。
4月にちょうど新卒で凄腕エンジニアがCTO室に入社し、ベースラインは整えつつも、彼に環境構築の大半を同時期に委譲。 新規プロダクトのリリース並びに既存プロダクトのリプレイスを3ヶ月かつ大きなインシデントなしに履行してもらいました。
7月~: インフラ料金の大幅な見直し
インフラ抜本的改革に伴い、従来使用していたリソースの見直しも同時に行っていました。 Amazon Web Services(以下略、AWS)の料金は開発関連予算のうちツール系予算の大半を占めており、利益率向上の観点で非常に大事な見直し対象でした。
ログやストレージの削除ライフサイクルの見直し
ショットでしか利用しないリソースの稼働時間外の停止
不要リソースの削除
キャパシティプランニングによるキャパシティ最適化
SavingsPlan による固定リソースのコミットメント
結果円安の影響も込みで全体料金の25%-30%の削減を実現。
また、今後も利用料が大幅に増えないように
インフラ変更プルリクエストにコスト増加のコメントが付くようにしてリソース反映前にコスト感覚をつかめるように
Cost Category を適切に設定し、事業部ごとにコストを按分できるように
設定を行いました。
8月~: agent bank プラットフォームのプロダクトへの介入と引き継ぎ
拡張した権限
agent bank プラットフォームプロダクトのマネジメント
agent bank に関わるプロダクト、事業が多岐に渡り、顧客への提供価値もそれに伴う事業計画も複雑になってくる中で、プラットフォームのプロダクトの位置付けやプロダクトゴールが不明瞭な状況になっていました。
部門長でもあるゼネラルマネージャー(以下略、GM) 陣との対話に入り、 まず直近解決しなければならないイシューはなにかを特定した上でミッションを共有し、短期課題を解消。
並行して事業コミットのできる エンジニアリングマネージャー(以下略、EM) を採用し、中長期課題に対して、GM 陣と対話しながら作っていけるように引き継ぎを行っています。
振り返り
1年間を振り返ってみましたが、一言でいうと「様々な課題に対してその時々で重要度の高いものにまず自分が入った(権限拡張)上で、それを引き継いで(権限委譲きた」というのが FY09 でした。
スタートアップのCTOは結構こういう動き方をすることが多いかなと思いますが、このような動き方は何が良くて何が良くないのかを振り返りながら考えていきます。
※ここからが主題です。
良かったこと
権限を渡していく方法には大きく分けて二通りのやり方があるかと思います。
トップの人を採用し、その人にイシューごと渡してやってもらう
まず自分が入った上で、そのポジションにふさわしい人を採用し、その人に引き継ぐ(=今回やったこと)
今回は後者を実施したわけですが、このやり方を行うことによって、シズル感のある フィードバック(以下略、FB) 並びにオンボーディングができるというのが何より大きなメリットだったなと思っています。
例えばback checkのプロダクトマネジメントに関してでいうと、まず自分が入って様々な課題に向き合ったことによって、新任のプロダクトマネージャーにどういうことをお願いしたいのかが具体的になり、かつプロダクトマネージャーが提案してくれる内容に対して解像度高くフィードバックができました。
専門性のある方を採用する場合、下記のような構図になるかと思います。
専門分野における知見
新任の人 > 自分
ドメイン知識や会社の知識
自分 > 新任の人
この関係性において、新任の人と自分の情報の非対称性の中で、どこにギャップがあるのか、どこからどう任せていけるとよいか、逆にどこに関しては深く入る必要があるかの選別ができたなというのが学びでした。
今発生している課題は
人間関係に起因しているのか
目標設定に起因しているのか
(自分も含めた)ステークホルダーのスキルに起因しているのか
事業ドメインの複雑性に起因しているのか
新任の方のスキルに起因しているのか
などの観点で評価でき、各観点で具体的なフィードバックができたというイメージです。
良くないこと
逆にこの進め方は何が良くないのでしょうか。
まず、「工数がめちゃめちゃかかる」 というのがあるかと思います。
まず自分でやるには、自分でできるレベルに成長しなければならないので、様々な情報源に対してアプローチし、実行レベルを高める必要があります。
当然得た知識だけでできるようになるわけではなく、実践を通じて血肉にしていく必要があります。
未経験領域であれば、最初からうまくいくことはなく、その間失敗を繰り返しているときはいいスループットは出づらいです。
その間他の方に迷惑を掛けることもあるかと思います。
いかに早くキャッチアップし、立ち上がりを早くできるのか、これはなかなか高いレベルを要求されるので難しく、時間もかかってしまいます。
さらに、 「高い不確実性に向き合える優秀な人のタスクを奪ってしまう」 というのもあるかもしれません。
自分が先に何かにチャレンジし、そこから何かしらの学びを得てしまうと、どうしても不確実性は下がってしまいます。
当然自分が向き合うべきは最も高い不確実性に対してのアプローチになるはずなので、一定期間経過してしまうと、不確実性の低いタスクしか残らないという事案が発生する可能性があります。
個人的には不確実性が減れば減るほど、解決しなければならない新たな課題はレベルが上がる印象はあるのですが、候補者からすると「もう自分が入る必要ないんじゃない?」という感覚を与える可能性があり、優秀な人の採用を妨げる可能性があります。
なんだか「スタートアップが事業成長すると、そこでの仕事はイージーモードになる」という一般的な誤解があるように感じています。しかし、実態は真逆です。事業規模が大きくなるにつれ、課題は複雑性を増し、1つ1つの仕事に求められるレベルは上がってきています。
ここは下がった不確実性に対してどういうことを学べたのか、更にどういう課題が顕在化したのかを明確にし、伝えられる状況にする必要があるかと思います。
FY10 からのミッション - 技術オリエンテッドな投資へ
まずまだ引き継ぎきれていない下記を早急に引き継ぐことがトッププライオリティのミッションとなります。
agent bank プラットフォーム → EM
情報セキュリティー → CISO
ここを引き継ぎつつ、新たにCTO室として 「技術オリエンテッドなプロダクトバリューを作る」に向き合っていきます。
ROXXはHR業界の中でも特に採用領域において様々なアプローチで課題解決をしています。
今までは事業成長を優先してきた中で、まだまだ非効率な要素が多く、技術による介在価値は多方面であるんじゃないか?ということが見えてきました。
例えばagent bankは未経験の候補者領域をターゲットにしています。このターゲットはミドルレイヤー以上とは全く異なる転職市場となっています。選考プロセスにおいて重要視されるのは、スキルシートではなく、話し方や声のトーンだったりします。
ROXXではあえてこの領域の候補者にキャリアアドバイザーを入れることによって、こういった情報が蓄積可能な環境ができています。
解決しなければならないユーザの課題も見えてきており
音声・動画解析
自然言語処理
マッチングの推論
などの技術を用いてその課題を解決していきます。
詳細が気になる方、また本記事で聞きたいことがある方等、カジュアルにお話できればと思います。