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市場価格はどう決まるのか?農家の視点から解説する価格の仕組み



1. はじめに:市場価格の不思議

私たち農家にとって、市場価格がどう決まるのかは日々の経営に大きな影響を与えます。しかし、多くの方が「なぜいちごの値段がこんなに上下するのか?」という疑問を抱いているのではないでしょうか。
この記事では、市場価格がどのように決まっているのか、その仕組みを農家の視点から解説します。

2. 市場価格の基本:需要と供給のバランス

市場価格は基本的に「需要と供給のバランス」で決まります。

需要が増えると価格が上がる

例えば、クリスマスやバレンタインの時期はケーキ用のいちご需要が急増します。そのため、この時期のいちご価格は通常より高くなる傾向があります。
またケーキによく使われる比較的小さいサイズのいちごの価格が高騰します。

供給が増えると価格が下がる

一方、5月や6月のように収穫量が多い時期には、供給過多になり価格が下がります。このような状況では、いくら質の良いいちごを作っても市場全体の価格に左右されます。

市場の価格が下がるため

この時期だけいちご狩りをやる方
加工品メインにする方
冷凍にして夏に販売する方
直売やECサイトの値引きのキャンペーンをする方

などが増えるのはこのためです。

3. 市場取引の流れ:価格決定のメカニズム

農家が生産した作物が市場に出回るまでには、次のような流れがあります:
① 農家が出荷する
農家は収穫した作物を市場や卸売業者に出荷します。
② 市場でのセリや交渉が行われる
多くの農産物はセリや取引によって価格が決まります。その日の供給量や需要の状況が価格に大きく影響します。
③ 小売店やスーパーが購入する
卸売業者や小売業者が市場価格に応じて商品を仕入れ、さらに自社の利益を上乗せして販売価格を設定します。

市場価格は、この一連の流れの中で複数の要因に左右されるため、農家が完全にコントロール するのは難しいのが現実です。

4. 価格に影響を与える要因

市場価格に影響を与える具体的な要因をいくつか挙げます。

① 天候
天候不順による収穫量の変動は、価格に直結します。例えば、台風や霜が発生した年には収穫量が減り、供給が減少するため価格が高騰します。

② 輸入品の影響
国内産だけでなく、輸入品の供給量も市場価格に影響を与えます。特に果物や野菜は、輸入品が安価で大量に出回ると国内価格が下がる傾向にあります。
以前どこから輸入しているかお店の人に聞いた事がありますが、アメリカ産のいちごが安く売られているようです。
その価格で私達が販売するとほとんど利益がない価格でした。
いちごをうちのいちごに切り替えてもらおうと思い交渉していましたが、断念した事があります。
今は円安なので分かりませんが安い価格で勝負する事はリスクを伴います。

③ 消費者のトレンド
近年は「地産地消」や「有機栽培」などのトレンドが価格に影響を与えています。このような付加価値がある商品は、高価格でも購入されやすい傾向があります。
その為有機JASマークの取得を私達は目指して以前講習会に参加しましたが、基準が高く断念した経緯があります。

④ 物流コストの増加
燃料費や人件費の上昇により物流コストが増えれば、その分価格にも影響が出ます。
物価高で、全ての資材が高騰しています。

5. 農家ができる工夫:価格の影響を減らす方法


市場価格に左右されないために、農家ができる工夫をいくつか紹介します:

① 直接販売
市場を通さず、直売所やオンラインショップを活用して直接販売することで、中間コストを削減し、価格を安定させることができます。

② ブランド化
地域や農園のブランドを確立し、「安いから買う」ではなく「この農園だから買う」と思ってもらえる商品を作ることが大切です。例えば、特定の品種や独自の栽培方法をアピールすることで差別化を図れます。

③ 付加価値を提供する
試食会や食べ方の提案、パッケージデザインなど、付加価値を高めることで、価格競争に巻き込まれずに販売することが可能です。

④ 契約栽培
大手スーパーや飲食店と契約を結び、安定した価格で販売する方法もあります。これにより、市場価格に左右されるリスクを減らせます。
ただしまとまった収穫量を確保しないといけない為他の場所への販売は難しくなります。
リスク分散には注意が必要です。

6. 市場価格に苦しんだ経験

以前、収穫量が例年より多かった年に、市場価格が急激に下がったことがありました。
特にリーマンショックの時にそれまで1パック500円で売れていたいちごが、最盛期には1パック300円以下にまで下落。

大量に収穫しても利益がほとんど出ず、次のシーズンに向けた設備投資や生活費にも影響が出ました。

その経験をきっかけに、直売所やふるさと納税を活用し、市場価格に依存しない販売ルートを増やす工夫を始めました。

現在では、市場価格に左右されるリスクを減らすことができています。

7. まとめ:市場価格を理解して賢く行動する

市場価格は、多くの要因によって変動するため、農家にとって完全にコントロールすることは難しい部分もあります。

昔は市場の関係者に農協、生産者、栃木県振興事務所が(主に生産者がお金を出して)ゴルフコンペに招待して市場の価格をあげてくれるように接待していたそうですが、私達の地域ではリーマンショック以降から行われなくなりました。

コンペしていた時と価格は変わらないので意味ない風習でした

農家ではこのようこのような事が当たり前に行われている事が現実です。

しかし、価格決定の仕組みを理解し、自分たちでできる工夫を取り入れることで、その影響を最小限に抑えることができます。

「価格に振り回されるのではなく、価格を味方につける」。そのための第一歩として、市場価格の仕組みを知り、自分たちに合った販売方法を見つけることが大切ですね。


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小竹いちご園の息子
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