書評 199 「OPEN」
米国シンクタンクのシニアフェローである著者。日本語では評論家になってしまうが、社会の分析・予想を行う専門家が近いか。
人類史を紐解き、人類の優位性とその発展に寄与した最大の要素としてオープン性を挙げている。開放性、受容性と呼んだ方がわかりやすいかもしれない。集団を形成することで地球上の生物の中で圧倒的に力を持った人類。その力の源泉は集団の多様性であり、個々の優位を活かした分業。ならば、その多様性を拡大すれば発展は加速する。わかりやすい論旨の上に史実を挙げて、それを証明している。
一方、自身や自身が属する集団が危機に陥った時には排他によって守ることも人類の遺伝子に刻み込まれていることも示している。
人類の更なる発展のためには過去から学べば答えは自明と著者は語るが、なかなか俯瞰的に見れずに目先に流されるのもまた人間と認めている。
若干読みにくい訳文ではあるが、著者の主張がロジカルに読み取れる一冊。