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書評 177 「日本の酒」

発酵専門の学者として名高い坂口謹一郎さんによる、日本の酒造全般を網羅した解説読本。日本酒の解説ではなく、酒造の解説。

著者は故人であり、本書は1964年の発行であるが、近年の同種の本と比較しても、酒造の基本的な構造は変わっていないことが見て取れる。

そして、なぜ変わらないのかが本書を通読するとよくわかる。経験と知恵を積み重ねて出来上がった麹と酵母を使って作る日本酒の仕組み、これが奇跡的なくらい科学的に完成度が高く、海外の酒造と一線を画すことが平易な言葉で解説されている。

衛生面の改善や省力化での技術による進化はあるが、基本的な酒のできる仕組みがあまりにも上手くできている。自然の力の中でも必要なものだけが活躍できるような環境を人為的に作ってきた。それこそが先人の知恵。

最近の地酒ブームで日本酒の旨さにまた脚光が当たってきている。この酒造の文化と技術を日本人として守りたいと思わせる一冊。


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